お泊り保育は、今や多くの保育園や幼稚園で実施されている行事のひとつです。
「お泊り」ということで、普段とはまったく違う事件が起こったり、普段の保育生活の中では味わうことの出来ない感動を体感することができます。
ただ、
- お泊り保育が初めてで何をすればいいかわかない
- お泊り保育の狙いってなに?
- お泊り保育の注意点などはある?
など、お泊り保育の経験がない保育士や初めてお泊り保育を導入する保育園の方などは悩んでしまいますよね。
そこでここでは、保育園や幼稚園の教員目線で、お泊り保育の基本からお泊り保育をどう過ごせば良いのかなど、お泊り保育について詳しく解説していきます。
是非参考にしていただき、楽しいお泊り保育を実施してみてください。
目次
そもそもお泊り保育とは?目的・場所・時期について
現在、小学校に入学前の年長クラスを対象に、お泊り保育を実施する保育園や幼稚園が増えてきています。
結論をいえば、超が付くほど大変です(笑)
では、なぜそんな大変な行事を、わざわざ行うのでしょうか。
開催の目的の基本は「自立心を育てていく」
お泊り保育を開催する目的の基本は、子どもの自立心を育てていくためです。
お泊り保育では、基本的にすべての行動を自分で行います。
今までは親御さんに手伝ってもらっていた洋服の着脱や、入浴、トイレ、食事などを一通り自分の力でやり、自立心を育てるのです。
自分で出来たという喜びが自立心を育て、自宅に帰った後も、親御さんの手を借りずに、「自分の力でやりたい!」という意欲に繋がることでしょう。
また、次の年度には、晴れて小学生です。
大人への階段を一歩上る前に、集団生活をより学び、協調性を育てることができるメリットもります。
開催する場所は園によって変わる
お泊り保育を開催する場所は、その保育園や幼稚園の方針によって変わります。
保育園や幼稚園でお泊り保育をする場合もあれば、外部の宿泊施設を借りて行う場合もあります。
前者の場合は、日中は日帰りで動物園や水族館などに行って遠足気分を味わい、園に帰ってきた後でお泊り保育を行うケースです。
後者の場合は、園児を引き連れて大型バスなどで移動をすることになります。
教員の立場で気が抜けないのは後者ですが、いつもと違う雰囲気を楽しめるのも後者の醍醐味ではあるでしょう。
開催する時期は年長クラスで1泊2日が一般的
お泊り保育を開催する時期は、多くの保育園や幼稚園で5歳児(年長クラス)の夏休み付近です。
年長クラスになれば、ある程度教員の言うことを理解してくれるようになりますし、なにより小学校入学前の思い出作りにもなります。
お泊り保育の期間は、1泊2日が一般的です。
お泊り保育をする4つのメリット
一般的に年長クラスの子どもを丸一日預かるとなると、とても大変だということは誰しもが想像つくかと思います。
では、なぜそんな大変なことを、わざわざ行うのでしょうか。
お泊り保育を行うことでの、子どもにとってのメリットをここでは4つピックアップしてみました!
- 生活習慣が身につく
- 子供の自立心が育つ
- 協調性が身につく
- 思い出として残る
生活習慣が身につく
お泊り保育は、生活習慣を身に着けることにも繋がります
自宅で過ごしていると、なんとなくなぁなぁな生活になってしまいますよね。
しかし、小学校に入学すると、決まった時間に起床して、決まった時間に学校に歩いて登校して、何時間も授業を受けて、家に帰宅して…
というある程度決まった時間枠の中での生活を強いられます。
お泊り保育では、基本的な生活習慣を身に着けるため、全員で同じ行動を共にします。
そうすることで、朝は朝らしい生活を、夜は夜らしい生活をする習慣を身に着けるきっかけになるのです。
子供の自立心が育つ
先程も紹介しましたが、お泊り保育には子どもの自立心を育てる目的があります。
恐らくほとんどの子どもが、このお泊り保育で初めて夜間に親御さんと離れることとなるでしょう。
もちろん、それまでに祖父母の家にお泊りや、親戚の家にお泊りという経験をしている子もいるかもしれません。
しかし、それはあくまでも「自分のことをよく知ってくれている人」との間のことで、子どもにとっては「楽しい」という感情のみだと思います。
自分で出来ないことがあれば祖父母に頼めばやってくれるでしょうし、比較的自分の持っている意見が通りやすいのも事実です。
お泊り保育では、先生:子どもが1:1ではないので、当然の如く、自分のことは自分で行わなければなりません。
できないことがあっても、ある程度は自分で出来るように努力をしなくてはならないわけです。
この環境こそが、子どもの自立心を育てるのです。
お泊り保育というたった2日間の出来事ですが、一度ひとりで出来たことは、その後もひとりでやってのけるでしょう。
そうやってどんどん自立していくのです。
協調性が身につく
協調性は生きていく上で最も必要なものです。
保育園や幼稚園では、担任の先生を中心に「クラスみんなが仲良く」という感じで時間が流れます。
しかし、小学校に入学すると、担任の先生は保育園や幼稚園ほどにかまってはくれません。
そこで必要になってくるのが、自らもっている協調性です。
この協調性を育てるのも、お泊り保育の目的のひとつ。
普段の保育生活では行わないお風呂や睡眠などを、お友達や先生と行うことで、他者との協調性を養うことに繋がります。
普段の自宅では、子どもたち自身が中心に世界が回っていることでしょう。
しかし、お泊り保育では各自が中心ではありません。
それぞれにお友達と交わり、順番を守り、協調性を育てていく必要性があるため、自然と協調性を身につけることができます。
思い出として残る
ここまで固いことをお話ししてきましたが、お泊り保育の最大の意味は、卒園前の思い出作りです。
初めてお父さんやお母さんの元を離れてお泊りする子が圧倒的に多いので、不安な気持ちになってしまう子も多いでしょう。
しかし、大好きなお友達や先生と一緒に過ごす1泊2日は、すべての子どもにとって素晴らしい思い出になるはずです。
お泊り保育には様々な目的がありますが、最終的にはすべての子どもが笑顔で自宅に帰宅できるよう、配慮していくことが重要です。
「また行きたいね!」「楽しかったね!」と園に帰ってから子どもたちに言ってもらえるよう、厳しくするときは厳しく指導し、楽しい思い出を作って帰ってきましょう。
お泊り保育のスケジュール例
では、お泊り保育ではどのようなことを行うのが一般的なのでしょうか。
外部の宿泊施設に行くことを前提とした参考例をピックアップしてみました!
1日目
時間 | スケジュール |
---|---|
9:00 | 園に集合、バスに乗車 |
11:00 | 目的地に到着 |
12:00 | 昼食(お弁当) |
13:00 | 午後の活動 |
16:00 | 夕食作り |
17:00 | 夕食 |
18:00 | 入浴 |
19:00 | 夜のイベント(キャンプファイヤーなど) |
21:00 | 就寝 |
2日目
時間 | スケジュール |
---|---|
6:00 | 起床 |
6:30 | ラジオ体操 |
7:00 | 朝食 |
8:00 | 周辺散歩 |
9:00 | バスに乗って園へ移動 |
12:00 | 園に到着後解散 |
お泊り保育で絶対に盛り上がるイベント5選
お泊り保育は、日々の生活の中で、お友達や先生との関係性を構築するための勉強会のようなものです。
しかし、楽しみがないと、5歳の子どもたちはやる気にならないですよね
そこで、お泊り保育では、様々なイベントを持ち込む必要があります。
そこでここでは、お泊り保育をたくさんやってきた私が思う、絶対に盛り上げる代表的なイベントを5つピックアップしてみました。
それがこちらです。
- 花火やキャンプファイヤー
- 宝探しゲーム
- スタンプラリー
- 買い物体験
- 調理体験
花火やキャンプファイヤー
お泊り保育といえば、キャンプファイヤーや花火を思い浮かべて方も多いのではないでしょうか?
特にキャンプファイヤーは自宅ではできませんので、お泊り保育でやる意味は大いにあるでしょう。
実際に1日目の夜に行う花火やキャンプファイヤーは最も盛り上がる場面の1つです。
火が大きくて怖いと感じる子もいるかとは思いますが、子どもたちの最高級の笑顔を見られること間違いなしです。
ただ、注意点としては花火やキャンプファイヤーの両方にいえることですが、火を使うので、事前に子どもたちには危険を伴うことを説明し、火は絶対に触ってはいけないことを伝えておく必要性があります。
子どもの数よりも教員の数のほうが圧倒的に少ないです。
しかし、教員ひとりひとりが子どもたちを注視していれば、危険は自ずと防げるものです。
教員全員が、子どもたちから1秒たりとも目を離さない覚悟で、夜の火遊びを行いましょう。
宝探しゲーム
お泊り保育の開催場所が、普段の保育園や幼稚園の場合、宝探しゲームは大いに盛り上がるイベントの1つです。
やり方は簡単で事前に教員が、園内の広域に渡って宝物を隠しておきます。
それを子どもたちに探してもらうというだけです。
ルールもないので子どもたち全員に理解してもらえる遊びですし、何より全員が楽しめるでしょう。
普段は自分のクラスや園庭でしか遊べない子どもも、今日だけは他のクラスにも入ってOK。
そこで、普段とは違う「特別感」を味わうことができるというわけです。
子どもたちが個々に宝物を探すのではなく、いくつかのグループを作って、グループで宝物探しをするようにすれば、協調性も学べて一石二鳥ですよ。
スタンプラリー
子どもは何かを集めるのが好きですよね。
そして、スタンプも大好きです。そんな子どもの「2大大好き」を兼ね揃えた遊びが、スタンプラリーです。
何か一定のルールを設け、それにクリアしたグループがスタンプを押せるという仕組みにします。
スタンプが全部集まったら、教員手作りのメダルや、お菓子などをプレゼントしてあげましょう。
買い物体験
年長クラスですと、まだまだ1人でのお買い物は難しいですよね。
なので、普段のお買い物も保護者の方と一緒に行って、保護者の方が材料を選んで購入することがほとんどです。
お泊り保育では、それすらも子どもにやってもらいましょう。
もちろん教員も同行しますが、材料を選ぶのも、レジでお金を払うのも、買った商品を袋に詰めるのも、それを園まで運ぶのも、全部子どもたちにやってもらいます。
そうすることで、自立心を芽生えさせ、何でも出来るという自信にも繋げることができますよ!
調理体験
普段家では、子供をキッチンに立たせる保護者はあまりいません。
なので、お泊り保育の機会に非日常である「調理を」体験させちゃいましょう。
お泊り時のメニューの定番と言えば、みんな大好きカレーです。
ですが、ありえないくらいに時間がかかりますし、危険も伴うので遠慮する保育園なども少なくありません。
しかし、逆に普段ご飯を作ってくれている保護者の方の大変さが分かる良いチャンスです。
しっかりと先生がサポートしてあげることで、きっと子供喜ぶはずなので、大変ですが頑張って取り入れてみてください!
お泊り保育で注意したい4つのポイント
お泊り保育は、楽しいことばかりではありません。
子どもはもちろん、保護者の方も恐らく気が気ではない1泊2日を過ごすことになるでしょう。
そこで保育士は、子どもと保護者の両方のサポートをする必要性が出てきます。
そんなお泊り保育で注意したいポイントがこちらの4つです。
- 体調管理
- 入浴の補助
- 寝る前の不安を解消してあげる
- 子どものオネショ対策
体調管理
まず、絶対に抑えておきたいポイントが子供の体調管理です。
大人にとってはたかだか1泊2日ですが、初めて親元を離れる子どもにとっての1泊2日は、とてつもなく長い時間です。
普段と違う環境ということで、微熱を出す子もいれば、急に体調不良になってしまう子もいるかもしれません。
そのため、お泊り保育に行く前にはかならず「健康調査」を行うようにしましょう。
お泊り保育の前にはどの園でも、保護者に対して、健康調査用紙を配布することがほとんどです。
そこには、子どもの平熱や排便の頻度、アレルギーの有無などが記載します。
健康調査を行うことで、保育士は子供の体調管理がしやすくなります。
また、喘息持ちの子どもや、持病があって毎日薬を服用している子どもに対しては、必ず薬の服用を確認し、間違いがないように全教員と情報をシェアしておくとなおいいですよ。
入浴の補助
年長クラスの子どもたちは、普段はまだ保護者の方と一緒にお風呂に入っていることも多いです。
しかし、お泊り保育では、頭や体をなども自分で行う必要性があります。
そのため、どうしても自分で出来ないという子どもには、保育士が手伝ってあげる必要がでてきます。
ただ、補助といっても人数が多いとかなり大変なので、入浴は出来れば少人数制にしましょう。
入浴を少人数制にする意味は、他にもあります。それは、大事故を防ぐためです。
相手は、まだまだ本当に危険なことがいまいち認識できていない年長クラスの園児たちです。
お友達と一緒に入るお風呂が楽しいあまりについついふざけてしまって、溺れてしまうというケースもあるでしょう。
子どもと保育士の数が見合っていないと、こういった大事故を未然に防ぐことが出来ない可能性があります。
さらに、万が一事故が起こってしまった場合にも、気付くのが遅れてしまうということがあり得るかもしれません。
なので、入浴は時間に余裕をもったスケジュールを組み、すべての教員がその時お風呂場にいる全園児から目を離さないように気を付けましょう。
寝る前の不安を解消してあげる
お泊り保育で子どもが最も不安になる時間は、就寝時間です。
家ではない場所で、心の拠り所である家族がいない環境ということで、普段園ではあまり泣かないような子まで泣いてしまうかもしれません。
さらに、お友達と一緒に寝るという環境に、ストレスを感じたり緊張を感じてしまう子も多いでしょう。
そのような場合は、「大丈夫だよ」と声掛けをし、子どもを安心させてあげる必要性があります。
子どものオネショ対策
お泊り保育を行うのは年長クラスの夏とはいえ、まだまだ夜にオネショをしている子も多いはずです。
普段、家でオネショをする分には「またやっちゃった…」程度で済むかと思います。
しかし、お泊り保育はお友達と一緒に朝を迎えますので、羞恥心が芽生えて大泣きしてしまうケースもあるでしょう。
そういった場合は、保護者に事前におむつを持ちものに入れてもらったり、着替えを多めに入れてもらうようにしましょう。
万が一オネショをしてしまった場合は、他のお友達の前でお着換えをさせるのではなく、少し離れた場所でお着換えをさせ、子どもの気持ちが収まったらお部屋に戻すように配慮するのがおすすめです。
お泊り保育に行く前の子供や保護者へのケアについて
お泊り保育は、楽しみなイベントの反面、不安なイベントでもあります。
それは子供も保護者も同じで、みなさんそれぞれに不安を抱えて子どもを送り出しますし、子供も不安ながらも出発をします。
では、お泊り保育前に教員ができる、対子供、対保護者へのケアにはどのようなものがあるのでしょうか。
最後に子供や保護者に向けた、お泊り保育に行く前にどのようなケアを行えば良いのかを紹介します。
子供へのケア
「お泊り会をする」と知った子供は、喜び半分不安半分といったところではないでしょうか。
ただ、ふと我に返ったときに、「ぼくひとりで大丈夫かな?」と不安に思う子は実は多いです。
お父さんお母さんと初めて離れて過ごす1泊2日ですから、すべての園児が手放しでお泊り保育を喜べるのは無理です。
ですので、「お父さんとお母さんがいない分、自分で頑張らなくちゃいけないこともあるんだよ」ということを伝えつつ、
「夜にはキャンプファイヤーだったり、お友達と一緒にお布団に入ったり」という楽しさも伝えるようにしましょう。
そうすることで、「お泊り保育に不安はあるけれど、お友達も先生もいるしきっと楽しいものになる」と子どもたちは思ってくれるはずです。
保護者へのケア
お泊り保育に対する保護者の方の不安や心配は、お泊り保育を終え、子どもが笑顔で帰ってくるまで消えることはありません。
恐らくお泊り保育前のお迎え時には、「お泊り保育、うちの子本当に大丈夫ですかね?」なんて質問を、たくさんされることでしょう。
なので、保護者の心配の種(たとえばオネショ問題だったり、好き嫌いだったり)の話をしっかり聞いてあげ、まずは保護者の方の不安を解消してあげるようにしましょう。
まとめ
お泊り保育は保育士の負担がかなり大きいですが、子供たちにとってはとても良い経験や思い出を作ることができるイベントの1つです。
きっと、終わったころにはやってよかった!と思うようになるはずですので、是非この機会にお泊り保育を取り入れてみてはどうでしょうか?