子どもの育ちに不可欠な食事。保育園では手作りの昼食やおやつ、中には夕食も提供しながら子どもの成長を手助けしています。
そんな子どもの「食べる」に携わる仕事が保育園の栄養士や調理師です。
この記事ではそんな保育士からはなかなか見えない保育園で働く栄養士の仕事。その仕事内容や役割、給与についても見ていきましょう。
保育園で働く栄養士に必要な資格
保育園で提供する食事は外部業者への委託や外部搬入も認められてはいますが、ほとんどの保育園で保育園の職員である栄養士や調理師が調理をしています。
平成24年の調べでは、約90パーセントの保育園が園内の調理室で保育園の職員が調理を行っていました(自園調理)。
保育園で調理に携わるためには、調理師の資格でも勤務が可能です。
しかし、保育園で栄養士として働くためには、「栄養士」の資格か「管理栄養士」の資格が必要です。
管理栄養士は栄養士よりも更に高度な知識が求められます。栄養士は栄養士養成学校の卒業と同時に資格が取得できますが、管理栄養士は養成学校の卒業の後に、国家試験に合格する必要があります。
私立保育園で栄養士として勤務をする上では、「栄養士」の資格を持っていれば働くことが可能です。
公立保育園の栄養士として働きたいという場合には、基本的には管理栄養士のみの募集となります。
管理栄養士の資格を取得した後に公務員試験に合格し、採用されれば公務員の栄養士として働くことが可能です。
しかし、公務員の栄養士として勤務した場合には、保健所や病院、学校など様々な場所に配属されますので、公立保育園に配属されるとは限らないということは頭に入れておきましょう。
保育園で働く栄養士の仕事内容
保育園で働く栄養士の仕事内容は栄養管理、食事作りだけではなく多岐に渡ります。
詳しく見ていきましょう。
献立作り
まずは栄養バランスを考えた献立作りを毎月行います。
アレルギー児がいる場合には、アレルギーに対応した献立を普通食の子どもの献立とは別に作成。
基本的には、普通食からアレルギーの原材料を抜いた献立が一般的です。
アレルギー対応も栄養士の仕事ですので、保護者と直接話をして医師の診断書の提供を求めることもあります。
アレルギーを持つ子どもが増えている現在、各クラスに1人以上はアレルギー対応が必要な子どもがいることが多いため、アレルギーの対応は慎重に行います。
0歳児が在籍している保育園では、離乳食の献立作りも栄養士の仕事です。
子どもの月齢や発達に合わせて、保護者や保育士と連携をとりながら初期食・中期食・後期食と離乳食の形態を進めて行きます。
離乳食が完了した後にも、幼児食と同じ大きさでは食べることが難しいと判断した時には、幼児食を刻んで提供をすることもあります。
時には子どもが食事を食べている様子を見ながら、子どもに合った献立を作ります。
調理
栄養士と調理師が在籍している保育園では、栄養士が主に献立作りを含めた栄養管理を行い、調理師が調理を行うということもあります。
ただ、子ども達の食事を時間通りに人数分作ることが求められるため、ほとんどの保育園では栄養士も調理を行うのが普通です。
その日の献立に合わせて、離乳食、昼食、おやつ、夕食と時間通りに食事が提供できるように調理を行います。
調理が終わると、離乳食の形態やアレルギー児の食事の提供の確認を必ず保育士と共に行いながら、食事を提供します。
食べることへの興味を広げる「食育」
「食育」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
食べることの楽しさを伝えたり食への興味を広げるような関りをすることで、健全な食生活を実践できる人を育てる取り組みです。
保育園で多くの時間を過ごす子ども達にとっては、保育園が食育の場でもあります。そして保育園での食育の中心となるのが栄養士です。
保育士と連携をとりながら、子どもが食べることに興味を持てるような取り組みを行います。
例えば実際に野菜に触れたり自分で洗ってみることで、苦手な野菜にも挑戦できるきっかけ作りをしたり、自分で作る楽しみを感じられるように、クッキングの時間を設けることもあります。
普段の保育の中では栄養士との関わりが少ない子ども達にとっては、いつも食事を作ってくれている栄養士と関わりをもつということにも大きな意味があります。
作ってくれている栄養士に親近感を持つことで、食事を大切に食べようという意識が芽生えるからです。
保育園で働く栄養士の役割とやりが
保育園で食べている食事は子ども達の身体だけではなく心も豊かにします。
美味しい食事を友達と一緒に食べるという経験は子どものその後の食生活にも影響します。
食べることが楽しいと思えるような食事作りを心掛けたいですね。
命を守るという意味ではアレルギー対応は徹底して行うようにしましょう。
成長するにつれてアレルギーがなくなっていくという子どもも多いですが、保育園に通う幼児期にはアレルギーを持つ子どもがたくさんいます。
調理中に少しでもアレルギー物質が入ることのないように、徹底した管理が必要ですし、誤食に繋がらないように子どもが食べるところまで見届ける必要があります。
アレルギー物質の摂取は命の危険にもつながるので、保護者や保育士と密な連携をとりながら対応することも栄養士の大切な役割です。
栄養士の1番のやりがい
栄養士の1番のやりがいは子ども達が美味しそうに食事を食べている笑顔が間近で見られる事です。
子ども達から「先生おいしかったよ」と言ってもらえたり、保護者から「自宅では、野菜を食べないのに保育園だと食べてくれて助かります」という嬉しい言葉を掛けられることもありますよ。
また、興味津々なまなざしで食育に参加している子ども達と接したり、食育を通して苦手な食材を克服できた!という子どもの成長がみられることも大きなやりがいに繋がります。
子どもの反応を実際に見て感じることができる保育園の栄養士。
子どもが好きで調理も好きという人にはピッタリの仕事であると言えるでしょう。
保育園で働く栄養士の給与
厚生労働省が発表している平成28年の「賃金構造基本統計調査」によると、栄養士の平均年収は平均年齢35.4歳で約344万8000円とされています。
この平均年収は保育園で働く栄養士だけではなく、病院や給食委託会社、社会福祉施設などで働く全ての栄養士を含めての年収です。
そのため私立保育園で働く栄養士とは少し開きがあります。
私立保育園で働く栄養士の月収は17万円から20万円という求人が多く見られます。
賞与が支給される場合が多いので、年収は約250万円から300万円ほどです。
しかし勤務地や経験年数によっても給与額は違いますので、中には月収22万円から26万円という求人もあります。
病院で働く栄養士や保育園以外の社会福祉施設で働く栄養士に比べると、給与額が低く設定されていることが多いですが、働く地域も考慮することで自分の条件に合った職場を探すことは可能です。
パート勤務の場合には調理員としての募集が多く、時給1,000円から1,300円程度に設定されています。
まとめ
子どもの姿を実際に見ながら食事を提供することができる保育園の栄養士。食を通して子どもの成長を手助けできるやりがいのある仕事です。
まら、献立作りや調理といった栄養士と聞くと思い浮かぶことの多い仕事だけではなく、保護者と実際に話をしながら離乳食の形態を進めたり、食育を行ったりと人と関わることの多い仕事でもあります。
子どもや保護者、保育士との関わりの中で、栄養士としての仕事の幅が広がるというメリットも…。
子どもの笑顔に囲まれて仕事がしたいという方は、保育士とはまた違った視点で子どもを見つめることができる栄養士を選ぶという選択肢もおすすめです。