待機児童、少子高齢化が話題になり保育園を増やそうという傾向にありますが、残念なことに施設が増えても保育士が不足しています。
厚生労働省の「保育士に関する関係資料」によると、H27年に保育士資格を取得して卒業し就職した人が4.4万人。そして保育士資格試験合格者が1.4万人となっています。
1年間で約6万人の保育士が誕生しているのです。
保育士資格を保有する人達が現場に戻ってくることが現代社会では望まれています。しかし、潜在保育士からの復帰は少ないようです。
そこでこの記事では保育士へ復帰を考えている方に、潜在保育士への再就職支援にむけて、厚生労働省ではどのような対策や支援などの取り組みがあるのか、復帰するメリットなどを紹介します。
再び保育士へと復職をする方へ、ぜひ参考にしてください。
目次
潜在保育士とは?現在の数は?
潜在保育士とは、保育士の資格を保有していて保育士資格を必要とする職場に就業していない人のことを指します。
潜在保有士はだいたい2パターンに分けられます。
- 保育士として働いていた→離職し別の仕事をしているor家庭に入っている
- 保育士資格を取得したが、一度も保育士として働いていない
②に関しては、H27年は学校を卒業して保育士取得した者(4.4万人)のうち、半数(2.2万人)が保育士にならず別の道を歩んだようです。
H27年時点で、潜在保育士の数は70万人以上。
潜在保育士を掘り起こしたいと、政府もいろいろな対策をしていますが、下記のグラフを見ても
未だに潜在保育士の数は増え続けています。
潜在保育士が増えている3つの原因
なぜ保育士資格を保有しながらも、保育士を辞めて別の仕事をしていたり、そもそも保育士にならずに別の道を歩む人が多いのでしょうか?
潜在保育士が増える主な原因は下記の3つです。
給与の不満・低賃金
現場の保育士が改善してほしい第1位として常にトップにあがる不満が給与に関することです。
下記は実際に保育士の改善希望状況をグラフにまとめたものですが、圧倒的に給与の不満が多いのがわかると思います。
あまり良い給与を支払えない保育園では、月収15万円もありうる環境です。いくらボーナスがあっても、残業時間を考えたらコンビニバイトをした方が高いかもしれません。
子供の命を預かるという責任ある仕事で、ほとんど昇給しないとなると辞めたくなるか、求人票を見た時点でその道を進まないと選択することも納得です。
職員が足りない
職員は少なく子供は満員では、保育士ら病気だろうと何だろうと、人手不足だから休めません。
有給がとれるとしたら大げさでなく、
- 家族の身になにかある
- 自身の大病
- 辞める時
というケースのみという保育園も少ないありません。
実際に私の働いていた職場でも同じ条件の労働者であるはずなのに、有給を使うことを止めるのは上司や経営者ではなく、なぜか職場の同僚や先輩達でした。
1人の保育士にかかる負担が大きすぎて、現場に出て缶がけ直し、続けて行くのが辛いと感じるのかもしれません。
また、保育士資格を取得するための学校では、保育園実習が必須です。保育技術を学ぶために行った実習先で、現場を知って違う道を進む人もたくさんいましたよ。
事務・雑務が多すぎる
入園式、卒園式、運動会、お遊戯会…イベントもたくさんありその準備が必要です。
また、この他にも日常的に行う日案、業務記録、制作物準備、壁面などの事務もたくさんあります。
ときには保育時間に事務仕事をすることもあり、保育士ではなく事務員ではないかと錯覚してしまうほどです。
子供も保護者も先生も、子供たちをしっかりと保育することが大切と思っているはずなのに、なぜか増える事務をこなさなければならず、保育の時間を削っています。
その事務意味はあるんでしょうか?
事務や雑務の軽減はを求める保育士はとても多いのです。
潜在保育士が復帰しない年代別の理由を調査
潜在保育士が増加する傾向にある日本社会で、なぜ保育士に復帰しないのか。
厚生労働省が20代〜60代までの潜在保育士の方を調査した結果、年代ごとに違う悩みを抱えていることがわかりました。
そのグラフがこちらです。
20代の表を見ると「自身の健康体力」「能力」に不安があるようです。
残念ながら20代は「若いから」「新人だから」と仕事をたくさん抱えさせられる年代。
安い給料で残業・持ち帰りの仕事をして働く若い保育士達も多いのが現状かもしれません。
30代になると結婚、出産など人生に大きな変化が訪れる年代。
30代や40代は、保育士は続けるけれどフルタイム勤務ではなく、パートタイマーで働く人が増える年代です。
理由として、結婚をして家庭に落ち着く人が多く、家庭と両立できるのかという悩みがあるようでした。
また、50代以上では飛んで走って寝転んで遊ぶ子供に、ついていけるのだろうか?という不安が強くなる年代です。
フルタイムはもちろん、パートタイマーで働くのも、体力がついていけないようです。
潜在保育士に対する政府(厚生労働省)の支援や対策について
まず厚生労働省より待機児童解消加速化プランが作成されていますが、メインとなる部分が下記の5つ。
- 保育所を増やす
- 保育士の確保
- 小規模保育所などの運営支援
- 認可を目指す認可外保育所への支援
- 事業所内保育施設への支援
上記の中でも保育士を確保するという部分が、潜在保育士に再就職をしてもらうための具体的な施策となります。
ではそんな潜在保育士に再就職をしてもらうための具体的な施策はどのようなことなのか。
主な施策が下記の5つです。
雇用時間のマッチング
子育て、介護など家庭との両立をするためにフルタイム勤務ではなく、働きやすい時間だけ勤務。(フルタイム、早番、遅番など)
家庭の状況が落ち着いたらフルタイム勤務にあがるという条件などを提案しています。
ワークシェアリング
保育施設側がシフトを調節しながら、最も児童の利用人数が多い昼間の時間に潜在保育士だった人を多く配置。
正規職員は朝、夕に集中して入ることにより、お互いが働きやすい仕事時間に、交代で勤務するようにしていきます。
早番、遅番などが必要な保育士ならではの働き方です。
保育士の子育てサポートの充実
子供を育てながら、フルタイムで保育士として勤務することはともて難しい状況であるため、離職率する人が増えています。
保育士の子供が優先的に保育施設に入園できる制度です。また、長期休みは学童保育なども利用できます。
事務作業の効率化
パソコンを導入し、
- 月案などで重複しているもがあれば自動で作成される
- 個人ノートに入力した内容が業務日誌にも反映される
など、事務作業が少しでも減るような工夫ができています。
保護者に伝えるための連絡ノートや、いまはアプリでやりとり可能です。
お便りを大量に印刷して、間違いの内容に配布をしていた時代も終わりが近づいています。
保育士評価制度
職務評価、昇給評価などの制度を設けました。
年数回、職員同士で評価し合い、テスト合格による昇給を設定することでモチベーションを保ちます。
勤続年数であまり収入が変わらないことの不満を改善するための施策で、能力ややる気のある人にお給料が多く支払わられるシステムです。
潜在保育士が保育士に復帰する2つのメリット
厚生労働省が本格的に待機児童を解消に向けて取り組んでいることがおわかりいただけましたでしょうか?
その他にも潜在保育士がいま保育現場に戻ると下記のようなメリットがあります。
基本給与の向上している
政府は、政策として保育士の処遇改善を打ち出し、2017年より全ての保育士の給与を2%引き上げています。
多くの人がたったの2%?と思うかもしれませんが、この他にも保育士評価制度など能力が高い保育士の収入をあげる施策も行われている中で、全員一律2%の給与UPは相当財源を投入しているはずです。
今後も、高水準の保育士には見合った給与が支払われるようなシステムが増えると考えると、これから保育士へ戻るメリットは高いと思いませんか?
保育士資格を必要とする職場の増加して選択肢が増えた
認可外保育施設を認可施設にするための支援や、認可外の状態でも国から補助金が支払われるようになってきているため、保育園だけではなくさまざまな職場が誕生しています。
例えば、
- 企業主導型保育所
- 放課後等デイサービス
- 認定こども園
などがその例です。
これら施設の多くが、職員は保育士資格を持つものが〇名以上勤務していることなどの条件で補助金が支払われることになっているので、
施設経営者が保育士にお金を払ってでも来てほしいと思うようなシステムが出来上がってきています。
なので、施設によっては保育園よりも優遇されることもありますよ。
潜在保育士が保育士に戻る場合の注意点や研修について
潜在保育士は、保育現場未経験者であったり、ブランクがあることから採用をする側もなかなか踏み切れない現状があります。
厚生労働省委託事業の「保育士の再就職に関する資料」に「施設が求める職員」についてのアンケートがありますが、
- 1位「保育士として基本的な実務経験があること」
- 2位「社会人マナーがしっかりしている」
とあります。
ただ、今では採用する側が求める人材を増やすためや、潜在保育士の不安解消に向けてさまざまな研修が行われています。
下記は実際にある研修内容で、保育現場で役立つ知識やスキルだけでなく、保護者対応まで指導してくれる研修カリキュラムです。
その他にも現在は保育士養成学校や自治体などで研修・講義が増えただけでなく保育現場で行う「実務研修」もあります。
アレルギー児童への対応や、手遊び、保護者対応など現場を復帰する前にぜひ知っておきたい内容を講師が変わりやすく教えてくれます。
研修を受けたことを面接でアピールすれば、やる気ありと判断されて再就職の際も有利に転職をすることができるはずです。
また、相談コーディネーターを設置している自治体もあり、保育士再就職への不安や現場の悩みをしっかりと受け止めてくれて、しっかりとしたサポート体制が作られています。
潜在保育士が再就職する際におすすめの仕事
潜在保育士の方は
と思っている方が多いですが、今はそうではありません。
保育施設以外でも保育士資格は有効に使え、保育士資格が役立つ転職先がこちらです。
- ベビーシッター
- 放課後等デイサービス
- 企業主導型保育所
- 院内保育
- 病児保育室
- 学童保育所
- 家庭的保育事業
- 児童厚生施設
- 乳児院
- ショッピングモールキッズスペース
- 助産施設
- 児童養護施設
お金をとるか、時間をとるか…あなたがどれを重視するかたで変わってきますが、
例えば、、「ベビーシッター」はとても高時給なお仕事です。
泊まり込みで食事つき!がっつりと働ける方は「児童養護施設」からとても感謝されるでしょう。
少しだけ働いてプライベートを充実させたい人は、「学童保育」がおすすめ。
多種多様な働き方ができる保育士。
保育士資格がどんな場所で必要とされているか、求人情報誌や街を歩いて探してみてください。たくさん見つかりますよ。
詳しくは下記の記事でも紹介しております。
まとめ
保育士資格を保有する人達が現場に戻ってくるために、政府がどれほど潜在保育士の再就職支援に力を入れているかご理解いただけましたでしょうか?
働き方改革、昇給制度、子育て支援、研修など潜在保育士の人たちが現場に復帰するためにできることを、政府はしっかりと考えて取り組んでいます。
保育士へ復帰を考えている方は、昔の保育士と同じ考えは持たない方がいいかもしれません。
徐々にでもいいので、自分にあう転職先などをリサーチしておくことをおすすめします。