「保育士1年目だけど、もう辞めたい」

こんなふうに思っていませんか?

社会人1年目は、様々な希望と不安を抱えているでしょう。

憧れの職業に就いた人もそうでない人も、覚えることが山積みな社会人1年目ですが、実は保育士の1年目は、一般企業よりも覚えることが多いと言われています。

保育園児が多い大規模保育園であれば、それは更に深刻で、たとえば在園児と新入園児すべての顔と名前を覚えるという初歩的な部分からスタートする保育園もあります。

保育園児が少ない小規模保育園であれば、保育士1年目から担任を任されるケースも少なくはありません。

このように、一般企業に比べても1年目での負担が多い保育士ですが、だからこそ、1年目で辞めたいと考える人も少なくはないのです。

辞めたいと思って辞めてしまうのは、簡単です。

ですが、保育士1年目で退職の意志をどうやって告げればいいのか、無事に退職できたとしても、その後の転職に響くのではないかという部分が気がかりな点ではないでしょうか。

そこで、この記事では、

  • 保育士を1年目で辞めた人の割合
  • 保育士を1年目で辞めたい理由
  • 保育士を1年目で辞めたいという意向を告げる方法
  • 保育士を1年目で辞めた後の転職方法

など、保育士を1年目で辞めたい方向けに徹底解説していきます。

保育士1年目で辞めたいと考えている方の参考になれば幸いです。

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保育士を実際に1年目で辞めたいと思って辞めた人の割合は実は「10.0%」

平成26年8月、厚生労働省が発表した「保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて」内にある「保育分野における人材不足の現状②(4ページ)」のデータによると、保育士を1年未満で辞めてしまった人の割合は10.0%だということがわかっています。

出典:厚生労働省

この表を見てもらうと分かる通り、保育士1年目どころか、保育士を5年未満で辞めてしまう人がほぼ半数です。

それだけ保育士という職業は、大変だということの表れではないでしょうか。

また、2015年に設立された保育士等確保対策検討会が発表している資料「保育士等における現状」内にある「保育士の経験年数、採用・離職の状況(7ページ)」も見てみると、

勤務年数2年未満2~4年未満4~6年未満6~8年未満8~10年未満
全体47,392人43,205人36,934人28,773人23,036人
うち公営12,136人12,439人11,049人8,794人7,834人
うち私営35,256人30,766人25,885人19,979人15,202人
全体14.9%13.6%11.6%9.1%7.3%
うち公営10.1%10.3%9.2%7.3%6.5%
うち私営17.9%15.7%13.2%10.2%7.7%

このように、勤務年数2年未満の保育士が多いということがお分かり頂けるかと思います。

保育士として働いている人は、みんなそれぞれ保育士になりたての時期に、何らかの悩みを抱えているということです。

悩んでいるのは自分だけじゃない!と思えるのは、心強いですよね。

保育士を1年目で辞めたいと思う原因は?主な理由はこの7つ

保育士を1年目で辞めたいと思ってしまう理由には、いくつかあります。

ここでご紹介するのは、理由の中でも特に上位に挙げられている

  • 給料が低い
  • 家に仕事を持ち帰る頻度が高い
  • 覚えることが多すぎる
  • 理想とする保育ができない
  • 先輩保育士が厳しい
  • 子供になめられる
  • 保護者が厳しい

という7つの理由です。

では1つづつ解説していきますね。

給料が低い

保育士としてデビューしたものの、実際にもらえる給料が思ったよりも低くて、仕事量と給料面が合っていないと思ってしまう保育士が多いようです。

厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」内の「保育士(保母・保父)女」によると、保育士として最初にもらう給料(初任給)は、20~24歳で月収203,000円。

ここから、健康保険や年金、住民税など約2割分が引かれた金額が振り込まれるので、手取りだと162,000円程の給料ということになります。

保育園の規模にもよって年間賞与などが平均で60万円ほどここに追加されますが、それでも年収は305万円程度で、手取り額に直すと年240万円程度です。

令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】の「2.結果概要(2)職種別職員1人当たり給与月額(全体状況)①保育所(私立・公立)」という7ページにあるデータを参考に見ていきましょう。

 平均勤続年数賞与込み平均月額
公営保育士(常勤)11.0年303,113円
私営保育士(常勤)11.2年301,823円

この表によると、給料面で特に問題となっている私営保育士の場合、平均勤続11.2年で、賞与込み月額給料が301,823円、年収に直すと362万円ということになります。

全職種の平均年収は491万円と言われていますから、それに比べて安いことがお分かりいただけるかと思います。

勤続年数が10年以上になってもこの数値ですから、保育士1年目などの早い段階で退職しようと考える保育士がいても不思議ではありませんよね。

家に仕事を持ち帰る頻度が高い

保育士1年目は、思うように作業が進まず、家に仕事を持ち帰るケースが出てくるかもしれません。

ある調査では、週に1回程度、家に仕事を持ち帰っている保育士はなんと83.8%もいるということが分かっています。

毎日のように家に仕事を持ち帰っていると回答した保育士は、32.8%にまで登っていますから、保育士というのはそもそもが仕事が多い仕事と見て問題はないでしょう。

ですが、自宅で仕事をするとなると、当然のことながら残業手当は付きません。

プライベートと仕事の境界線がわからなくなって、辛い!と思ってしまうこともあるでしょう。

持ち帰って行う主な業務は、

  • 年間計画書
  • 園・クラスだより
  • 衣装や小道具などの制作
  • 誕生日カードなどの制作
  • 教室内の装飾や壁面制作

などです。

業務時間いっぱいに園児を見て、その後ちょっとした書類を作成したらすぐに就業時間なので、持ち帰り作業が多くなってしまうのは致し方のないことなのかもしれません。

ですが、ただでさえいっぱいいっぱいの保育士1年目には、時間外業務でさえ辛く感じてしまうのも現状です。

覚えることが多すぎる

冒頭でお話しした通り、保育士1年目は覚えることが山積みです。

園児の名前はもちろん、その保護者の顔も覚えなくてはなりません。

保育業務についても覚える必要がありますし、書類作成のやり方、行事の企画や運営方法、保護者への対応など、その園の方針に沿って仕事を覚えなくてはならないので、なかなか大変です。

小規模保育園では、保育園に入ったその瞬間から一人前の保育士として、様々な業務を任されるというケースも少なくはありません。

頭がパンクしそうになる日々で、家に帰ったらバタンキューということもあるでしょう。

そういった日々の疲れが蓄積されて、「仕事を辞めたい」と思ってしまう保育士1年目も少なくはありません。

理想とする保育ができない

保育士になりたい!と夢見ていたころは、「こんな保育士になりたい!」と憧れとする保育士像があったでしょう。

ですが、実際に現場で働いてみると、なかなか思うように事は進みません。

「こういうはずじゃなかったのに!」と、もどかしい気持ちを抱いてしまうこともあるでしょう。

それが蓄積され、理想とする保育がまったく出来ていないと思ったとき、「保育士には向いていないんじゃないか」と思ってしまうのです。

先輩保育士が厳しい

保育士が少なくて、全員がギリギリの状態で働いている保育園はなおさら、先輩保育士が厳しい傾向にあるようです。

「さっさと仕事を覚えてよ」という態度を出されてしまうケースもあるかもしれません。

さらに、保育園という場所は、男女比率でいうと圧倒的に女性が多い職場でもあります。

学生時代にも、女性ならではの悪質なイジメなどを見てきたという方もいるのではないでしょうか。

そんな女性同士ならではの人間関係に悩まされる、保育士1年目も多いのです。

子供になめられる

保育士1年目で、ある程度大きい年齢のクラスに入った場合、子どものほうがその保育園の先輩になりますよね。

子どもは正直ですから、「〇〇先生、そんなことも分からないの~?」なんて、なめられてしまうケースも出てくるかもしれません。

さらに、一緒にクラスに入っているベテラン保育士の言うことはしっかり聞いているのに、保育士1年目の貴方の言うことはちっとも聞いてくれないということもあるでしょう。

それで、教員室へ帰ったあとにベテラン保育士に小言を言われるというケースもあるかもしれません。

そこで、「私は保育士には向いていないのかも…」と思ってしまって、「保育士を辞めたい」という極論にまで至ってしまうのです。

保護者が厳しい

新米保育士にだけ限定で厳しい保護者は、おそらくどの園にでもいます。

そういう保護者に限って、ベテラン保育士には何も文句は言わず、自分よりも身分が低いであろう新米保育士にだけグチグチと文句を言ってくるのです。

悪意はなくても、「ベテランの〇〇先生にお願いしたかった」と言われてしまうケースもあるかもしれません。

ですが、そのベテラン保育士だって、数年前には保育士1年目を経験しています。

その時に、保護者に心無い言葉をかけられたことだってあるでしょう。

そのベテラン保育士のようになるためには、「経験を積む」その一択です。

ちょっと苦手だな…と思う保護者がいても、胸を張って接していくことで、「この新人さん、案外しっかりしてるかも…!」と思ってくれるかもしれませんよ。

保育士を1年目で辞める際の退職理由の答え方

どの職種に就いても、1年目で退職の意志を告げるのは、なかなか難しい問題だと思います。

法律上、雇用期間の定めのない場合は、2週間前までに退職の意志を告げれば良いとされていますが、さすがに「2週間後に退職します!」はなかなか通用しません。

そのため、ほとんどの一般企業では、最低でも退職を希望する日の1か月前までには、退職する旨を報告するように決められています。

ですが、保育士の場合は、それが3ヶ月前だとベストでしょう。

というのも、年度末に近付くにつれ、次年度のクラス編成を決め出すからです。

次年度に担任になることが決定している中での退職希望だと、園側も困ってしまいますよね。

ですが、それ以前に退職の意向があることを示していれば、次年度の人員には入らないので、園側もどうにか検討してくれるケースが高いです。

では、保育士1年目で辞めたいと思っている理由を、どのように伝えれば良いのかをご説明します。

正直にすべての気持ちを話す方法はNG

退職を引き止められてしまう原因にもなるので、退職理由を素直に話すことはやめましょう

先ほども紹介した、保育士等確保対策検討会が発表している資料「保育士等における現状」内の「保育士における現在の職場の改善希望状況(8ページ)」を見ると、

保育園に改善してほしいこと割合(%)
給料・賞与等の改善59.0
職員数の増員40.4
事務・雑務の軽減34.9
未消化(有給等)休暇の改善31.5
勤務シフトの改善27.4
職員間コミュニケーション20.3

これは、職場に改善してもらいたいことの上位6位までを表にしたものです。

「改善してもらいたいこと=保育園に対する不満」で、これが蓄積されたことによって「退職したい」となってもいます。

これを元に、例えば、退職理由がたとえば「給料が低いから」だとしましょう。

たしかに保育士1年目の給料は低いです。

ですが、勤務年数を重ねたり、経験を積んで役職に就いたりすることで、給料は上がります。

「給料が低いから辞めさせてください」と言っても、「でも来年には少し上がるし、数年働けば〇万円も月収アップよ」なんて言われたら、退職の決意が固まっていても、気持ちが少し揺らいでしまいますよね。

「じゃあ、もう少しだけ頑張ります」と、不本意な答えを告げてしまうかもしれません。

この他にも、素直に退職理由を話しただけなのに、「でもね、」と話が捻じ曲げられてしまう可能性は捨てきれません。

なので、退職理由を本音で話すのは止めておきましょう。

また、退職する時期についてなどはこちらの記事で詳しく解説しております。

体調不良や引っ越しなどの不可抗力はOK

半ば強引にでも退職を強行突破する方法としては、体調不良や急な引っ越しが理由で、仕事を続けたくても続けられないということを告げる必要があります。

嘘ではなく本当に体調が芳しくない場合は、かかりつけ医に診断書を発行してもらう方法もあります。

今は元気だけれど、このまま保育士を続けていくと、何らかの病気になってしまいそうと感じている場合は、心苦しくはありますが、少しばかり嘘をつく必要もあるかもしれません。

家族が病気で…となると実際にそうなったら不吉でもあるので、「結婚が決まって引っ越すことになった」など、あまり罪悪感を抱くことのない嘘を付く必要もあるかもしれません。

保育士を1年目で辞めても転職をするおすすめの方法

どうしても保育士を1年目で止めたいと思っても、実際に不安は付き物ですよね。

1年目で退職をしてしまった場合、転職活動に響かないの?という部分が、最も不安な部分ではないでしょうか。

そこで最後に、

  • 転職先はどう探せば良いの?
  • 1年目で退職した理由を、面接でどう告げれば良いの?

という部分について紹介しますね。

転職先選びは慎重に(できればプロに任せよう!)

転職先選びは、学生時代の就職活動よりも慎重に行い、必要があれば転職活動のプロに任せる

これが最も重要です。

次の転職では絶対に失敗したくない!と考えている方は、保育士専門の転職活動のプロ(転職エージェント)に必ず相談してください。

ホームページには載っていないような情報までもを知っている可能性もありますし、第3者が加わることで、その転職活動を客観的に見られるようになるのもポイントです。

面接の模擬練習を行ってくれるサービスもありますので、保育士1年目で退職してしまったという不安も払拭することができます。

転職サイトの選び方などについてはこちらの記事を参考にしてみてください。

また、自分で捜す際もホームページに書いてあることがすべてではないので、希望する保育園に一度足を運んでみるのも良いでしょう。

早朝と保育園終了後にも保育園の前を通ってみて、何時ごろまで電気が付いているのかをリサーチしてみるのも良いかもしれません。

転職先での面接では、ポジティブな意見を伝えよう!

転職先には、必ず履歴書を提出します。

そこで先方は、「なぜこの人は、保育士を1年目で辞めてしまったんだろう」という疑念を必ず持ちます。

そのため面接では、ポジティブな回答をするようにしましょう。

たとえば、

  • 「残業が多いのに残業代が出ない」
  • 「引っ越して通勤が困難になった」
  • 「持ち帰りの仕事が多い」

など、「前保育園で長期間働く意欲はあったのに、自分ではどうすることも出来ない理由で辞めざるを得なかった」ということを伝えるのが大事です。

「残業が多い」「持ち帰りの仕事が多い」などは、「仕事のオンオフの切り替えをしっかりすることで、保育士としての仕事に集中したい」などと言えば、聞こえは良いですよね。

最近では、保育士不足が深刻化しているので、面接を受けさえすれば、新しい就職先は絶対に決まるといってもいいです。

ただ、他業種に転職する場合に気を付けてほしいのは、「保育士の仕事が辛くて辞めました」とは言わないようにすることです。

これを言ってしまうことで、「仕事が辛かったら辞める人」と思われてしまうからです。

どの業種だって、辛いのは同じですよね。

転職先の面接では、「辛い」「大変だった」というネガティブなイメージを持たれる単語の発言は控えるようにしましょう。

実際の面接で使えるテクニックなどはこちらの記事でも紹介しております。

まとめ:不安はあるけれど自分の気持ちを尊重しよう!

最後に今回の記事をまとめると以下の3つになります。

  • 保育士を1年目で辞めたい場合は、退職の3ヶ月前には話を切り出そう
  • 保育士を1年目で辞めた人は意外といるので、自分だけではないという安心感を持とう!
  • 保育士は引く手あまたで安心

保育士という仕事に憧れて保育業界に入ってきた人も、様々な要因で、「保育士1年目なのに辞めたい…」と考えている人は多くいます。

ですが、「保育士1年目なのに辞めてもいいのだろうか」と、誰もが絶対に思ってしまうはずです。

保育士は5年未満での退職率が高いので、1年目で退職することも何ら珍しいことではありません。

辛い環境で仕事を続けていき、それが自身の健康問題にまで発展してしまいそうならば、1年目であろうと保育士を辞めてしまっても良いのではないでしょうか。

他業種に転職する場合も、同じ保育士として新たな保育園を探す場合も、同じ過ちを犯さないために、転職先のリサーチは徹底的に行っていきましょう!

転職先の面接では、転職先がどの業種であれ、ポジティブな意見を伝えるようにしましょうね。