医療保育士という職業を聞いたことがあるでしょうか?病気で入院をしているのは、大人だけではありません。小さな子ども達の中にも、治療のために長期間入院をして病気と闘っている子どももいます。

そんな子ども達の心のより所となるのが、医療保育士です。医師や看護師と連携をとりながら、専門職である保育士の目線で子ども達のケアを行います。

入院生活の中で、辛い治療と日々向き合っている子ども達と関わる医療保育士。その仕事内容や働くための条件、気になる給与面についてもご紹介します。

医療保育士を目指そうと考えた時には参考にしてみてくださいね。

医療保育士とは

入院中の子どもが前向きに治療と向き合い、入院生活が少しでも楽しく安心できるものとなるように、遊びや絵本の読み聞かせなどを通して関わる仕事です。入院病棟での勤務のため、病棟保育士と呼ばれる場合もあります。

利用する子どもの年齢は、病院によっても違いますが0歳から18歳くらいまでの子ども達です。

小児入院施設のある全ての病院に医療保育士が設置されている訳ではなく、まだ数が少ないことが現状です。しかし、入院中の子どもへの保育の必要性が注目されてきていることで、医療保育士を設置する病院は増えてきています。

子どもの心と身体のケアが1番の役割ですが、入院中の子どもの保護者とコミュ二ケーションをとることで、保護者支援も行います。

同じく、病院内で働く保育士として「院内保育士」という仕事もあります。院内保育士は、入院中の子どもではなく、病院で働いている医師や看護師の子どもの保育をする保育士です。

また、病院によっては「病児保育士」の設置がされている場合もあります。病児保育士は病気や感染症により、保育園などに通えない子どもの保育をする保育士です。

入院をしている子どもの保育を行う医療保育士とは違い、普段は保育園などに通園している子どもの保育を一時的に行います。

この3つは勤務内容が違いますが、中には院内保育士と医療保育士を兼任する。という病院もありますので、全く関わりがないわけではありません。

医療保育士の仕事内容

入院中の子どもと関わりながら、心や身体のケアを行う医療保育士。その仕事内容は、普通の保育園に勤める保育士と異なる部分もあれば、共通する部分もあります。詳しくご説明します。

医師や看護師との連携

医療保育士は、入院中の子どもの保育を行いますので、医師や看護師との情報共有や連携が不可欠です。医師や看護師のカンファレンスに同席する場合もあります。

子どもの情報を把握し、1人ひとりの症状に合った保育を行うためです。保育室に来られない子どものために、ベット上で保育をすることもあります。

そして、保育中の様子を医師や看護師に伝える必要もあります。保育士として子どもと関わる中で気付いた体調の変化や子どもの気持ちを伝えることで、治療に役立てるためです。

また、季節の行事や活動は医師や看護師も一緒に行うこともあります。辛い治療を受けている子ども達ですので、中には医師や看護師に対して恐怖を感じる子どももいます。

治療から離れて、行事という楽しい時間を一緒に過ごすことで、医師や看護師との信頼関係が築きやすくなります。

子どもとの関り

入院中の子どもが少しでも楽しく過ごせるような保育計画を立てます。また、1人ひとり症状が違うので、子どもに合わせた保育を考える必要もあります。

主な活動は絵本の読み聞かせや製作、子どもの興味のある遊びを一緒を楽しんだり、ピアノに合わせて歌を歌ったりと、身体を動かすことが難しい子ども達でも楽しめる活動を行います。

また、食事や排泄、睡眠の援助などの生活面での介助を行うこともあります。特に、家族の付き添いが難しい子どもにとっては、安心して甘えられる存在が医療保育士です。

医療行為は行いませんので、子どもの体調の異変に気付いた時にはすぐに医師や看護師に伝えます。子どもとコミュニケーションをとりながら、素早く異変に気付ける観察眼が必要です。

保護者との関り

入院している子どもの保護者の中には、気持ちが落ち込んでしまったり自分を責めてしまう保護者もいます。

そんな保護者が少しでも安心できるように、保育中の子どもの様子を伝えたり、育児の相談に乗ることもあります。保護者が子どもと笑顔で関わることができるように、不安を受け止める役割もあるのです。

医療保育士になるための条件

入院中の子どもや保護者と関わり笑顔にすることができる医療保育士。やりがいのある仕事ですね。では、どんな人が医療保育士になれるのかを見ていきましょう。

必要な資格は?

保育士資格が必須です。入院中の子どもと関わりますが医療行為は行いませんので、看護士資格は必要ありません。

1つの病院に勤める医療保育士は人数が少ないことが多いので、すぐに一人前の保育士として働くことを期待されることも…。保育士資格だけではなく保育士経験が必須となる場合もあります。

また、2007年に日本医療保育学会が「医療保育専門士」という新しい民間資格を定めました。常勤の医療保育士として1年以上の勤務経験があり、日本保育学会会員として1年以上の会員歴がある人が資格取得に挑戦できます。

医療保育士になるために必須の資格ではありませんが、資格取得のために研修参加や論文の提出を行うなど、医療保育のスペシャリストとになりたい人にはおすすめです。

資格取得の詳しい流れ

参考資料:日本医療保育学会

 医療保育士としての知識

医療行為は行いませんが、子どもの体調の変化に気付く必要がありますし、医師や看護師から伝えられた子どもの症状を元に保育カリキュラムを立てることが大切です。

そのため、ある程度の医療知識を持っておく必要があります。

また、子どもの心のケアのために心理学の知識を得ていることもプラスとなります。

医療保育士、求人の探し方

子どもとじっくりと関われるということ、入院中の子どもや保護者のケアを行えるというやりがいから医療保育士になりたいという人は増えてきています。

しかし、医療保育士を設置している病院が少なく、求人数は普通の保育園に比べて圧倒的に少ないことが現状です。

では、どの様に医療保育士の求人を探せば良いのでしょうか?

まずは、ハローワークや求人サイトで医療保育士の求人を探してみましょう。

この時に注意してもらいたいことは、医療保育士で探していても院内保育士や病児保育士の求人も多く見られることです。

院内保育士と医療保育士を兼任するという病院もありますが、中には院内保育士の仕事のみを行い、医療保育士の仕事ができないという場合もあります。

医療保育士の求人なのか、院内保育士や病児保育士の求人なのかを必ずチェックしてください。

医療保育士の求人が見つからない場合には、医療保育を実施している病院のホームページも調べてみましょう。

中には、ハローワークや求人サイトに求人を出していないけれど、ホームページ上で求人を出している場合もあります。

求人が見つかったら保育経験など、自分が働ける条件であるかを見て下さいね。

医療保育士の平均給与とは

医療保育士は、正社員で月収19万円から22万のところが多く、保育園勤務の保育士よりもやや高いくらいです。病院が運営していますので、賞与や福利厚生もしっかりとしているところが多いようです。

また、院内勤務との兼任で夜勤もある場合には、20万円から高い所では28万円くらいの職場もあります。

パート勤務では1,000円から1,300円程でこちらも保育園勤務よりもやや高い印象です。

医療の現場という、命と向き合う仕事の1つである医療保育士は、普通の保育士よりも学ぶべきことがたくさんあります。その分、病院側としても普通の保育士よりも高い給与を設定しているのでしょうね。

ただ、病院が運営せずに企業に委託をしている場合には、正社員では月収18万円から22万円、パート勤務では900円から1,100円程度と保育園勤務の保育士と変わらない額が多くなります。

最近では、企業に運営委託をしている場合も多いので、保育園勤務と同額程度の医療保育士も多いでしょう。

まとめ

保育士として働く際の選択肢の1つである医療保育士。入院治療で病気と闘っている子ども達、そして子どもを支える保護者にとって、医師や看護師よりも身近な存在です。

医師や看護師と連携しながら子どもと保護者を支えるやりがいのある仕事ですね。新たに保育専門士という資格が誕生したことによって、さらにその認知度は上がってきています。

まだ求人数が少ない職業ではありますが、保育園勤務とはまた違ったやりがいを感じられる仕事として今後も人気が高まっていきそうです。