元気に過ごしていた赤ちゃんや子どもが突然亡くなってしまうSIDS(乳幼児突然死症候群)。睡眠中に起こることが多く、保育所でも実際にお昼寝中に起きている死亡事故です。

窒息や他の病気などの理由が見つからないため、原因不明の病気と言われているSIDSですが、SIDSが起こりやすくなる要因を元に、リスクを減らす方法は解明されつつあります。

保育士として正しい知識を持ち対応をすることで、確実にSIDSのリスクを減らすことができるのです。

SIDSとはどんな病気なのか、そして保育園で行うべき対応方法についてご紹介します。

SIDS(乳幼児突然死症候群)とは?

SIDS(乳幼児突然死症候群)とは、死につながるような病気や疾患がないにも関わらず、乳幼児が睡眠中に突然死亡する病気です。

顔にタオルが掛かってしまっていたことや布団に顔が埋もれていたことによる窒息とは原因が異なります。

厚生労働省の調べによると、平成28年にSIDSで死亡した乳幼児は109名。乳児期の死亡原因としては、第3位となっています。

参考:厚生労働省 ホームページ

SIDSが起きる原因

SIDSが起きる明確な原因は分かっていません。しかし、SIDSが起こりやすい要因は解明されつつあります。

SIDSは睡眠中に乳幼児が無呼吸になることによって起こると考えられています。例えば、うつ伏せに寝ている状態で顔の位置は呼吸ができる場所であっても、胸が圧迫されて無呼吸を引き起こしやすい状態である時。

たばこの煙が部屋に充満していて二酸化炭素が極端に多い状態である時など、赤ちゃんが無呼吸になりやすい環境の中で眠っている時に、SIDSは多く引き起こされます。

しかし、SIDSで亡くなった全ての乳幼児がその様な状態であったというわけではありません。

SIDSが起こる年齢・月齢

SIDSは生後1歳未満の乳児に起こることが多い病気です。特に生後2か月から6ヶ月の赤ちゃんへのリスクが最も多くなります。

しかし、1歳を過ぎたからと言って、油断はできません。実際に2歳を過ぎてからもSIDSでの死亡事故は起きているため、3歳までは注意が必要です。

SIDSのリスクを減らすための対策

SIDSのリスクを減らすための対策として、

  • 1歳になるまでは、眠る時は仰向けに寝かせる
  • できるだけ母乳で育てる
  • 保護者等はたばこをやめる

という3点を厚生労働省は啓発用ポスターなどで呼びかけています。

その理由としては、うつ伏せ寝の場合の発症率が仰向けの時よりも高いこと。母乳で育っている赤ちゃんの方が人工栄養で育っている赤ちゃんよりも、SIDSの発症率が低いこと。保護者などが喫煙者の場合の発症率が高いことが挙げられています。

また厚着をさせすぎることによって体温が上がる「うつ熱」によって、睡眠中の呼吸が鈍くなり無呼吸が起こることも分かってきています。

これらの項目を意識して、睡眠環境を整えることで全てのSIDSを防げるわけではありませんが、リスクを減少させることはできます。

母乳育児は、何らかの理由で母乳育児ができない場合もありますので強制はできません。しかし、赤ちゃんがいる室内で喫煙をしない、うつ伏せ寝を避けるということはすぐにでも実践ができます。

原因がはっきりとしないSIDSから赤ちゃんを守るためには、できるだけリスクを減らしてあげる必要があります。

SIDS を防ぐために保育所で徹底するべきこと

保育所では、室内で喫煙をすることはまずないでしょう。母乳育児は難しいことが現実です。この2つはどの保育所でも同様です。

しかし、睡眠時の対応は保育所によってばらつきがあります。この違いがSIDSを防げるか、悲しい死亡事故に繋がるかという違いです。

うつぶせ寝の禁止

まずは、厚生労働省でも呼びかけているように、うつ伏せ寝の禁止を全ての保育士が理解し実践することが大切です。

うつ伏せ寝により低酸素状態になったり、うつ熱によって睡眠中の呼吸が鈍くなるということが分かっています。

平成25年度の厚生労働省の調べによると、保育所で1年間に起きた死亡事故は19件。そのうち睡眠中の死亡事故が16件。そして、発見された時にうつぶせ寝であった件数は9件にも上っています。

参考:厚生労働省 保育施設における事故報告集計

全ての死亡事故の約半数はうつ伏せ寝で起きているのです。SIDSだけではなく、窒息死の危険性も高いうつ伏せ寝。

うつぶせ寝の方が良く眠るから…という理由で寝かせている保育所もあるかもしれません。しかし、全職員が意識をして禁止することが園児が死亡するという悲しい事故を防ぐ第一歩です。

睡眠チェックは5分おきに!

自宅では、子どもが眠っている時に呼吸の有無や眠っている姿勢を確認して記録に残すことは、ほとんどありません。

しかし、保育所では違います。厚生労働省の補助事業として日本保育協会が発表した「保育所の保育内容に関する調査研究報告書」内で、SIDSの予防のために0歳児は5分間、1,2歳児10分に1回の睡眠チェックを行うこととされています。

その理由としては、呼吸の有無を確認すると共に身体に触れて刺激を与えることで、直後に発生するかもしれないSIDSを防ぐ効果があるとも書かれています。

参照:日本保育協会 保育所の保育内容に関する調査報告書

国では定められていませんが、地方自治体が独自に5分間睡眠チェック表を作成し、認可保育所でのチェックを義務付けている所もあります。

1,2歳児は10分間とされていますが、0,1,2歳児共通で5分間チェックを実施した方が更に安心ですね。

この睡眠チェック表の存在は、子どもの命を守るということが1番ですが、実は保育士を守るという意味も持っています。

SIDSによる事故が起きた時に、保育士が目を離していたからではないか、見守りを怠っていたのではないかと思われないようにするためです。

しっかりと書面に残すことで、保育士が自分自身を守る手段ともなるのです。

うつぶせ寝が習慣の子どもを仰向けで寝かせる方法

うつ伏せ寝は禁止ということを理解していても、どうしてもうつ伏せでないと寝てくれない、何度仰向けに直してもうつ伏せになってしまうという子どももいますよね。

自宅でのうつ伏せ寝が習慣になってしまっていることや、うつ伏せでお腹が布団に付いている状態が安心するという子どももいます。

そんな時には、まずは抱いて眠ることから始めてみましょう

保育士が座った状態で子どもが保育士の方を向くように抱き、そのまま前後にゆっくりと揺れます。眠ったことを確認したらその揺れに合わせて布団に降ろします。

揺れているリズムのままで布団に降りるので、仰向けで寝かせても目覚めることは少なくそのまま眠ってくれます。

1,2歳児で大人の話していることが理解できるようになってきたら、仰向けで眠るように話をすることが効果的な場合もあります

自宅ではうつ伏せで眠っている子どもは、初めは眠るまでに時間が掛かりますが根気強く付き合うことが大切です。

抱っこの場合も話をする場合も、徐々に仰向けの状態に慣れて眠れる様になっていきますよ。

また、眠っている間にうつ伏せになってしまうという子どもも多いと思います。

うつ伏せになってしまった状態から仰向けに直す場合には、保育士の胸を子どもに近付けて一度抱きとめてから仰向けに降ろすと、比較的スムーズに仰向けに直すことができます。

まずは、子どもが仰向けで眠ることに慣れるような関りを。そして、徐々に寝かし付け時から仰向けで眠れることを目指せると良いですね。

5分おきの睡眠チェック、正しい方法とは?

5分おきの睡眠チェックには、地方自治体で定められた形式か保育所独自のチェック表を使うことになります。

チェック方法は、

  • 5分ごとにお腹に触れたり口元に手を置き、呼吸の有無を確認する
  • うつ伏せになっている時には仰向けに直す
  • 身体の向き(左右に傾いている、真上を向いている)を記入する。
  • 身体に触れて軽い刺激を与えることで、直後に起きる可能性のあるSIDSを予防する
  • 全身状態(顔色、咳や鼻水で呼吸が荒くないかなど)を確認する

の5点を意識して行うと良いでしょう。

目で見て確認をするだけではなく、触れて呼吸の有無を確認すること

身体の向きを記入することで、その子どもの状態をより細かく、記録に残すことが大切です。

またSIDSの予防の他にも午睡中の急激な体調の変化や、鼻水や痰による窒息を防ぐという意味でも全身状態のチェックは欠かせません。

担任が部屋を離れる際には、他の保育士に睡眠チェックを頼むこともあるかと思いますが、必ず体調面の伝達、眠る時のくせなどは伝えておきましょう。

慣らし保育中は特に注意が必要

お父さんやお母さんと離れて初めての保育所生活。初めての環境での生活は、赤ちゃんや子どもにとって大きなストレスになります。

保育所で起きているSIDSの死亡事故は入園当初の4月に多く起きているという事実も…。子どもがストレスを感じることがSIDSが起きる1つの要因となってしまうのです。

では、慣らし保育中のSIDSを防ぐためにはどのような対策をすれば良いのでしょうか?

まずは慣らし保育をゆっくりと進め、子どもへの負担を減らすことが大切です

保護者の仕事復帰の時期との兼ね合いもありますが、無理をして慣らし保育を進めてしまうことは子どもの負担となります。

初めの2日間は1時間から始め、次の2日間は2時間。そして食事、お昼寝と子どものペースに合わせてゆっくりと慣れられるようにしていきます。

時には、保護者にも子どもと一緒に保育所で過ごしてもらい、場所に慣れる事から始めるという配慮が必要な場合もあります。

そして慣らし保育中の子どもが眠っている時には、5分おきの睡眠チェックに加えてすぐそばに保育士がいられる状態を作り、異変に気付けるようにする必要があります。

慣らし保育中の子どもの様子、そして死亡事故に繋がる危険性が高いということを職員全員が把握して、主任保育士やフリーの保育士が入るなど、保育士の人数を増やすことも効果的です。

まとめ

今まで元気だった子どもに突然起きる可能性のあるSIDS。家庭での睡眠中に多く起きている病気ですが、保育所の午睡中にも十分発生する可能性はあります。

はっきりとした原因がわからないからこそ、リスクがあると考えられている状況をなくし少しでもSIDSへの危険性を減らすことが、子どもの命を守り保育士としての自分を守ることにも繋がります。

保育所でできることは、睡眠中の対応と子どものストレスをできるだけ軽減してあげることです。保護者と連携をとりながら、子どもの命を守る保育をしていきたいですね。