保育士は激務なのに薄給だと言われています。

そのような現状なので、早期離職率が高い職業としても知られており、「いまは保育士として頑張っているけれど、そろそろ退職したいな」と考えている保育士も少なくはないと思います。

とはいえ、退職してしまっては、その後の生活維持が悩ましいところ。

そんな時に活用していただきたいのが、今回ご紹介する失業手当(失業保険)です。

そこで今回の記事では、

  • 失業手当(失業保険)とは?
  • 失業手当(失業保険)を受給するための必要なもの
  • 失業手当(失業保険)を受給するまでの流れ
  • 失業手当(失業保険)を受給できる期間
  • 再就職手当について
  • 失業手当(失業保険)を受給する際の注意点

など、これから保育士を辞めたり退職する予定の方に以上6点について、わかりやすく解説していきたいと思います。

失業保険などがあまりわからない方は参考にしてみてください。

保育士がもらえる失業手当(失業保険)とは?

失業手当(失業保険)は、ある一定の条件を満たしていれば、どなたでも受給することができます。

ここからは、「ある一定の条件」という部分はもちろん、失業手当(失業保険)とは何?という初歩的な部分についてもお話ししていきたいと思います。

再就職を希望している人が求職中にもらえるお金のこと

保育士を、何らかの理由で退職した場合、一時的に無職になってしまいます。

無職であれば当然収入はゼロで、当面の生活に困窮してしまいますよね。

そんな時に活躍してくれるのが、今回ご紹介している失業手当(失業保険)です。

失業手当(失業保険)は、再就職を望んでいる失業者に、より早く安定した生活を送ってもらえるように支給されるお金のことです。

それなので、以下の失業者は、失業手当(失業保険)の支給対象からは除外されるので、注意してください。

  • 失業後すぐに再就職を望んでいない人
  • 退職理由が病気や妊娠・出産などで、早期に再就職できない人

要は、退職後すぐに次の職に就職を望んでいる人でないと、失業手当(失業保険)は受給できないということです。

雇用保険料を一定期間支払っていた人が支給の対象

失業すると、失業手当(失業保険)がもらえるのは、労働者にとってありがたい制度ですよね。

とはいえ、すべての労働者が対象というわけではなく、離職前の職場で一定期間、雇用保険に加入していたことが、失業手当(失業保険)の支給資格の条件となります。

この支給資格の条件は、退職理由によって異なりますので、以下で具体的に解説しますね。

自己都合による退職の場合

多くの場合、退職理由は自己都合によるものかと思います。

自己都合とは、より待遇の良い会社を求めて転職することや独立のための離職を意味します。

これらの理由によって退職したことで失業手当(失業保険)を受給したい場合は、以下の条件に当てはまる必要があるので、退職前に一度確認しておきましょう。

離職の日を含め2年以内に、雇用保険の被保険期間が通算して12か月以上あること

特定理由離職者の場合

特定理由離職者とは、

  • 契約の更新を希望したけれど受け入れてもらえず、離職せざるを得なかった人
  • 両親の介護など、家庭の事情で離職をせざるを得なかった人
  • 扶養家族などとの別居生活が困難になり、離職せざるを得なかった人
  • 通勤が困難になり、離職せざるを得なかった人
  • 企業が募集した早期退職希望者に手を挙げ、離職をした人

主にこれらの事例のことです。

ご自身の退職が、これらの事例に当てはまる場合は、以下の条件に当てはまっている必要があります。

離職の日を含め1年以内に、被保険者期間が通算して6か月以上あること

特定受給資格者の場合

特定受給資格者とは、働いていた幼稚園が急に倒産してしまったり、不当に解雇されてしまったりした場合のことです。

ほとんどの人が、再就職をするにあたってさまざまな準備を行うことと思います。

ですが、特定受給資格者は、転職の準備に充てられる時間がほとんど取れないまま離職を余儀なくされてしまうのです。

この場合も特定理由離職者同様、

離職の日を含め1年以内に、被保険者期間が通算して6か月以上あること

こちらが条件となりますので、覚えておきましょう。

ちなみに…特定受給資格者とみなされることができれば、失業手当(失業保険)の支給開始日は、自己都合退職や特定理由退職者に比べて早くなるというメリットがあります!

保育士が失業手当(失業保険)を受給するために必要なもの

失業手当(失業保険)を受給するためには必要な手続きがあり、それを怠ってしまうと、次の職に就くまでの期間、収入なしの生活を余儀なくされてしまいます。

そのため、少々面倒を感じても、失業手当(失業保険)の受給手続きを行うようにし、経済面の不安を少しでもなくした状態で、転職活動を行っていきましょう!

雇用保険被保険者証などの書類

失業手当(失業保険)を受給するためには、お住まいの地域を管轄しているハローワークへ足を運ぶ必要があります。

こちらから検索をして、管轄のハローワークにある失業手当担当窓口を訪ねてみてくださいね。

その際、以下6点の書類が必要になります。

  • 雇用保険被保険者離職票(前職場よりもらう)
  • 個人番号確認書類
  • 身分証明証
  • 写真(縦3cm×横2.5cm)×2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の普通預金口座

雇用保険被保険者離職票は、退職をした保育園からもらえるものです。

不要なものだと破棄はせず、しっかり手元に残しておきましょう。

保育士が失業手当(失業保険)を受給するまでの流れ

保育士を退職したら、前述した6点の書類を持って、管轄のハローワークへ足を運びます。

その後、ハローワーク内で行われている「雇用保険受給説明会」というものに参加しなくてはなりません。

これは、失業中の求職活動の在り方や、失業手当(失業保険)の受給方法などを学ぶための講座です。

この雇用保険受給説明会の中で、

  • 雇用保険受給資格者証
  • 失業認定申告書

この2点が手渡されます。

この書類には、4週に1度のペースで指定されている失業保険認定日の日付と時間帯が提示してありますので、その指定された日時に再度ハローワークを訪れ、求職活動をしているという証明をしなくてはなりません。

これは、「4週の間に2回以上の求職活動をしているけれど、良い結果が伴わなかった」ということを、ハローワークに提示するものです。

ハローワークが、この証明書の記載事項を元にあなたの失業状態を認めると、早くて2日~3日以内、遅くても1週間以内には、失業手当(失業保険)の給付金があなたの指定口座に振り込まれます。

失業手当(失業保険)の受給の流れをまとめると、以下の通りです。

  1. 必要書類を持参しハローワークへ
  2. 雇用保険受給説明会に参加
  3. 失業保険認定日が定められる
  4. 次回の失業保険認定日まで、2回以上の求職活動を行う
  5. 失業保険認定日にハローワークを訪れる
  6. 失業保険認定日の1週間以内に給付金が振り込まれる

この流れで一度6まで来た後は、4→5→6を繰り返していくことになります。

特に、4と5はとても大事です。

4週に1度訪れる失業保険認定日の期間内に、最低2回の求職活動実績が必要で、その実績結果を失業保険認定日に直接ハローワークに足を運んで提示しなくてはなりません。

どれか1つでも見落としてしまうと、失業手当(失業保険)を受給できなくなる恐れがありますので、スケジュール管理はしっかり行っていきましょう!

ちなみに!

求職活動には、「雇用保険受給説明会」も含まれます。

さらに、ハローワークが行っている「就職活動相談」も含まれますので、失業保険認定日にハローワークに訪れたついでに、就職活動相談を受講しても良さそうですね!

保育士が失業手当(失業保険)を受給できる期間

失業手当(失業保険)は求職者にとってありがたい制度ですが、もちろん受給できる期間が定められています。

失業手当(失業保険)を受給できる期間は、

  • 離職理由は何か
  • 離職時の年齢
  • 雇用保険を支払っていた期間

これら3点で判断されます。

それぞれ見ていきましょう。

自己都合による退職の場合(一部の特定理由離職者含)

被保険者だった期間1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満
全年齢支給外90日90日120日

自己都合による退職の場合は、老若男女問わず、失業手当(失業保険)の受給期間がまったく同じです。

なるべく早めに再就職先を見つけることが、必須ということですね。

会社都合による退職の場合(特定受給資格者など)

被保険者だった期間1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満
30歳~34歳90日120日180日210日
35歳~44歳90日150日180日240日
45歳~60歳90日180日240日270日

自己都合による退職の場合と比べて、受給期間が長いのがお分かりいただけるでしょう。

会社都合で転職を余儀なくされたわけですから、失業手当(失業保険)の受給期間が長く設定されているのは当然のことですし、余裕を持って転職活動に当たることができるのはうれしいですね。

ちなみに!  会社都合による退職の場合は、国民健康保険税の支払いが、最長2年軽減できます!

再就職が決まった場合は、就職の前日までが給付対象

これらの受給期間を満了せず、早期に次の就職先が決定した場合、転職先の初出勤日の前日までが、失業手当(失業保険)の給付対象期間となります。

内定をもらってから初出勤日まで日数が開くことがほとんどですが、あくまでも初出勤日の前日が対象です。

転職活動の際には、ハローワークから失業手当(失業保険)を受給している旨を報告しておき、初出勤日に「採用証明証」を受け取ることを忘れずに行いましょう。

保育士が失業手当(失業保険)を受給中に再就職できた場合

失業手当(失業保険)を受給していると、前章でお話しした給付期限ギリギリまで再就職を引き延ばして給付金をもらったほうがお得なのでは?!と思ってしまいますよね。

ですが、ある程度早い段階で再就職が決定した場合は、再就職手当というものが支給されるので、どちらがお得かは言うまでもありません。

若い人であれば、この先の長い人生を考えて再就職は早いに越したことはありませんし、何より自分のモチベーションが雲泥の差ではないでしょうか。

無職でも収入があると思ってしまうと、そちらに怠けてしまうことにもなりますが、ご自身の人生設計を壊すことのないよう、できるだけ早めに再就職を決めて、安定した生活を送れるようにしましょう。

再就職手当を受給できる条件

再就職手当を受給するには、以下に記載した通り、いくつかの条件があります。

  1. ハローワークに失業を申し出て7日以上が経過していること
  2. 失業手当(失業保険)の支給残日数が3分の1以上あること
  3. 転職先での働き方が正社員などで、雇用保険を支払う見込みがあること
  4. 退職した保育園に出戻るor人事面などで癒着がある保育園は対象外

1と2の条件を満たしていて、勤務していた保育園とは何の関わりもない保育園に転職orまったくの異業種へのフルタイム転職であれば、問題なく再就職手当を受給できます。

4に関しては、しっかり情報を得てから、求職活動を行うようにしましょうね。

再就職手当の支給額

再就職手当の支給額は、「支給残日数×基本手当日額×給付率」という計算式によって決定します。

令和2年度の基本手当日額は、以下の通りです。

年齢基本手当日額
30歳未満6,850円
30歳~45歳7,605円
45歳~60歳8,370円
60歳~65歳7,186円

基本手当日額は毎年8月1日に変更されますので、その年の基本手当日額をきちんとこちらから確認しておくようにしましょう。

以下は、支給額の給付率を表したものです。

  • 支給残日数が3分の2以上→70%
  • 支給残日数が3分の1以上→60%

たとえば、勤続年数15年の35歳のAさんが、保育士を自己都合により退職したとしましょう。

この場合、前章で説明した表にある通り、120日間の失業手当(失業保険)の支給期間が設けられています。

支給残日数が3分の2以上余っている状態で再就職が決まった場合、

120日×70%=84日分×7,605円=638,820円

最大でこちらの金額が、再就職手当として振り込まれることになります。

とても大きな金額ですよね。

ボーナス並みの手当をいただけるので、早期に再就職を決められるよう、努力してみてはいかがでしょうか。

再就職手当の支払日

再就職手当は、再就職が決定してハローワークに報告をしてから約1か月後に振り込まれます。

再就職が決定し、それをハローワークに報告をすると、「再就職手当支給決定通知書」がハローワークから届きます。

この書類に必要事項を記入して送り返すことで、再就職手当が支給されるという仕組みです。

再就職の申告を怠ると、前述した条件をすべて満たしていても再就職手当を受給できませんので、しっかり申告をするようにしてくださいね。

保育士が失業手当(失業保険)を受給中の注意点

失業手当(失業保険)を受給中、常に求職活動を行っているわけではありませんよね。

空き時間にアルバイトをして、失業手当(失業保険)だけでは賄いきれない生活費を稼ぐ必要も出てくるでしょう。

では、失業手当(失業保険)受給中に気を付けたい、アルバイトに関することを見ていきたいと思います。

アルバイト可能な就業時間を確認すること

失業手当(失業保険)を受給するためには、ハローワークに失業の申告をしなくてはなりません。

これは、ここまで再三お話しをしてきたことです。

実は、ハローワークに失業の申告をしてから7日間のことを「待機期間」と呼び、この期間に収入を得る行動を起こすことは禁じられています。

この期間にアルバイトをしてしまうと、収入があるとみなされて失業手当(失業保険)や再就職手当が受給できなくなってしまうのです。

それなので、最低7日間はアルバイトはせず、今後の人生設計や新しい仕事について考える時間に充てるようにしてください。

アルバイトをすることをハローワークに申請すること

失業手当(失業保険)を受給期間中、生活費のためにアルバイトすることは違法ではありません。

ただ、アルバイトをしていることを、ハローワークに申請しなくてはなりません。

この時、アルバイト先で雇用保険に加入できてしまうほどの、多くのシフトを組むことはNGです。

あくまでも、生活費の補填のためにアルバイトをしているということが重要ですので、週20時間未満の勤務に収まるよう、アルバイト先の面接時に相談をするようにしましょう。

元保育士も失業手当(失業保険)を受給できる!できるだけ迅速に再就職するのがおすすめ!

この記事では、

  • 失業手当(失業保険)とは?
  • 失業手当(失業保険)を受給するための必要な手続き
  • 失業手当(失業保険)を受給するまでの流れ
  • 失業手当(失業保険)を受給できる期間
  • 再就職手当について
  • 失業手当(失業保険)を受給する際の注意点

について見てきましたが、いかがでしたでしょうか?

保育士を退職しても、失業手当(失業保険)を受給できることで、少しの間は生活のことを考えることなく転職活動に集中できそうですよね。

早期に転職活動が成功すれば、再就職手当がいただけるので、モチベーションアップにも繋がると思います。

失業手当(失業保険)や再就職手当を受給するには、一定の条件があり、ハローワークに直接足を運んで申請する必要がありますが、少しでも安定した生活を送るためにも、それを苦とせず、しっかり受給するようにしてくださいね。