資格を持ちながら保育士に復帰しない、潜在保育士といわれる人たちが数多くいます。

ご存知のように、世の中は保育士不足です。

一人でも多くの保育士が現場に戻ってくることが望まれていますが、潜在保育士からの復帰は少ないようです。

復帰しようとすると、いろいろと迷うことも多いですよね。。役に立つ情報も少ないのも原因の1つかもしれません。

そこでこの記事では、保育士の方の復帰をめぐる状況と、役立つ支援の仕組みなどをまとめました。

悩みを解消し、復帰を前向きに考える参考にしてください。

80万人以上いる潜在保育士

潜在保育士とは、保育士資格を持っていても保育士として就労していない人たちを指します。

その数は、2018年の現在では80 万人を超えているといわれています。

その中には、一度も保育士として働いたことがない人もいます。

ただ、ほとんどの方は保育士として勤務後、今はやめてしまった人です

国中で保育士が足りない!潜在保育士を復帰させたい理由

特に都市部では、待機児童問題の深刻化から、保育士の確保が急務になっています。

例えば、東京都を見てみましょう。

待機児童の数は約8,900人です。(2017年4月1日時点)

それだけの数の子どもが保育園に入れていません。

受け皿の保育園も急増しています。

東京都の認可保育園は平成23年に1,800園でしたが、平成28年には2,342園になって、500園以上増えています。

今まで以上に保育士が必要になってきています。

しかし、保育士の確保が出来ずに、ニーズがあるのに保育園の新設を止めている企業もあるのが現状です。

そうした中、潜在保育士は即戦力ですから、保育士復帰が当然期待されています。

しかし、復帰する人はそう多くはないようです

潜在保育士はなぜ復帰しないのか?復帰しない本音と理由

潜在保育士が保育士に復帰しない理由は何なのでしょうか。

潜在保育士は大体が保育士を一度経験して辞めた方たちです。

業務の実態がわかっていて、復帰しないと判断しているはずです。

まずはその理由を集めて、さらに、それでも保育士に復帰を決めた方たちの本音を集めてみました。

「復帰したくない!」潜在保育士たちの本音

潜在保育士の、保育士に復帰したくない生の声です。

今のところ戻る気ありません。

現職の頃は低給で十二時間以上園にいて残業代 休憩無し、帰宅しても朝まで持ち帰りの書類などに追われていましたが、独身だからそれでも良かったのですよね。子どもは大好きだし社会貢献したい気もあるけれど、今家庭や子どもを犠牲にしてまではやれません

引用:発言小町 YOMIURI ONLINE

復帰しない理由 保育士やめて10年

まず、言われてますが、給料が低い、変則シフト勤務で体調管理が大変、有給休暇が病欠以外で使えない、保育士同士の人間関係・保護者との人間関係に疲れる、本当に女同士でめんどくさい、タイミング良く妊娠しないと退職できないし、流産という恐怖と戦わないといけない・・・以上、復帰しない理由でした。よっぽど再就職に困らない限りは復帰しないです。

引用:発言小町 YOMIURI ONLINE

保育士を経験して、他の業種に就いています。

ハッキリ言って、給料は安いです(ボーナスだってあるかないか)。でも、お金の問題だけじゃないです。認可保育園に居ましたが、毎月2~3回研修に行ってたし、書かなきゃならない書類とか作成する書類も多かったし、毎月の壁面飾りや発表会のお洋服作りもお持ち帰りでやってたし、夜中に仕事の相談のメールは来るしで、半端無く多忙でした。昼休憩なんて、連絡帳書きやお昼寝しない子供の見守りで、1年に3回しか取ってません。

引用:発言小町 YOMIURI ONLINE

潜在保育士です。

確かに低賃金だけが問題ではないとは思いますが、低賃金も保育士が増えない理由の1つだとは思います。子どもの命を預かり、山のような書類仕事をこなし、辛いことがあっても笑顔を絶やさず、 時には保護者に理不尽なことを言われたり、まだまだ女性が多い職場なのでストレスが溜まり…子どもを好きなだけでは続けられず、それなりの精神力や体力、要領の良さなどが必要です。

引用:Yahoo!知恵袋

保育士が復帰しないのは、給料の低さもありますが、他の仕事に比べて仕事量も多く、休めない、人間関係が大変など、いろいろな理由があるようです。

潜在保育士が保育の仕事を希望しない理由

厚生労働省の2013年の調査でも以下のような報告がされています。

  • 「賃金が合わない」47.5%
  • 「他業種への興味」43.1%
  • 「責任の重さ・事故への不安」40.0%
  • 「自身の健康・体力への不安」39.1%
  • 「休暇が少ない・取りにくい」37.0%

まとめると、以下が潜在保育士が保育士に復帰しない主な理由です

  • 給料が安い
  • 激務で精神的にも体力的ハードな仕事で、見合わない
  • 自身の子どもを保育しているため復帰したくない

保育士が復帰するためには、上記3 つを解消する必要があります。

潜在保育士の多くが復帰していないということは、なかなか解決しづらい課題であるということです。

それでも保育士は保育士に戻る?保育士復帰を決めた方の生の声

復帰に後ろ向きの方が多い中、保育士復帰を決めた方の生の声です。

どういう理由が後押しして、復帰をしたのでしょう。

保育士やってます

お給料安いし拘束時間長いし、仕事多すぎて持ち帰り・サービス残業多いし。親も子どももどんどん難しくなってくるこの頃。トイレトレーニングも、親ではなく保育士の仕事。書類、チェック項目の多さ。昼寝中も10分おきに息してるかチェック、その合間に連絡帳書いて、洗濯物洗って、先生たちと連絡報告して。製作の準備やら部屋の掃除やら。休憩時間なんて全然ない!!ギリギリの人数で運営してるから休みたくても休めない。あー本当に保育士なんて、なんでやってるんでしょう私。と、思うけど・・理由は、自分に一番向いている職業だと思うから。働くお母さん、育児に悩むお母さんの力に少しでもなりたいと思うから。とにかく子どもが可愛い、子どもが好きなので毎日関わるのが嬉しい。

引用:発言小町 YOMIURI ONLINE

復職しました。二児の母

幼稚園教諭時代は、給料と仕事の割りが合わないと何度も思っていました。でも、出産を経て保育園に勤めることによって考え方が変わってきたかな。子ども達がすごく可愛いんです。オムツ替えたり、ミルクあげたり。おすわりができた。先生って言ってもらえた。もう一度子育てしてるみたいで。(自身の子ども達はまだ小学生ですが。)子どもが小学校へ行くまでは家を離れられませんでした。幸い、復職後初の勤め先の託児施設は子連れの出勤が可能でしたので。勤める事ができました。今は、親に頼れる環境だから保育園にも勤める事ができます。

引用:発言小町 YOMIURI ONLINE

上記の声にもありますが、一般に、潜在保育士が復帰するには以下の条件が必要になってくると言われています。

  • やっぱり保育が好き
  • 自身の子の保育など家庭環境が整った

保育士復帰に前向きになれるのは、自身の気持ち、保育への思いにプラスして、復帰に向けての家庭や保育の環境がきちんと揃うことです。

そうなってようやく保育士に復帰できるのですね。

保育士に復帰する方のためへのアドバイス

保育士への復帰を決めたあなたは、いろいろな面で不安を抱えているかもしれません。

ブランクがある場合は、また以前のように仕事をこなせるだろうかとか、体力面が心配とか。

保育園によって異なりますが、全体に、保育士の労働環境は改善されていっています。

ママ保育士にも働きやすいように、持ち帰り残業をなくしたり、書類仕事を減らしたりと、保育士一人にかかる負担を減らそうと努力している園は多いです。

保育園を選ぶ際に、その園が保育士の負担減にどういう取り組みをしているか、きちんと見極めましょう

そうすれば復帰の際の不安が少しでも減るはずです。

また、待遇面に関して言えば、かなり改善されていっているといえます。

その理由は、国を挙げて、保育士の処遇改善に取り組んでいっているからです。

保育士の処遇改善は国の方針でここまで進んでいる

保育士確保は社会的な問題となっていますから、国の方針で、保育士の待遇面はどんどん良くなってきています。

あなたが在職している頃よりも、かなり改善されてきているかもしれません。

保育士の給料が一律で上がったり、住宅支援もさかんになってきています。

現在行われている、保育士の主な処遇改善には以下のような種類があります。

復帰を考える際の参考にしてください。

給与の処遇改善・保育士給与2%引き上げ(2017年4月~)

保育士の給与が2%(月額約6,000円)引き上げられています。これは保育園などに勤める全ての職員が対象です。

新設役職で、最大4万円プラス(2017年4月~)

主任保育士に昇格前に離職してしまう保育士をつなぎとめるために、新たな役職が追加されました。

以下の役職に就くと、給与に加算があります。

  • 「職務分野別リーダー」・・・月額5,000円の処遇改善
  • 「副主任保育士」「専門リーダー」・・・月額4万円の処遇改善

参考記事:

住宅支援制度・借り上げ社宅制度

会社がアパートやマンションなどと契約して、そこに居住できます。保育士は一部自己負担。実務経験年数などに制限があります。

住宅手当

月の給与に、住宅手当として加算されます。条件が単身者であることが多いので注意が必要です。

保育士復帰するなら自治体等の補助金・支援制度を知ろう

潜在保育士に復帰してもらおうと、現在、自治体では様々な施策が行われています。

その中でも、自治体の補助金などの支援制度をまとめました。

いずれも厚生労働省が主導して、全国の自治体で実施していますから、気になる方は一度、勤務先の自治体に問い合わせてみてください。

自治体の補助金制度

保育士として職場復帰する際に、就職準備金の貸付や 未就学児がいる場合の自身の子どもの保育料の一部貸付が行われています。

いずれも2年間の保育園勤務で返済を免除されます。

就職準備金貸付とは?

就職準備金とは、就職に伴う引越し費用、通勤用自転車や仕事で使う被服の購入費等で使用できます。

条件などを以下にまとめました。

  • 対象は保育士登録後、1年以上経過した方
  • 保育士登録後1年未満でも、養成施設卒業から1年以上経過した方はOK
  • 保育士登録後1年未満でも、試験合格から1年以上経過した方はOK
  • 保育士として週20時間以上勤務する予定の方

内容は以下です。

  • 平成30年度は上限は40万円以内(1回限り)
  • 無利子
  • 保育所等に2年間従事した場合、 返還が免除

復帰に際して費用が掛かることは多いと思いますから、条件の合う方は、申請してみてもいいでしょう。

未就学児の保育料貸付とは?

未就学児を保育所等に預けて勤務する保育士に、勤務時間帯にファミリー・サポートやベビーシッターを利用した場合、料金の一部を無利子で借りられます。

以下の条件にすべて当てはまる方が対象です。

  • 未就学児を持ち保育園に預けている方
  • 保育士として週20時間以上勤務している方
  • 勤務の時間帯(勤務時間が早朝または夜間など)によってファミリーサポートかベビーシッターを利用している方

内容は以下です。

  • 利用料の半額(年123,000円以内)を補助
  • 期間は、保育士として勤務した期間(最長2年)
  • 無利子
  • 保育所等に2年間従事した場合、 返還が免除

条件の合う方は、知らずに損をしないように上手に利用してください。

その他の自治体の復帰支援

他にも、潜在保育士復帰のための施策が行われています。

その中でも保育士・保育所支援センターは、中核的な役割を担っています。

再就職を支援する保育士・保育所支援センターとは?

保育士・保育所支援センターとは、耳慣れない方も多いかと思います。

保育士の就職活動を中心に行う、保育に特化した就業・経営支援センターです。

都道府県や地方自治体が中心となって運営しています。

サポート内容はセンターによって異なっているようですが、潜在保育士の再就職支援は最重要項目の一つとして行っています。

ホームページなどを見てから、相談するなどしに一度足を運んでみてもいいかもしれません。

お近くの保育士・保育所支援センターはこちら。

保育士・保育所支援センターでは、ブランクがあることで職場復帰に不安のある方を対象として保育実技研修なども行っています

ご興味のある方は、お住いの近くの保育士・保育所支援センターに問い合わせてみてください。

まとめ:保育士復帰の最後の決め手は自分の気持ち

保育士に復帰しない潜在保育士の多さからも、保育士がいかにハードな仕事であることがわかります。

保育士復帰までの道のりは、人それぞれですが、悩みの多い道かもしれません。

保育士の処遇改善は進んでいますし、働きやすい環境づくりに頑張っている園も多くあります。

ただ、それだけでは、すべてが解決するわけではありません。

個人それぞれの問題は自身で解決しなくてはいけませんし、家族や周りの人たちのサポートも重要です。

それでも、最後の決め手は、自分の中の「保育が好き」という強い思いかもしれません

保育士という生き方を、もう一度楽しんで前向きにやっていけるかどうか、自分の気持ちを素直に聞いてみることも重要です。

ぜひじっくり考えてみてください。