共働きなどの理由で家庭での保育が難しい子どもを預かり、集団で保育をする保育園。子どもにとって安心できる居場所であり、働く保護者の強い味方です。保育士が働く場所としても1番多いのが保育園ですね。

保育園には大きく分けて2つの種類があります。

国が定めた設置基準を満たし認可された認可保育園と設置基準に満たないために認可がされていない認可外保育園(無認可保育園)です。

一般的に保育園というと、認可保育園を思い浮かべる人も多いかもしれません。

では、認可保育園の特徴は具体的にどんなものなのか?働く保育士の目線からメリットやデメリット、転職を考えた時に大切にしたいポイントについてご説明します。

認可保育園とは?

児童福祉法に基づいて国が定めた設置基準を満たし、都道府県知事から認可を受けた保育園です。認可を受けることによて国や地方自治体からの補助金が保育園に支給されます。

設置基準は、子ども1人に対する保育士の人数や設備の面積、園庭の有無などが細かく定められています。この設置基準を満たしていない保育園は都道府県からの認可が受けられず、認可外保育園として運営を行います。

設置基準については…

と定められています。

参照:厚生労働省「保育所の設置運営基準」

この基準は従うべき基準ですので、これを上回る基準を地方自治体が独自に定めることが可能です。

例えば、1歳児は子ども6人に対して保育士1人という基準ですが、都道府県によっては子ども5人に対して保育士1人と定めている場合も多く見られます。

その自治体から認可を受けている保育園は、国の基準ではなくより厳しい自治体の基準を満たさなければなりません。

子どもと働く保育士にとってはゆとりある保育が可能となるので良い環境であると言えるでしょう。

認可保育園に通うためには、認可外保育園とは違い共働きや保護者の病気など「保育に欠ける」状態でなければいけません

認可保育園の利用を希望する時には、各自治体に利用申し込みを行います。

保育料は各家庭の世帯収入によって決まり、認可外保育園に比べると安価で利用できることがほとんどです。

共働き家庭が増え保育園の利用を希望する人が増えている現在では、利用申し込みを行っても認可保育園に入れない、待機児童が深刻な問題となっています。

そのためより多くの認可保育園の設置と、働く保育士が求められています。

私立の認可保育園の特徴

認可保育園には大きく分けて2つの種類があります。

1つは地方自治体が運営をしている公立の認可保育園

そしてもう1つが、社会福祉法人や株式会社、NPO法人などの民間が運営している私立の認可保育園です。

まずは私立の認可保育園の特徴について見ていきましょう。

私立の認可保育園は、運営を行う団体によって様々な特徴があります。

例えば、お寺で運営をしている保育園では仏教色が強く毎日の座禅があったり、キリスト教の保育園では食事の前にはお祈りが日課の保育園もあります。

また、外国人講師を招いた英語教育の時間やサッカー教室など保育時間内に習い事を取り入れるなどの園独自の特色を打ち出している保育園も多いです。

株式会社が運営している保育園では特に、保護者のニーズに答えた保育を提供している場合も多く、夜間保育や夕食の提供、通園バスがあるところもあります。

多くの認可保育園が求められている中で私立の認可保育園が増えているため、新しい施設が多いことも特徴です。

ただ、園庭を設置する面積が確保できず、近隣の公園を園庭の代わりとすることで園庭のない私立の認可保育園も増えているという現状もあります

公立の認可保育園の特徴

公立の認可保育園は自治体が運営しているため、保育方針や保育時間が基本的に統一されています

昔から地域に根付いている施設が多く、建物は古いことが多いですが園庭が広く子どもがのびのびと遊べる環境が整っています。

私立の認可保育園で働くためには?

私立の認可保育園は民間の団体が運営しているため、求人を出している保育園へ直接応募をして、採用がされれば働くことができます

多くの私立保育園がありますので、まずはどの保育園で働きたいかということを選ぶことから、勤務先探しが始まります。

採用試験は園によって様々ですが、面接・筆記試験・実技(ピアノや保育実習)などが一般的です。

私立の認可保育園で働くメリット

私立の認可保育園で働く1番のメリットとしては、様々な特徴の保育園から自分の価値観にあった勤務先を選べることです

自分が理想とする保育園で働くことは大きなやりがいにつながります。また、基本的には転職や異動がないので、1つの保育園で長く勤めることも可能です。

給与面では公立保育園に比べると安定はしていませんが、中には公立保育園よりも高い給与を設定している保育園もあります

自宅から近い場所で勤務先を選ぶこともできますので、園の特色と給与面、勤務場所などを考慮して、自分の希望する条件の保育園を選べるメリットがあります。

私立の認可保育園で働くデメリット

デメリットとしては、園の特色が強すぎて働き始めてから自分の価値観に合わないと感じる場合があることです

見学をしていたとしても、全ての特色が分かる訳ではありません。

働き始めてから「こんなはずではなかった」と感じる人も少なくはありません。

また公立保育園と比べて、勤続年数に伴った給与の増加が見込めないことも現状です。

仕事量が多く、残業や持ち帰り仕事をせざるを得ない状況にも関わらず、給与は増えない…という現状から退職する保育士が多く、保育士の入れ替わりが激しい保育園も中にはあります。

見学の際に、園の特色や保育内容と同時に、保育士の年齢層や表情も気に留めておくと良いでしょう。

若い保育士が多く皆疲れている様子が見られるという場合には、デメリットの部分が強く保育士の入れ替わりが激しい勤務先である可能性もあります。

公立の認可保育園で働くためには?

公立の認可保育園で働くためには、各自治体の公務員試験(保育士採用試験)を受けて地方公務員の資格を得る必要があります

保育士採用試験に合格すると、採用候補者名簿に登録されます。名簿に登録され、公立保育園から採用の申し出があって初めて、公立の認可保育園で働くことができます。

試験の内容としては、一次試験で一般教養・専門試験・作文などの筆記試験を行い、二次試験で面接・実技試験・適性検査・身体検査などを行います。

各自治体によって試験内容は違いますが、一般教養と専門試験、面接はどの自治体でも試験内容に含まれています。自治体によっては、三次試験として最終面接がある場合もあります。

公立の認可保育園で働くメリット

公立の認可保育園で働く1番のメリットは安定した勤務が可能なことです。

公務員ですので、勤続年数に伴って給与が上がっていきますし、産休・育休制度もしっかりと利用できます。

そのため、公立認可保育園の保育士として働き始めた保育士は出産後も働きやすく、長く勤めているベテラン保育士が多いという現状もあります。

また、自治体内の公立認可保育園で保育方針が統一されているため、園の特色と自分の価値観が合わずに働きづらいということがありません。

最近では、保護者からの希望により延長保育を実施している施設もありますが、基本的には保育時間も一定なので、働きやすいという面もあります

公立の認可保育園で働くデメリット

デメリットとしては、

  • 自治体によっては保育士採用試験を実施しない年もある
  • 試験に合格してもすぐに採用されない可能性もあり、非常に狭き門である

ことです。

地方自治体が民間に運営を委託する、公立認可保育園の民営化が進んでいることも受けて、公立認可保育園で働く保育士の採用は更に減ってきています。

また、公立保育園で働く保育士は数年に1度自治体内での異動があります。保育内容は統一されていますが、勤務先が変わりますので人間関係を1から築く必要があります。

公立の認可保育園に転職はできる?

公立の認可保育園への転職を希望する際には、地方自治体の保育士採用試験を受験し、合格する必要があります。

また年齢の制限があり、ほとんどの自治体では30歳までしか試験を受けることができません。

保育士採用試験を実施しない年もあることから、公立の認可保育園で働きたいと考えた時には早めに動き出すことをおすすめします。

公立の認可保育園で働くための保育士採用試験も簡単ではありません。特に、保育士として勤務をする中では身に付かない一般教養は、時間を見つけてしっかりと対策をする必要があります

転職を考える時には現在働いている職場での仕事もありますので、早めに対策を始め、受験を希望する自治体の試験情報も把握しておきましょう。

私立の認可保育園へ転職する時のポイント

私立の認可保育園へ転職する時には、まずは転職先を探すことから始めましょう。転職サイトやハローワークのインターネットサービスを使えば、少しの時間でも転職活動が可能です。

おすすめ転職サイトランキング

勤務条件や園の特色など、求人票から分かる情報の中で気になる勤務先を見つけたら、いくつでもピックアップをしておきます。応募期限も確認しておきましょう。

求人情報や転職希望先の見学からは、様々な情報を得ることができます。どの様な面を重点的に見れば良いのか、そのポイントをご紹介します。

5勤務条件は各保育園によって様々

私立の認可保育園の場合は、勤務条件や園の特色が各保育園によって大きく違います。

まずは、自分が求める勤務地や給与、福利厚生などを確認して転職先をしぼります。

現在働いている職場の状況も考慮すると良いでしょう。

例えば、残業が多くて転職を考えている場合には、「残業なし」を特徴に挙げている勤務先を、給与の安さから転職を考えている場合には、今の職場よりも給与面で充実している勤務先がおすすめです。

ただ、給与面のみを見て転職を決めてしまうと、仕事量が多く結局収入と見合っていないという場合もあります

求人条件だけを見るのではなく、必ず見学をしてから転職先を選ぶようにしてくださいね。

必ず見学をしてから転職を決める

転職を決める前の見学は必須です。

求人情報からは分からない園の雰囲気や特色、保育士の様子が実際に見て分かります。

どんなに高い給与を設定していたとしても、見学に行った時に保育士に笑顔がなく見学者に挨拶もしてくれないという場合には、仕事量が多く保育士が疲れ切っている可能性があります。

もしくは、新人を受け入れる体制ができていないので、人間関係で苦労することも予想されます。

保育士が子ども達に厳しく、自分の保育とは合わないと感じることもあるでしょうし、反対に自由過ぎて自分には勤められないと感じることもあるでしょう。

見学時にはできれば園長を話ができると良いですね。園長と話をすることで、ある程度の園の特徴がわかります。

勤め始めた時に自分らしく楽しく働くことができるか、保育園の特色と自分の価値観が合うかということを考えながら見学をすることがポイントです。

数多くある私立の認可保育園から1番働きたいと思える勤務先を見つけられるように、沢山の園を見学してみてください。

まとめ

現在も認可保育園では多くの保育士が求められています。公立の認可保育園でも私立の認可保育園でも、子どもが安心できる居場所を作り、成長を見守るという面では同じです。

しかし、自分がどの様な環境で働きたいか、保育士としてどの様に活躍していきたいかということを考える上では、それぞれの保育園のメリットやデメリットを知っておくことも大切です。

デメリットも把握した上で、自分が働きたいと思える保育園を見つけ、子ども達と一緒に充実した保育士ライフを目指してみて下さいね。