子ども達と働く保護者の強い味方である保育園。共働き家庭が増えている中では保育園不足が深刻な問題となっています。

保育士として保育園に勤め、子ども達の成長を手助けすることは保育園を求めている子どもと保護者をサポートする1つの方法です。

そしてもう1つ、保育園不足に悩む親子の大きな力となる方法が保育園を開業するという選択です。

自分の理想とする保育園を作りたい、保育士としての経験はないけれど保育園の経営に興味があるという方にとって魅力を感じる保育園の開業。

必要な資格や開業できる保育園の種類など、保育園開業に関する基礎知識を紹介します。

保育園の開業に資格は必要?

保育園を開業するために必要な資格は、実は特にありません。保育士資格も保育の実務経験も必要ありません。

しかし保育園を開業するためには、保育の知識が必要な場面も多いですし、運営するにあたって子どもの人数に対する保育士人数が決められています。

そのため開業を考えた時には、子どもの利用人数に適した保育士を雇い入れる必要があります

保育の知識がないという場合には、自分は理事長として経営に専念し、保育経験のある園長を雇うことで保育面の管理は任せるとこともできます。

保育園の園長にも特に保育士資格の保有は求められませんので、自分が園長として保育園の運営を行い、副園長や主任のポジションに保育士資格を持ち保育経験が豊富な職員を置くという方法もあります。

保育士資格を持っていなくても、保育経験があり信用できる人をパートナーとして雇い入れることで、保育園の開業は十分に可能です。

施設の設備作りから保育士の目線は必要ですので、開業準備の段階から一緒に考え保育園作りをしてくれる保育士がいるとより安心です

開業できる保育園の種類と条件

保育園と一言で言ってもいくつかの種類があります。開業が可能な保育園の種類と条件について見ていきましょう。

認可保育所

認可保育所とは、児童福祉法に基づく児童福祉施設で、国が定めた設置基準をクリアして都道府県知事に認可された施設です。認可を受けることによって国や地方自治体から補助を受けることができます。

具体的な設置基準としては…

と定められています。

参考:厚生労働省 保育所の設備運営基準

国の基準は従うべき基準ですので、この基準を上回る基準を地方自治体が独自に定めることが可能です。

そのため、開業を考えた自治体の基準が国の基準を上回っている場合にはより厳しい基準をクリアする必要があります

利用できる子どもは保育に欠ける子ども(共働きなどで保護者が自宅で保育をすることが難しい子ども)に限られ、保育料は世帯収入に応じて決定されます。

補助を受けることで安定した運営が望めますが、設置基準をクリアすることが難しくなかなか認可を受けられないという実態もあります。

小規模認可保育園

小規模認可保育園とは保育園不足解消などの目的から、2015年に新しく始まった保育事業です。

従来までは子どもの利用人数が20人以上でないと認可を受けることができませんでしたが、小規模認可保育園の認可基準は子どもの利用人数が6名から19名、0,1,2歳児のみの利用と定められています。

そのため、今までは認可外保育所としてのみの経営であった19名以下の保育所も設置基準を満たすことで認可を受けられるようになりました。

小規模認可保育園は大きく分けて3つに分類されます。

具体的な設置基準としては…

と定められています。

参考:厚生労働省 地域型保育事業の認可基準について

国が定める基準を踏まえて、各市町村が認可基準を定めます。この基準を満たすことによって国や自治体より補助を受けることができます。

子どもの利用人数が少ないことで、認可保育所よりも狭い敷地での運営が可能なことから、主に都心部で数を増やしている保育形態です。

認可基準をクリアする必要はありますが、敷地面積の面などから普通の認可保育園よりは認可が受けやすいことも特徴です。

認可外保育所

認可外保育所とは、国の設置基準を満たさずに認可を受けていない施設です。しかし全く基準がないわけではありません。

厚生労働省が定めている「認可外保育施設指導監督基準」によって、保育従事者(保育に携わる人)の3分の1が保育士資格を有していること。

子どもの年齢と人数に対する保育従事者の人数、保育室の面積などが定められています。

ただ、どの基準についても「概ね」とされており、認可保育所の認可基準と比べるとかなり緩い基準となっています

そのため、認可外保育所の中には保護者のニーズに合わせた夜間保育の実施や独自の特色を活かした保育を提供するために、あえて認可を受けずに認可外保育所として運営している場合もあります。

認可外保育所として運営をする場合には、国や地方自治体からの補助が受けられませんので利用者からの保育料で運営を行います。

独自の特色を打ちだしている場合には、円滑な運営が可能な場合もありますが、認可保育所に比べると資金面の不安が残ることは事実です

まずは認可外保育所を開業して運営をする中で認可基準を満たし、認可外保育所から認可保育所や小規模認可保育園に移行するという方法もあります。

認可外保育所を開業する場合には、開業から1ヶ月以内に都道府県知事に届け出をする必要があります。

保育ママという選択

保育ママという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

家庭的保育事業とも呼ばれ、0歳から3歳の子どもを対象に、家庭的な環境の中で保育を行う事業です。保育園不足解消などの目的から、小規模認可保育園と共に数を増やしています。

保育ママ(家庭的保育者)になるためには、市区町村が定めた要件を満たして認定を受ける必要があります。

要件としては、保育士資格の保有や保育士と同等以上の知識や経験を持っていることなどが挙げられ、各市区町村によって違います。

保育ママは3人までの子どもを1人で保育することが認められており、自分の他に補助者を置く場合には5人までの保育が可能です。

保育場所は自宅でも可能ですし、マンションの1室などを借りて保育室にすることもできます。

自宅での開業が可能なこと、少人数の子どもを預かるため経営の知識がなくても比較的開業しやすいことなどから、保育園の開業は難しいけれど保育ママならば挑戦したいという人も増えてきています。

ただ、経営に専念するということは難しく自分で保育をする必要がありますので、保育士経験がある、子育て経験から保育の知識を豊富に持っているなど、自分で保育を行い子どもの命を守る自信がある場合のみの選択となります。

自治体によっては補助金が支給される場合もありますので、要チェックです。

開業するために必要な資金

保育園を開業するためには開業資金が必要となり、保育園の規模や立地にも大きく左右されます。

必要な資金としては、保育施設を借りるための

  • 初期費用
  • 賃貸料
  • 内装工事費用
  • 備品や保育用品の購入費
  • 人件費

などです。

小規模認可保育園や少人数保育を対象とした認可外保育所であれば、そこまで広い敷地面積も必要ありませんので、ビルの1階を借りて開業することも可能です。

ただ、子ども用のトイレやロッカーの設置など内装工事は必ず行う必要があります。

また小規模認可保育園で園庭を作らない場合には、近隣に園庭の代替となる公園が必要ですので、必ず物件だけではなく周囲の環境も実際に自分の目で見て確認することが大切です

内装工事や備品、保育用品の選定は子どもの安全性を1番に考えて購入する必要があります。

運営が始まってから必要となるものも多いので、その都度購入できる資金繰りを考えておきましょう。

子どもの人数が20人ほどの保育園を開業するために必要な費用は、最低でも500万円ほどプラス人件費と考えておくと良いでしょう。

保育園開業のメリット・デメリット

保育園を開業するメリットは、

  • 他の事業に比べて初期投資が少ない
  • 在庫などを抱えることがないのでリスクが少ない
  • 入園したほとんどの子どもは卒園まで在園するので、安定した経営が望める
  • 理想とする保育園を作る中で社会貢献ができる

ということが挙げられます。

認可保育園であれば、補助金が大きな資金源となります。

認可外保育園であっても子どもが楽しく過ごし保護者が安心して預けられる環境を作れば良い評判が広がり園児は増えていきます

また収入面だけではなく、子どもの成長を間近で感じながら保護者にも感謝をされることは大きなやりがいにつながりますよ。

自分の理想とする保育園を作りながら社会貢献をしたいという人にとっては、大きなメリットとなります。

デメリットとしては…

  • 認可外保育園の場合には園児が集まるまでに時間がかかる
  • 保育園内で事故などが起きた時に、行政処分の対象となる場合がある。
  • 一度信用をなくすと、取り戻すことが難しい

ということが挙げられます。

保育園不足が騒がれているとは言っても、認可外保育園の場合には初めは園児が集まらないという状況も多くあります

保護者のニーズに答えた保育や独自の特色を打ち出しながら少しずつ園児を増やし、丁寧な保育の中で信頼を得ることで安定した運営に繋がります。

また、保育園は子どもの命を預かる施設です。その中で事故が起きた場合には管理責任を問われ行政処分の対象となる危険性もあります。

経営者として責任を負う可能性がある立場であるということは頭に入れておく必要があるのです。

保育園を開業する時に大切なこと

保育園の開業を考えた時に1番大切なことは、保育です。

自分がどんな保育を理想として保育園を作るのかというビジョンを立ててみましょう。

保育士経験が豊富にあり、保育園を経営しながら1から保育士を育てたいという場合には保育経験の浅い保育士を雇うことも可能です。

しかし保育士経験がなく知識もないという場合には、まずは信頼できるベテラン保育士を探すことが先決です。

保育士と共に理想とする保育園のビジョンを立てる中で、保育園の規模や経営方針を決定し、開業への一歩を踏み出します。

そして忘れてはいけないことは、保育園は福祉事業であるということです。

利益を得ることも大切ですが、それ以上に子どもが楽しく保育園に通い、保育園を必要としている保護者をサポートできるような体制作りが必要です。

また保育士が働きやすい環境を整え、長く勤務ができるようにすることも、良い保育に繋がり保育園の評判の向上へと繋がります。

子どもと保護者、そして働く保育士にとってより良い環境作りをすることが長い目で見た時に安定した経営を可能にすると言えるでしょう。

まとめ

保育園を開業するという選択は、保育園不足が問題となっている現代において、利益を得るだけではない大きな意味を持ちます。

認可保育所、小規模認可保育園、認可外保育所、保育ママというそれぞれの保育形態の中から特色を見定め、自分が理想とする保育形態を選ぶことは保育園開業の第一歩です。

子ども達の幸せのために、そして働く保護者をサポートするためにも保育園を開業するという働き方も1つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか?