待機児童問題が深刻化している今、その解決策として取り上げられている「保育士をもっと増やしていこう」という政策に、「ぜひ協力したい!」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

保育士になるためには、高校卒業後に専門学校に通って…と思っている方も多いでしょう。

それはもちろん、間違いではありません。

ですが、高卒であることと、ある一定の条件を満たしてさえいれば、年齢を問わず、誰でも保育士資格を取得できる可能性があるのです。

最近では、ほとんどの方が最低でも高卒資格を持っていると思いますので、逆をいえば、誰にだって保育士になれるチャンスがあるということです。

そこでこの記事では、高卒で保育士を目指す方に

  • 保育士資格を取得するための方法
  • 保育士資格を取得するために必要な条件

この2点を主にご説明していきます。

ほんの少しでも保育士の仕事に興味がある方は、この記事をぜひ参考にしてみてください!

高卒者が保育士になれる方法は2通り

保育士になるためには、高卒であることの他に、ある一定の基準を満たしていれば問題ありません。

その一定の基準というのは、

  • 保育士試験に合格すること
  • 保育士養成学校を卒業すること

この2つのうちのどちらかです。

子育てがひと段落して、そろそろ社会復帰しようかなと考えている方、一般企業で働いているけれど、子どもが好きだから保育士に転職したいなと考えている方などは、ぜひ保育士資格の取得に向け、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

高卒の人が保育士になるために臨みたい保育士試験

保育士は、児童福祉法で定められている国家資格です。

なので、保育士になるために受験する保育士試験は、国家試験ということになります。

国家試験と聞くと「難しそう…」とためらってしまう方も多いと思いますが、独学でも必死になって勉強をすれば、働きながらでも数年後には保育士資格をゲットできるかもしれません。

それまで、保育とは無関係の学部で勉強してきた人も、一般企業で働いてきた人も、育士試験に合格さえすれば、保育士資格をゲットできるのです。

保育士試験とは

保育士試験は国家資格で、それに合格すれば保育士資格が手に入ります。

保育士試験は、4月下旬と10月上旬の年2回の日程が組まれていますので、試験にチャレンジできる回数が多いことがポイントです。

年に1回しか受験日程が組まれていない国家試験が多い中、保育士試験に関しては、2016年度より年2回の試験日程を設けることになりました。

それには、保育士試験を受けやすくして保育士の数を増やし、最終的に待機児童問題を解決していこうという政府の思惑があります。

保育士試験の試験科目

保育士試験は、2日間の筆記試験の後、1日間の実技試験があります。

筆記試験は、

  • 保育原理
  • 教育原理
  • 社会的養護
  • 児童家庭福祉
  • 社会福祉
  • 保育の心理学
  • 子どもの保育
  • 子どもの食と栄養
  • 保育実習理論

この9科目で行われ、合格点は各6割です。

実技試験は、筆記試験を合格した人のみ行われ、

  • 音楽表現に関する技術(ピアノなどでの弾き語り)
  • 造形表現に関する技術(お絵描き)
  • 言語表現に関する技術(絵本の読み聞かせ)

この3科目のうち2科目を選択して受験します。

保育士試験に向けて独学で勉強する場合、実技のほうもしっかり時間を取って力を付けていきたいですね。

特に楽譜が読めない、ピアノを触ったことすらないという方は、ピアノ教室へ通ったりして、ピアノの腕を上げるなどの対策が必要になってくるでしょう。

保育士試験の受験条件

一般社団法人全国保育士養成協議会によると、保育士試験を受験するためには、下記にある3つの条件のいずれかを満たしている必要があります。

  • 平成3年(1991年)3月31日以前に高校を卒業している人→卒業学科が保育科以外でも受験が可能
  • 平成3年(1991年)4月1日以降に高校を卒業している人→指定の施設等で2年以上かつ2880時間以上の実務経験がある場合にのみ受験が可能
  • 平成8年(1996年)3月31日以前に保育科の高校を卒業している人→実務経験なしでも受験が可能

保育士試験を受験したいと考えている方は、自分が高校を卒業した年を今一度確認しましょう

実務経験として認められる場所は?

先ほどの、保育士試験の受験条件で、

  • 平成3年(1991年)4月1日以降に高校を卒業している人→指定の施設等で2年以上かつ2880時間以上の実務経験がある場合にのみ受験が可能

とありました。

ここでいう「指定の施設等」は、全国保育士養成協議会「受験資格詳細」の発表によると以下の13の場所です。

  • 利用定員20名以上の保育所
  • 保育所型認定こども園
  • 幼保連携型認定こども園
  • 児童厚生施設(児童館)
  • 児童養護施設
  • 助産師説
  • 乳児院
  • 母子生活支援施設
  • 障害児入所施設
  • 児童発達支援センター
  • 児童心理治療施設
  • 児童自立支援施設
  • 児童家庭支援センター

これらの該当施設で、2年以上かつ2880時間以上の実務経験が必要ということです。

これには、フルタイムやパートなど働き方に定めはありませんので、どのような働き方であっても、この条件を満たしてさえしていれば保育士試験を受験できるというわけです。

ちなみに、

  • 認可外保育施設
  • 小規模保育事業
  • 幼稚園型認定こども園
  • 地域裁量型認定こども園
  • 幼稚園
  • 家庭的保育事業
  • 居宅訪問型保育事業
  • 事業所内保育事業
  • 放課後児童健全育成事業
  • 一時預かり事業
  • へき地保育
  • 小規模住宅型児童養育事業
  • 障害児通所支援事業
  • 一時保護施設
  • 放課後等デイサービス
  • 院内保育
  • 企業主導型保育事業

これらの施設で2年以上かつ2880時間以上の実務経験がある場合は、受験資格認定(知事認定)というものが必要になります。

これは、

これらの施設で2年以上かつ2880時間以上の実務経験があるけれど、保育士試験の受験条件に当てはまっていますか?

ということを、勤務していた施設の都道府県に確認する作業です。

ご自身が勤務していた施設をしっかり確認し、どちらに当てはまるか分からない場合は、勤務先のある都道府県に確認をすると安心ですね。

保育士試験の年齢制限

保育士試験には、年齢制限はありません

なので、たとえば30代後半や40代になって、子育てが落ち着いたから自分の子育て経験を生かして保育士として働いてみたい!という方も、受験条件さえ満たしていれば試験を受験することができます。

もちろん、性別に対する制限もありませんので、男性でも受験が可能です。

保育士試験に向けた勉強方法

保育士試験は国家資格なので、合格率は極めて低いです。

厚生労働省の「保育士試験の実施状況(平成30年度)」によると、合格率は19.7%とされており、間違っても高い合格率だとはいえません。

ですので、保育士資格に絶対に合格したい!というのであれば、完全なる独学はあまりおすすめできません

たしかに書店にいけば、保育士試験に向けた参考書の品ぞろえは豊富です。

ですが、わからない部分を誰にも聞けない、答えが見つからないというのは、なかなか厳しいものがあるでしょう。

同じ独学でも、通信教育であれば、上記のような独学のデメリットを解決できます。

通信教育で有名なユーキャンはもちろん、学習塾で有名な四谷学院なども通信講座を開設していますので、まずは気になる会社の無料資料請求からしてみてはいかがでしょうか。

高卒の人が保育士になるために入りたい養成学校

高卒の人が保育士になるためには、保育士の養成学校に入学して、そこで卒業と同時に保育士資格を取得する方法もあります。

具体的に見ていきましょう。

保育士の養成学校とは

保育士の養成学校とは、厚生労働省が指定している大学や短大、専門学校のことです。

たとえば、中学や高校時代に、将来は保育士になりたい!とすでに自分の夢ができている場合、その後の進路先として、卒業と同時に保育士資格が取得できる大学や短大、専門学校に進学する人が多いのではないでしょうか。

保育士の養成学校とは、そのような保育士資格が取得できる場所のことです。

多くの保育士の養成学校では、受験資格が高卒程度に定められていますので、高卒資格のある方は、年齢や性別を問わず保育士の養成学校に入学することができます。

養成学校に通うことのメリット

養成学校に通うメリットは、

  • 卒業と同時に保育士資格が手に入る
  • わからないことは、その日のうちに解決できる
  • 保育士としての実習を受けることができる
  • 就職をサポートしてくれる学校がある
  • 保育士試験の受験条件を満たしていなくても、保育士資格が取得できる

主にこの5点です。

これらはすべて、独学では得られないメリットです。

保育士としての実習を受けることができるのも、養成学校に通う大きなメリットではないでしょうか。

さらに、保育士資格を取得するだけでなく、その後保育士として就職したいと考えている方であれば、就職サポートも嬉しいサービスだと思います。

養成学校に通うことのデメリット

養成学校に通うデメリットは、

  • 養成学校入学から卒業までに2年~4年がかかる
  • 入学金や月謝、教材費が高い
  • 学校に通う時間が必要

主にこの3点です。

養成学校に通って保育士資格を取得するためには、単位をしっかり取って学校を卒業しなくてはならないので、保育士資格取得までには2年~4年の年月が必要という最大のデメリットが存在します。

また、養成学校に在学しているのは、高卒後すぐに入学した18歳~22歳の若者たちが主です。

いわゆるアラサー、アラフォーになっている方が、その若者たちと一緒に授業を受けること自体、強い気持ちを持っていないとなかなか厳しいものがあるでしょう。

さらに、学校に通う時間が必要という点も、現在フルタイムで働いている人にとってはデメリットになります。

ですが、夜間コースなどを作っている養成学校もありますので、無理のない範囲内で、養成学校に通えたら良いのではないでしょうか。

高卒以外の最終学歴の場合は保育士試験は受けられる?

卒業してから何年も経った後、保育士として働きたいと思う方も多いと思います。

最後に、高卒以外の最終学歴を持つ場合の、保育士試験の受験資格有無について見ていきましょう。

保育士試験の受験資格がない場合は、養成学校に通って保育士資格を取得する必要があります。

4年制大学を卒業した人の場合

学校教育法に基づいた4年制大学を卒業した場合は、どのような学部や学科を卒業していようと、保育士試験の受験資格はあります

ただ、学校教育法に基づいた4年制大学を中退した場合は、

  • 大学に2年以上在籍していた
  • 62単位以上を修得済み

この2つの条件を満たしていることが条件です。

この条件を満たしてさえいれば、保育士とは無関係の学部や学科を中退した場合でも、保育士試験を受験することが可能です。

卒業から何年も経っていて、自分が何単位修得して中退したのかわからない場合は、在籍していた大学に問い合わせてみましょう。

短期大学を卒業した人の場合

学校教育法に基づいた短期大学を卒業した場合は、保育士とは無関係の学部や学科の卒業でも、保育士試験の受験資格はあります

短期大学を中退している場合、先ほどの大学中退と同じで

  • 短期大学に2年以上在籍していた
  • 62単位以上を修得済み

この2つの条件さえ満たしていれば、短期大学を中退していても、保育士試験の受験資格はあります。

この条件を満たしていない場合は、高卒者の受験資格を満たすことで保育士試験に受験が可能になります。

一度、保育士試験事務センターに電話問い合わせをしてみると安心できるでしょう。

専門学校を卒業した人の場合

専門学校は少々複雑で、

  • 学校教育法に基づいた専門学校を卒業した
  • 2年以上専門学校に在籍して卒業した

この両方を満たしていれば、保育士とは無関係の学部や学科の卒業でも、保育士試験の受験資格はあります

専門学校には1年制の学校も多くあるので、自分が何年在籍していたかをきちんと確認しましょう。

このどちらか一方しか満たしていない場合は、

  • 保育科以外の高校卒業が平成3年(1991年)3月31日以前
  • 保育科の高校卒業であれば平成8年(1996年)3月31日以前

であれば、保育士試験の受験が可能です。

これ以降に卒業した人の場合も、条件次第では保育士試験を受験できるかもしれませんので、一度、保育士試験事務センターに電話問い合わせをしてみましょう。

高卒でも保育士になれる!今からでも保育士を目指そう!

保育士不足打破のためには、あなたの力が必要です。

学歴を理由に保育士を諦めていた方も、この記事を読まれてみて、「これなら高卒の私でも保育士資格を取れそう!」と思っていただけたのなら嬉しいです。

新型コロナウイルス感染症での自粛生活からわかった通り、手に職を付けていると、今後の人生も安心できると思います。

将来的にも子どもは絶対にいなくなりませんし、共働き家庭がさらに多くなれば、保育士の仕事はさらに増え、引く手あまた間違いなしです。

ぜひ、保育士資格を取得して、日本の未来のために貢献してください!