そもそも教育と福祉に関わる大事な役どころの保育士、対象は一時も目を離せない園児たちです。

体力勝負な面があり、真面目な人ほど、無理しすぎて体調を壊してしまうところがあります。

園児が帰った後も、記録、報告などの事務作業があり、残業時間が多くなって、さらに休日出勤で疲れがたまり、慢性疲労が積み重なってダウン。

人手不足な傾向にある保育士の職場では、ありうる話です。

保育士が仕事を止める理由は、結婚、ご主人の転勤または、妊娠・出産などでなければ、からだを壊したり、体調がすぐれなかったりという理由がほとんどでしょう。 

今回は、その間にある見えざる理由を紹介していきます。

低報酬と福利厚生の欠如

待遇の不満から辞めるケースがあると聞きます。

実際には、お給料が少なくて続けられないとは、職場に口に出していう保育士はいないと思います。

最近の保育士不足から、資格手当などの上乗せや賃金アップの動きはあります。

けれども、待遇が悪いことが理由で、資格を持ちながら、職につかない保育士も多いと聞きます。

仕事の面での困りごと

仕事の面での困りごと(回答者349人:複数回答)では、もっとも多いのが「賃金が安い」51.6%です。

実際の平均賃金(控除前)は、正規職員で「20〜22万円未満」23.9%の山がもっとも高く、次いで「22〜25万円未満」18.7%です。

常勤臨時職員になると「15〜18万円未満」が55.8%を占めています。

税金や社会保険料等を差し引いた手取りにすると(約2割減)、正規職員でも7割以上が20万円以下の収入となります。

また、

「家に仕事を持ち帰らなければならない」46.4%

「有給や振休がとりにくい」43.6%

「子どもから離れて休憩する時間がとれない」40.7%

「トイレに行くタイミングを逃す」39.8%

「昼食をゆっくりとることができない」35.0%

など、長時間・過密労働の問題もあげています。

実際の平均労働時間は、正規の場合、9時間台が28.0%、10時間以上も21.4%を占めています。

さらに1週間のうちの最長労働時間を見ますと約7割(69.5%)が10時間以上となっています。

常勤臨時でも平均労働時間9時間以上が35.2%を占め、最長では10時間以上が37.8%にのぼっています

熊本保育研究会による、「保育士の健康とくらしに関する実態調査」報告書(2010年3月)より引用しています。

職場環境のせいで体調を崩す

「もうこれ以上、体力的に無理!」と限界に達してしまい、責任感が強い保育士の場合、実際に体を壊して休職し、そのまま入院となり退職してしまうケースもあります。
体調を崩して退職するケースです。

通常の業務でそうなることは、管理者・責任者の監督不行届きですが、運動会や遠足といった行事続きで、残業と休日出勤の連続なんてことは珍しい話ではありません。

保護者と関わっていくうちに、責任が重くのしかかり悩むこともあります。

1人で抱え込まず周囲の園長や園内のスタッフに、相談するようにしていく習慣をつけましょう。

ごくわずかなストレスが日々の積み重ねで大きくなり、身体に悪い影響がでてきます。

溜め込まないようにこまめに意識して発散することです

先の報告書からの引用の続きです。

このような余裕のない毎日の業務の中で、

「年々、保育の仕事が難しくなってきた」36.7%

「保育所を利用する親・保護者とのコミュニケーションが難しくなってきた」36.1%

「子どもへの対応が難しい」20.3%

など、ゆったりと子どもや保護者の思いに寄り添った保育活動を行うことが困難になっており、その悩みが加重なストレスにもつながっているのではないかと考えられます。  

これらの問題は、一保育園の努力だけでは解決できないことであり、今日の保育制度の矛盾の現われでもあります。

先にもふれたように、賃金や労働時間に加えて

「正規常勤職員の配置が少ない」36.4%

「身分が不安定」27.2%

「保育士1人に対する子どもの人数が多い」30.7%

などの課題は、もともと児童福祉施設最低基準の水準が改善されず、さらに規制緩和されていることや、保育所運営費補助(国庫負担)等の削減などの問題と結びついていると考えられます。

また、新卒で保育園に入社して、早速、辞めたいと思っている人。

きっと思い描いていた保育士の仕事の理想と現実、現場とのギャップに悩んでいるのでしょう。

新卒や若い保育士にとって、特に初めての社会人生活だったりすると、無意識のうちに緊張やストレスで、体に負担がかかる場合があります。

新人は、覚える仕事がたくさんありミスをすれば注意され、発散できずにそうした状況が続くと心身が参ってしまいます。

信頼できる相談相手がいれば良いのですが、上手く対処できない場合は、心と体が壊れてしまいます。

その前に辞めた方がよい場合もあります。

まだ若いので、やり直しはいくらでも出来ます。

保育園を辞めたからといって免許を取り上げられることはないのです。

怖いのは、気持ちが定まってない精神状態のまま保育士の仕事を続けていき、いのちを預かっている立場を忘れて、不注意から取り返しのつかない事故などを起こしてしまうことです。

もし保育士をこのまま続けようと考えるのなら、その責任を果たしましょう。

責任をとれる自信がないと思うのなら、新卒関係なく潔く退職すべきでしょう。

職場の人間関係に耐えられない

その他、職場の人間関係に耐えられず退職に追い込まれるケースもあります。

そのようなケースでの退職の場合、職場の無理解がそもそもの原因だったりするので、退職を申し出ると、露骨に嫌な反応をされたり、いやがらせをうけることもあります。

受理されても、もともと予定していた退職日まで精神力がもたず、早期退職に追い込まれるなんてこともあるでしょう。

辞めたい理由が人間関係や園の環境の問題なら、違う保育園に転職することで解決できる場合もあります。

せっかくとった資格ですから、ひとつの園で仕事自体を辞めることを決断するのは、もったいないことです。

同じ職業でも、転職することで、まったく違う環境で仕事ができるようになるかもしれません。

保育園には、それぞれの方針があり、また、保育園の規模によっては、子どもや保育士の人数も違います。

保育士を辞めたい理由に、職場での関係だけではなく、保護者との関係で悩みを抱え、退職される方もいます。

しつけを園任せにする親や、攻撃的に攻めてくる保護者など、十人十色の保護者の要望を全て聞き入れることは、保育士にとって大きな負担となり、ストレスの原因にもなるものです。

まとめ

円満退社をしたいのだけれど、どうしたらよいですかと相談を持ちかけられて、思わず

「ことぶき退社」と答えてしまったことがあります。

結婚、ご主人の転勤または、妊娠・出産などの家庭の事情でなければ、園からの引きとめに合う可能性は十分にあり、辞めにくいといった状況はあると思います。

保育士の退職は、3月末が一番望ましいと思われています。

色々な諸事情により、年度の途中でも辞めたいと考えたときに、あなたは退職をあきらめますか?

保育士の仕事をすぐにでも辞めたいと思われていている人は、それが年度途中なら、なおさら悩むところだと思います。

けれども、自分が本当にやりたいことは何なのか、自分にとっての幸せの定義が何なのかを自分に問いただしてみることです。

その結論が、保育士を続けていくことでないなら、しっかり辞める決断をするべきです。

無理をしながら仕事を続けることで、体調を崩しても園長や他の保育士さんは、責任を取ってくれないばかりか、自分の立場を一層悪くするばかりです。

職場の保育園児たちのためにも、まずは、あなたが自分自身のことを大切にし、あなたが本当にやりたいことを見つめ直してみましょう。