幼稚園教諭より、保育士という言葉の方が世の中には浸透しているかと思います。

どちらも「子どもに携わる仕事」の代表的な存在です。似ている所、同じ所も多いですが、実は違う所も沢山あります。

資格・免許や仕事内容、給料等、それぞれの特徴を比較してご紹介します。

保育士・幼稚園教諭とは

保育士と幼稚園教諭の大きな違いを一言で伝えるのであれば、

  • 保育園の先生が保育士
  • 幼稚園の先生が幼稚園教諭

です。

多くの人が小さい頃にお世話になっただけではなく、自分の子どもが生まれてからは、子育ての強力なサポーターになってくれる存在でもあります。

どちらも子どもと主に関わる仕事の為、働いている場所が違うだけでほぼ同じと思われがちですが、実は全く異なる職種です。その違いの一つである主な勤め先で比較してみます。

保育園と幼稚園を比較

 保育園幼稚園
管轄厚生労働省文部科学省
預かる子どもの年齢0~6歳までの未就学児3~6歳の未就学児
標準保育時間11時間4時間
種類認可保育所(公立・私立)・認定保育所(私立)・無認可保育所公立、私立
先生保育士(国家資格)幼稚園教諭免許<一種、二種、専修>(国家資格)

これを見ると様々な違いがあるのが分かります。同じ国家資格でも資格の種類、働く場所も変わってきます。

また幼稚園教諭は10年ごとに更新が必要です。

平成19年に教員職員免許法が海底されたことによって、教員である幼稚園教諭は10年に1度、約30時間程度の講習を受講する教員免許の更新が必要となりました。

それと比較して、保育士は更新制度がありません。

仕事内容の主な違い・比較

次に仕事内容を比較してみます。

主に子どもと関わるということは共通しているのですが、具体的に見てみると違いがあるので、いくつかご紹介します。

子どもと接する時間

保育園は、標準保育時間が11時間、幼稚園は4時間となっており、単純に子どもと接する時間が異なります。

近年では、幼稚園でも預かり保育を取り入れている所が増えていますが、「幼稚園=子どもと過ごす時間は短い」と一概には言えませんが、幼稚園の方が子どもと接する時間は短い傾向にあります。

保育の目的

子どもとの関わり方や遊びの内容などにそれほど差はないものの、幼稚園が「教育」を主な目的としているのに対し、保育園は「生活」を目的とする違いがあります。

幼稚園は、集団生活という場を活かして社会のルール、皆で作り上げていく喜びや様々な行事を通して学べるよう工夫されています。

比べて保育園では、集団生活には変わりないのですが、過ごす時間が長いことから家庭の時間の延長上として、生活する力(生きる力)を身に着けることを主に過ごしています。

保育体制

保育園、幼稚園共に年齢によってクラスが分かれています。

主に保育園は、0歳、1歳、2歳、幼児クラス(3~6歳)として分かれています。

幼稚園は、3歳、4歳、5歳と学年ごとに分かれており、人数によって同じ学年でも2つ3つにクラスを分けています。

担任の配置は人数によって異なりますが、その子どもの年齢によって担任の人数は法で定められています。

それに応じて変化していますが、保育園は主に年齢が低い子も預かれるので、クラスに3~4人の担任が配置されています。

幼稚園は様々ですが、主に1人担任だったり、担任と副担任の2人で保育を行っています。

給料の違い

一般的に薄給だといわれ、国でも問題視されていますが、両者にはどれだけ違いがあるのでしょうか。

保育園勤務の保育士の給料

 

出典:厚生労働省

保育士の給料は厚生労働省の資料によると、平均年収が約314万円。

女性と男性でわけてみると

  • 男性→約351万円
  • 女性→約314万円

となっています。

ちなみに全職種の平均年収は約411万円なので、一般的な年収と比較すると100万円近くも低いです。

これでは、保育士として続ける人も少なくなりますよね。

それに地域によってもかなり給料の差があり、

 

出典:厚生労働省

1番給料が高いのが和歌山県の約382万円なのに対して、佐賀県では約220万円と約160万円もの差がでています。

なので、地域によってはどんどん保育士の数が少なくなり、待機児童問題が起き問題になっているわけです。

自業自得だと思いますけどね。

ただし、徐々に自治体や政府でも待機児童問題の解消に欠かせない存在である保育士を確保するため、2017年度から少し昇給させる方針を打ち出しています。

保育士確保へ 厚生労働省がパンフレットで呼びかけ

遅すぎるくらいの対策だと思いますけどね。

公立はまた別

保育士の給料は、勤め先が公立か私立かによって異なり、公立の方が身分も公務員として安定していて、給料も私立より高いケースがみられます。

平均的には25万前後といわれていて、公立保育園の保育士募集に応募が殺到し、倍率が上がることもよく耳にします。

私立の場合は、公立に比較すると低いと感じますが、初任給で18万前後が平均的です。

また保育園の場合は、その市や協会によって給料が定められていることが多いです。

幼稚園教諭の給料

幼稚園教諭の給料は、平均年収が340万円と保育士より少しだけ高めになっています。

保育士と同様に、私立と公立で差がありますが、幼稚園によって給料が異なるので公立の方が良いとは言い切れません。

私立幼稚園でも、地域や規模によって昇給していけば25万円程もらえる園もあり、幅広いと考えられています。

保育士・幼稚園の教諭、2つの取得も考える

それぞれの違いを比較したところで片方の資格はあるけど片方の資格がないという人もいると思います。

そんな方のために、選択肢を広げるためにも2つの資格を取得した方がいい理由と、その為のお得な制度を紹介します。

認定こども園で働ける

認定こども園という、保育園と幼稚園の機能を併せもつ施設を「認定こども園」と呼びます。

保育園の待機児童問題を解消する目的で始まった施設ですが、その数は伸び悩んでいるのが現状で、期待されていた役目をあまり果たせていないことが問題視されています。

その原因の一つに保育教諭の不足があるのです。

また認定こども園で働くには、保育士・幼稚園教諭の資格、免許の両方を持っている「保育教諭」であることが条件ですが、そうした職員の数が揃わずにいるようです。

その為、認定こども園の拡大を進めるために、保育士と幼稚園教諭、それぞれ片方の資格のみを持っている方が、もう片方の資格を取りやすくなるための「特例制度」があるので、そちらを利用する方が増えてきています。

特例制度を受けることができる

保育士資格取得特例制度として、幼稚園教諭の免許を持っていて、保育士資格がない人を対象としています。

またこの制度は、平成27年度から平成31年度末までの間に設けられている保育士資格取得をサポートする制度です。

この制度を利用することで、保育士養成施設で最大8単位を学んで取得することで、取得した単位・数に応じて保育士試験の科目が免除されます。

8単位全てを取得していれば、全科目が免除となるこの特例を受けられる対象者は、「幼稚園教諭の免許をもち、幼稚園などの指定施設において3年以上かつ4320時間以上の実務経験がある人」のことを指します。

条件をクリアしていれば、単位を取得しにいく時間がなくても、免除される科目もあります。

反対に保育士資格があるものの、幼稚園教諭の資格がない方にも特例があります。

この制度を利用できる対象者は、「保育士資格を有し、3年以上かつ4320時間以上の保育所などでの実務経験がある人」のことを指します。

期間は同様に平成27年度から平成31年度末となっています。

幼稚園教諭二種免許状であれば、大学において指定の8単位を取得することで免許状を授与されます。

一種免許状を希望する場合は、学士の学位を有していなければならないため、指定の8単位に加えて大学を卒業し、学士を取らなければなりません。

ただしすでに大学を卒業していて、学士の学位も持っていれば、指定の8単位を取得することで一種免許状を授与されます。

なので、これから免許、資格を取得する方には保育士と幼稚園教諭の2つを取得することをお勧めします。

今後は、「認定こども園」が増えていくことが予想される為、2つ持っていると職選びの幅が広がります。

更に一度退職したとしても、その職場の体制が変わったとしても2つ取得していれば復帰しやすいです。

まとめ

保育士と幼稚園教諭、それぞれの違いがありますが、基本的な子どもの成長を感じながら、色々な目線から保育計画をしていくことには変わりありません。

どちらがいいかわからない人は、とりあえずどちらも働いてみるというのも1つの手段です。

昔は、1度就職したら辞めない方がいいと言われてきましたが、今はそんな時代ではありません。

特に保育士や幼稚園教諭の場合は、転職先に困るということはほとんどないでしょう。それくらい人が足りてませんからね。

保育士か幼稚園教諭かで悩んでいる人は、少し参考にしてみてください。