保育園・幼稚園、全ての園が行うお遊戯会。

運動会でもお遊戯を行ったりと、演技指導は保育者にとって欠かせない仕事内容の一つです。

しかし、演技指導は具体的に通っている学校で指導してもらうことはありません。

実際に園に就職し、先輩保育者の動きを見たり、アドバイスをもらいながら学んでいきます。

しかし、先輩保育者も「演技指導」をしていると、後輩に気遣う余裕が出ずに、自分のクラスの指導で精一杯になってしまいがちです。

もちろん園によって演技指導をする上で、ルールや基礎にしていることは異なりますが、演技指導をする上での知識を身につけておくとよりスムーズに行えるでしょう。

実際の体験談を踏まえてお伝えしていきます。

演技指導をする前に

演技指導をする前に保育士の事前の準備がとても大切です。

常にどのような保育でも同じことが言えますが、特に演技指導では事前の準備を怠ってしまうと、練習を行うことが困難になってしまいます。

では子どもたちが興味を持って、楽しく演技が行えるような準備は具体的にどのようなものなのか、説明していきます。

また指導していく上で事前に決めた事を、細かくメモをしておきます。お遊戯専用のノートを作っておくと後で見返すことができたり、便利です。

演技をする曲を決める(演技をするストーリーを決める)

最初に今のクラスの子どもたちに合う曲やストーリーを決めていきます。

基本的にアップテンポの曲をお勧めします。

理由は、子どもはゆっくりのテンポよりもアップテンポの曲に親しみを持ちやすいからです。

だからといって速すぎるテンポであると、踊ることが難しくなってしまいます。

目安として、子どもが普通に行進できる位の曲が、子どもにとって踊りやすいテンポと言われています。

例えば・・・

  • ミッキーマウスマーチ
  • ハッピージャムジャム
  • おどるポンポコリン    

また曲園によってJ-POPを取り扱って行けない園もありますが、様々なジャンルを聞いて曲を決めていく事をお勧めします。

子どものお遊戯に適しているCDも発売されていますが、様々なジャンルの曲を聞くとイメージが膨らんでいきやすいです。

例えば・・・

  • SHAKE/SMAP
  • スマイル/ゆず
  • ABC/Jackson5     

この曲は、実際に私が勤めていた園のお遊戯で使用したもので、子どもたちも楽しんで取り組めた曲です。

テーマを決める

子どもに曲を聴かせる際に、ただ曲を聴かせていませんか?もちろん曲を聴くだけでワクワクすることもありますが、長続きはしません。

お遊戯の練習は一度で終わるものではないので、楽しい気持ちを持続するような工夫が必要です。

その為には、そのお遊戯の「テーマ」を決める事です。

その曲にちなんで、子どもが楽しく持続できるようなテーマを定めてあげると、本番まで楽しく練習に取り組む事ができます。

例えば・・・

  • 動物が出てくる曲→テーマを「動物」とし、子どもたちを動物に見立てる
  • 祭りの曲→テーマを「祭り」とし、夏祭りや出店等のイメージを持たせる

一つの役の人数やフォーメーションを決める

お遊戯会であれば、子どもたちがなりきる登場人物を決め、一つの役につく人数を決めておきます。

どの園でも、この役決めが難しいものです。主役が4人~8人なんて今では当たり前に行っています。

役決めをよりスムーズに行う為には、子どもたちに役決めをしてもらう前に、一つひとつの役の最低人数と最高人数を決めておきます。

その人数を定めておくと、役決めの際に人数に達していなかったり、一つの役に集中してしまった際に話し合いをその場で儲けることができます。

役決めでは、日にちが経ってしまうと子どもの気持ちを切り替えることが難しくなったり、保護者とのトラブルに発展してしまう可能性もある為、その日のうちに話し合いを行う事が大切です。

次にフォーメーション決め行います。

役などがない運動会等のお遊戯では、役決めを行わず、これを主に定めていきます。

もちろん詳しいフォーメーションは踊りの振り付け後で良いですが、大体の動きやどの子が先頭になるのかということを把握する為にも、頭の中で描いていくことが必要です。

踊りの振り付けを決める

子どもに指導する上で、一番大切な事です。

練習する初日までに、皆で踊れる曲の振り付けだけでも考えておけると良いです。

子どもたちは個々に差はありますが、踊る事が大好きです。

遊戯の練習が本格的になる前に、子どもたちに曲や振り付けに親しみを持ってもらえるよう、皆で踊る曲(エンディングの曲等)を初日から一緒に踊ると、次の練習に期待が持てるようになります。

踊りの振り付けは、身体を大きく使って踊れるものを取り入れていきます。

大人と違って子どもが細かい振り付けを踊っても、見栄えがしなかったり、子どもが難しく思って負担に感じてしまいます。

その為単純な動きでも良いので、遠くから見ている保護者にもどのように踊っているのか伝わる踊り考えていきます。

例えば・・・

  • 手を上にあげて、足を広げてジャンプする
  • 横にステップを踏みながら手を上下に振る
  • 前後に移動しながら手を上にあげて、左右に振る

また、同じ動きばかりを振り付けに取り入れてしまうと動きにメリハリがなくなってしまうので、その部分も配慮して決めていきます。

子どもへの演技指導

事前の準備ができたら、次は子どもへの演技指導に入ります。

初めは子どもも先生も落ち着いて行えるものの、練習が後半戦になるにつれ、子どもは飽きが来たり、先生は本番が近づくにつれてプレッシャーを感じ、イライラしてしまいがちです。

しかし子どもに当たってしまうのは、避けたいものです。

最後まで楽しく練習が行えるよう、事前の準備をしっかりと行い、気持ちの余裕を作っていくことが大切です。

練習前半

子どもたちは新しいことを行うということで、気持ちが高まっている状態です。

その気持ちを裏切らないよう、最初の練習はとても気を遣って行います。

特に初日は子どもが「楽しい」と思える時間作りを心掛けていきます。

もちろん毎日の保育で心掛けていくことですが、長い時間をかけて行うので気持ちを持続させることが大切です。

また役がある場合の遊戯では、最初から子どもの名前ではなく、役の名前で子どもたちを呼ぶと親しみが持てるようになります。

更に子どもたちが楽しめるように、目に見える導入を作ったりと工夫していくとより良いです。

練習後半

後半戦に入ってくると、踊りや体系移動を覚えて行えるようになり、初めの頃の練習に取り組んでいた気持ちに比べて落ち着いてきます。

また、保育士自身も本番が近付いてきていることに焦りや周りからの圧力を感じて、練習に熱が入り、イライラしてしまう…なんて経験ありませんか?

後半の練習こそ、子どもたちをまとめたり、気持ちを盛り上げていくことが大切な時間となります。

行き詰ってしまわないよう、一度深呼吸をしたり、指導する上で余裕を持って行えるよう心掛けていくことが必要です。

日々の練習の中で、毎回子どもたちが良い動きをしてくれるわけではありません。

子どもたちも保育士同様、本番が近付いてくるとソワソワしてきます。

その気持ちをしっかり受け止めてあげて、子どもが間違えても「大丈夫だよ!ドンマイ!」と言ってあげられるような雰囲気が理想です。

そして練習後半に入り、子どもたちの気持ちが落ち着いてきてしまった頃に、本番で使う小道具や衣装等、子どもたちの気持ちが盛り上がるように身につけて練習をしてみて下さい。

小さなものでも、いつもと違うものを身につけている事で、子どもたちは喜び、前向きに取り組むようになります。

まとめ

保育士資格を取る為に学校へ通って取得する方が多いですが、このような演技指導という科目はありません。

実際に保育園という場に入り、先輩保育士からのアドバイスをもらって取り組んでいくものです。

その園によって演技指導をしていく上でのやり方は異なると思います。

しかし、どの園も子どもたちが生き生きと、演技することに親しみを持ち、皆で懸命に取り組むよう指導することは共通していえることです。

またベテラン保育士に比べて、新任保育士の場合はとてもプレッシャーを感じる一つの行事といえます。

まずはベテラン保育士の指導を自分と比較しないことです。自分なりの演技指導というものが必ずあります。

周りが見えなくなってしまう事はいけませんが、ベテラン保育士の演技指導は一例として考えていき、自分なりの演技指導を探し、保育士も子どもも楽しい練習時間が過ごせるよう工夫してみて下さい。