保育士には、他の職業にはない魅力がありますよね。
一度保育士を辞めたけれど、また戻りたいと考えている方も多くいらっしゃいます。
ただ、そうした方も、前の職場に不満があるなどで、迷いが多かったりするのも事実です。
なので、保育士復帰にあたっては、できるだけ慎重に職場を選ぶ必要があります。
そこで、この記事では保育士の方が再就職する際に注意するポイントや職場の選び方をまとめました。参考にしてください。
目次
保育士の再就職は不安を感じてる方が多い
保育士という仕事は、子どもたちの成長を実感できる、他にはないやりがいのある仕事です。
それでも、再就職にあたっては、楽しみよりも不安を感じることが多いものです。
例えば、東京都が潜在保育士対象に、保育園で働いていない理由を調査しましたが、以下の声が多数でした。
- 「求職しているが条件に合う求人がない」(29.6%)
- 「就職に不安がある」(26.4%)
出典:潜在保育士ガイドブック
つまり、もう一度働きたいという気持ちがあっても、保育士再就職を迷っている方は多いのです。
例えば、以下のような不安が主なものです。
- ブランクのある方の主な不安:「自分はまたやっていけるだろうか?」
- 妊娠・出産を経た方の主な不安:「子育てをしながらきちんと働けるだろうか?」
- 前の園で不満を感じていた方の主な不安:「新しい園でもまた同じことが起こるのでは?」
以上のような不安はすべて感じて当然のものだと思います。
ただ、さいわい、最近では保育士の求人はとても増えていて、仕事を選びやすい環境にあります。
以下、保育士の有効求人倍率を見ても、他の職種よりもずっと豊富に求人があることがわかります。
出典:保育士の有効求人倍率の推移(全国)厚生労働省(平成29年)
なので、きちんと求人を吟味して、自分の条件に合った、自分らしく働ける職場を探すことが重要です。
それが再就職に向けて不安を解消する第一歩になりますよ。
保育士の労働環境は改善している
まず、保育士の再就職で不安になるのが、労働環境ではないかと思います。
保育園によって異なりますが、全体に、保育士の労働環境は改善されていっています。
保育士不足で、保育士の処遇改善が叫ばれている中で、以下のようなポイントで改善を行っている保育園が多いのです。
- 持ち帰り残業をなくす
- 書類仕事を減らす
- 人間関係の改善
ぜひ、保育園を探す際に、その園がどんな取り組みをしているかを見極めるようにしてください。
そうして、少しでも再就職の不安をなくすようにするといいでしょう。
保育士の再就職を支援する動き
保育士の再就職を促すような取り組みが、全国の自治体で行われています。
対象になる方、ご興味のある方は、ぜひ利用してみてください。
主に以下のようなものがあります。
就職準備金貸付
就職に伴う引越し費用、通勤用自転車や仕事で使う被服の購入費等で使用することができます。
未就学児の保育料貸付
未就学児を保育所等に預けて勤務する保育士に、勤務時間帯にファミリー・サポートやベビーシッターを利用した場合、料金の一部を無利子で借りられます。
保育士・保育所支援センターの再就職支援
保育士・保育所支援センターでは、ブランクがあることで職場復帰に不安のある方を対象として、保育実技研修などを行っています。
更に詳しいことは、お住いの自治体や保育士・保育所支援センターに問い合わせてみてください。
再就職を選ぶ際のポイントや注意点
保育士として再就職するにあたっては、あなたの条件や体調を考えて、職場を選びましょう。
ポイントは、職場に自分を合わせるのでなく、自分らしく働ける職場を選ぶことです。
再就職のタイミングは、今までの働き方を見直すチャンスですから、じっくり考えて最良の選択をしてください。
子育て中の方の再就職のポイントや注意点
妊娠・出産を機に退職して、子育てしながら再就職を考えている方は、子育てを中心とした働き方を考えたいですね。
なので、以下のようなポイントをおさえて、再就職先を探すことをおすすめします。
- 家庭と仕事の両立をシミュレーションする
- 休日出勤などの確認をする
- 給与を扶養の範囲内に収める
- 行事が少なく、保育内容がシンプルな園を探す
まずは、夕食の支度や子どもの送迎など、家族の一日の流れをしっかりシミュレーションすると、復帰への不安が減ってきますよ。
求人を見る際には、土曜出勤があるかどうかもきちんと確認しておいてください。家族の役割分担に問題が生じてくる可能性があります。
保育園の種類としては、企業内保育施設など、行事が少なく保育内容がシンプルな園が向いているかもしれません。
また、扶養の範囲内で働く方は、給与の上限確認は絶対です。
金額が扶養の範囲を超えてしまうと、控除されるはずの分を負担しなければいけなくなりますから、注意が必要です。
ブランクのある方の再就職のポイントや注意点
保育士を辞めてからブランクのある方は、保育士としてまたやっていけるかどうか、精神面、体力面に不安を感じている方も多いと思います。
なので、以下のようなポイントをおさえて、再就職先を探すことをおすすめします。
- 「ブランクのある方歓迎」などの求人を探す
- 正規職員でなく、パートや派遣も視野に入れる
- 行事が少なく、保育内容がシンプルな園を探す
いきなり正規職員からスタートするのでなく、まずはハードルの低いパートや派遣から始めるのも手です。
保育園の種類は、企業内保育施設など、行事が少なく保育内容がシンプルな園が負担が少ないかもしれません。
また、ブランクを経て再就職した場合、年下の保育士でも職場で先輩になる場合もありますから、謙虚な気持ちが必要になってきます。
再就職する際の保育園の種類はどう選ぶ?特徴とメリット・デメリット
以前に比べて、最近では保育園の種類は増えてきています。
それはつまり保育士として働く選択肢が増えてきているということです。
様々な保育士転職サイトを開くと、保育園の種類が多くなっていて、ブランクのある方などにはなじみのない名称もありますよね。
それが迷いを生むことになっているかもしれませんね。
そこで、以下に主な保育園の種類と、そこで働くメリット、デメリットについてまとめました。
再就職する際の選び方の参考にしてください。
まずは認可、認証、認可外それぞれの保育所(保育園)の違いって知っていますか?
実は、保育士の間でも意外と知られていないようです。
就職した場合のメリット、デメリットについても紹介します。
ちなみに「保育所」という言い方は法律上の名称です。「保育園」は一般的に使われている通称ですが、どちらも同じものです。
認可保育所(認可保育園)の特徴とメリット・デメリット
認可保育所とは、国が定めた設置基準をクリアして都道府県知事に認可された施設です。
大きく分けると、公立(地方公共団体運営)と私立(民間運営)の二つがあります。
公的補助が多く、経営が安定していることが多いため将来性もあり、長く働きたい方にはおすすめです。
認可保育所のメリット
- 正規職員が多く、その働き方に向いている
- ベテラン保育士多数の場合が多い
- 経営的に安定している
- 認可外などよりは高給な場合が多い
認可保育所のデメリット
- 人間関係が固定化している場合がある
- 旧態依然の労働環境の場合がある
認可保育園についてはこちらの「認可保育園の特徴は?働く保育士のメリット・デメリットと転職ポイント」でも詳しく解説しております。
認証保育所(認証保育園)の特徴とメリット・デメリット
認証保育所は東京都独自の制度で、国の基準による認可保育所の設置基準を満たしていなくても、東京都独自の基準を満たしている保育所です。
基本のA型と、乳児のみ対象で少人数のB型の二つに分かれていますが、どちらも小規模で、すべて私立(民間運営)です。
認可保育所と異なるのは、行政が絡まずに保護者との直接契約になるという点。
小規模で家庭的な園を求めていて、東京で保育士をしていきたい方にはおすすめです。
認証保育所のメリット
- 特色のある場合が多い
- 保護者に選ばれてファンの多い園もある
- 非常勤が多く、その働き方に向いている
- B型の場合、乳児に特化している
認証保育所のデメリット
- 正規職員が少ない
- 勤務年数を経験年数にカウントされない場合あり
- 保育時間が長いため、負担が大きい場合もある
認可外保育所(認可外保育園)の特徴とメリット・デメリット
認可外保育所は「無認可保育園」と表現される場合もあります。
認可外といっても、都道府県の指導基準がきちんと定められています。ただ、認可や認証の基準よりもゆるくなっています。
すべて私立(民間運営)です。
長く働くというよりは、パートなど非常勤の働き方をしたい方におすすめです。
認可外保育所のメリット
- 独自の保育方針があることが多い
- 自由な保育ができる場合がある
- 行事も少なく、保育内容がシンプル
- 小規模保育
認可外保育所のデメリット
- 公的な補助が少ないため、経営が不安定
- 給与が低い場合が多い
- 勤務年数を経験年数にカウントされない場合あり
- 夜勤があることが多い
認定こども園の特徴とメリット・デメリット
認定こども園とは、保育園と幼稚園の要素をあわせた園で、両方の機能をあわせ持ち、教育と保育を一体的に行っています。
平成18年から設けられた、新しい形態です。
公立(地方公共団体運営)と私立(民間運営)の二つがあります。
幼稚園教諭資格も持っていて、教育にも関心が高い方におすすめです。
認定こども園のメリット
- 様々な業務内容に携わることができる
- 幼稚園分野に関わり、スキルアップできる
- 経営的に安定している
認定こども園のデメリット
- 幼稚園教諭資格が必要な場合がある
- 元が幼稚園の場合、保育園と風土が異なる
認定こども園についてはこちらの「認定こども園の特徴は?働く保育士のメリット・デメリットと転職ポイント」でも詳しく解説しております。
小規模保育の特徴とメリット・デメリット
小規模保育とは、3歳未満対象で定員が6〜19名の小規模の保育施設です。
開設する基準が認可、認証よりも低いため、近年、その数が増えています。
すべて私立(民間運営)です。
マンションの一室などでも開設しています。小規模で家庭的な雰囲気で保育をしたい方におすすめです。
小規模保育のメリット
- 小規模で家庭的な保育ができる
- 乳児保育が主
- 行事も少なく、保育内容がシンプル
- 保護者も含めて家族的なつながりがある
小規模保育のデメリット
- 幅広い年齢の子どもに触れ合えない
- 保育内容、施設が簡素
- 園庭などがなく、保育の幅が限られる
小規模保育についてはこちらの「小規模認可保育園とは?主な特徴や仕事内容と最新ニュースも紹介!」でも詳しく解説しております。
病院内保育施設の特徴とメリット・デメリット
病院内保育施設とは、医師や看護師が自分の子どもを預ける保育施設で、病院が独自に設置しているものです。
すべて私立(民間運営)です。
保育士として、今までと違う環境で働きたい方にはおすすめですが、24時間体制なので独特のシフト勤務になることもあります。
病院内保育施設のメリット
- 若干高めの収入(夜勤手当などあり)
- 行事も少なく、保育内容がシンプル
- 小規模保育
- 保護者が近くにいる
病院内保育施設のデメリット
- 夜勤があることが多い
- 変則的なシフト勤務
- 保育内容、施設が簡素
- 園庭などがなく、保育の幅が限られる
企業内保育施設の特徴とメリット・デメリット
企業内保育施設とは、その企業の従業員が就業中に子どもを預けられるようにした保育施設で、企業が独自に設置しているものです。
すべて私立(民間運営)です。
新しい環境で働きたい保育士の方にはおすすめできますが、保育内容には特色がない場合が多いです。
企業内保育施設のメリット
- 企業によっては福利厚生が充実している
- 行事も少なく、保育内容がシンプル
- 小規模保育
- 保護者が近くにいる
企業内保育施設のデメリット
- 保育内容、施設が簡素
- 園庭などがなく、保育の幅が限られる
保育士の勤務形態によるメリット・デメリット
保育士の勤務形態は、主に正規職員(正社員)とパートに分かれますが、最近は派遣の保育士という選択肢も出てきました。
ちなみに、正規職員、パートでどちらの働き方が多いかというと、私立保育園の場合では、正規職員割合は、平均38.9%というデータもあります。
つまり大半はパートなど、非常勤の職員ということになります。(参考:厚生労働省 平成27年「保育士などに関する関係資料」)
まず考えたいのは、再就職にあたっては、勤務形態を自分で選べることです。
なので、今まで正規職員として働いてきた方も、収入や条件は劣ってしまいますが、まずはパート・派遣という選択もあり得るのです。
正規職員が向いている方
正規職員は、給与や福利厚生面が充実しているので、長く勤めて保育士としてのスキルを向上させていきたい方には向いています。
担任などになれば、自分が中心となってクラス運営をしていきますから、やりがいもあります。
その反面、責任が重く、保護者対応や人間関係に悩まされることもあります。
正規職員のメリット
- 安定した働き方
- 昇進や昇給も期待できる
- 賞与、住宅補助など福利厚生の充実
- 中心となって保育を進められる
正規職員のデメリット
- 残業、持ち帰り仕事が多いことがある
- 土曜日や休日出勤がある
- 事務作業が多い
- 責任が重い
パートが向いている方
パートは、生活スタイルによって働く時間を選べることが強みです。
小さな子どもがいたりして、決まった時間だけ働いて子育てを優先したい方に向いています。
その反面、保育士の補助のような仕事も多く、自分らしい保育をしていきたい方には向いていません。
パートのメリット
- 残業や時間外活動がほとんどない
- 土曜日や休日出勤がほとんどない
- 事務作業がなく、子どもと触れ合う機会がある
- 正規職員ほど責任が重くない
- 扶養の範囲内で働ける
パートのデメリット
- 収入が少ない
- 賞与、住宅補助など福利厚生がない
- 短時間勤務の場合、職場になじみにくい
- 補助的な仕事、雑用が多い
派遣が向いている方
派遣保育士は、保育園で雇用されるのでなく、人材派遣会社に雇用されます。
その派遣会社と契約する保育園に派遣されて、業務を行います。
基本的に有期雇用(原則3年が限度)で、給与は時給換算になります。
パートと同じで、自分の生活スタイルに合わせて、働く時間を決めたい方には向いています。
その反面、派遣期間が決まっているので、安定的に長期で働きたい方には向いていません。
派遣のメリット
- 残業や時間外活動がほとんどない
- 土曜日や休日出勤がほとんどない
- 事務作業がなく、子どもと触れ合う機会がある
- 正規職員ほど責任が重くない
- 扶養の範囲内で働ける
- パートより時給が高いこともある
派遣のデメリット
- 派遣先を吟味して選べない
- 最長3年を限度に職場が変わる
- 正規職員と比べて収入が少ない
- 賞与、住宅補助など福利厚生がない
まとめ
保育士として再就職を決めたら、保育園の種類、勤務形態など選択肢の幅が広がります。
その反面、いろいろと迷いが生じてしまうこともあるでしょう。
そうした迷いに入らないためには、自分らしく働けるかどうかをポイントに考えることがコツです。
あっちが収入が高いとか、こっちが負担が少ないとか考え始めると、どうしても、ブレが生じます。
なので、その職場なら自分が笑顔で、無理せず日々働けそうかを考えて選んでみてはどうでしょう。
そうすると、後悔が少ないようですよ。
自分らしく働けるかどうかを軸に求人を吟味して、ぜひ再就職を成功させてください。