保育士の勤務場所として、思い浮かぶ場所はどんな所でしょうか?保育園や子ども園、学童保育などを思いうかべる方も多いと思います。
その勤務場所の1つに児童養護施設があります。何らかの事情で親と暮らすことができない子ども達の、安心できる我が家としての役割を持つ施設です。
児童養護施設で働く保育士には、保育園で働く保育士とは違った役割や仕事内容があります。
この記事では児童養護施設とはどのような施設なのか?そして、そこで働く保育士になるための条件や特徴についてご説明します。
児童養護施設で働くことを考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
児童養護施設とは?
児童養護施設とは
保護者のいない児童、虐待されている児童など、環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設
と児童福祉法で定められています。
本来ならば、自分を守り育ててくれる保護者がいなかったり、いたとしても保護してくれる状態にない子ども達が入所する施設です。
そのため、児童養護施設は子ども達にとって我が家となる存在なのです。
児童養護施設に入所している子どもについて
児童養護施設に入所している子どもの年齢は、1歳以上18歳未満です。1歳未満の乳児は、同じく子どもを養護する役割をもつ「乳児院」に入所することとなります。
ただ、2,005年に児童福祉法が改正され、子どもにとってより良い環境であると認められる時には、1歳の乳児も児童養護施設の入所が可能となりました。
合わせて、乳児院への1歳以上児の入所も可能となっています。
入所理由としては、
- 父母による虐待、育児放棄
- 父母の死亡、行方不明
- 父母の身体の病気や精神疾患
などが挙げられ、不安定な精神状態で入所する子どももたくさんいます。そのため、1人ひとりの事情に合ったケアが必要な施設です。
児童養護施設での子ども達の過ごし方
児童養護施設は子どもの生活の場です。一般の家庭と同じように児童養護施設で寝起きをして、職員が作った食事を食べ、くつろげる場所として過ごします。
平日は小学校や中学校、高校に通い、施設に帰って来てからは宿題をしたりと日常生活を送ります。幼稚園児の年齢の子どもは、近隣の幼稚園に通うことも多いようです。
休日には、施設の職員や入所している他の子どもと遊んだり、施設によっては季節の行事や職員と子ども達で、遊びに出掛けることもあります。
様々な年齢の子ども達が入所していますので、子ども同士が兄弟のようにそして大きな家族として生活をしています。
児童養護施設で働く保育士の仕事内容
児童養護施設で働く保育士は、保育園とは違い様々な年齢の子ども達と関わります。そのため、年齢や発達によって違った援助方法が必要となるのです。詳しく見ていきましょう。
子どもとの関り
小学校入学前の幼児
小学校入学前の幼児に対しては、食事や排泄、入浴の援助。一緒に遊んだり、寝かしつけなどをします。
発達や年齢に合わせて、トイレットトレーニングや着脱方法などの身の回りのことが自分で出来るような関りも必要になります。
小学校の児童
小学校の児童には、学校生活がスムーズに送れるような援助をしたり、小学生の子どもを持つ保護者と同じ様に宿題を見てあげることも必要です。
少しずつ生活力が身に着けられるように、手伝いを積極的に取り入れている施設もあります。
中学生以上の子ども
中学生以上の子どもとの関りの中では、進路の相談に乗るなど自立して生活できるよな支援が必要になります。
それに加えて心に傷を抱えた子どもも多いので、子どもの心に寄り添いケアをすることも、児童養護施設で働く保育士の大切な仕事です。
保護者との関り
児童養護施設で働く保育士は、施設に入所している子どもの養護が主な仕事ですので、保護者との関りはほとんどありません。
入所している子どもの保護者が、家庭に復帰できるように支援する役割を担う職業としては、「家庭支援専門相談員」がいます。
児童養護施設に入所している子どもと保護者がもう一度一緒に暮らせるように支援をしたり、里親委託などの支援も行います。
保育士は、この家庭支援専門相談員に子どもの様子を伝えるなどの連携をとって、子どもがより良い環境の中で育っていけるように支援をします。
その他に必要な業務とは
子どもの生活の援助の他にも、養護施設で働く保育士には様々な業務があります。
- 子どもを予防接種や年齢ごとの健診に連れて行く
- 誕生日や行事の計画をたてる
- 服や文房具など、子どもの生活に必要な物を子どもと一緒に買いに行く中で、お金の使い方を教える
- 洗濯や掃除などの日常生活に必要な家事
- 学校行事への参加
- 職員間で情報共有のための会議
児童養護施設で働く保育士は、子どもにとって母親の様な仕事内容が多くなります。それと共に職員間でしっかりと連携をとって働くことも重要です。
基本的な勤務スケジュール
子ども達は、24時間365日児童養護施設で過ごしますので、シフト勤務で日勤、夜勤の両方をこなします。
施設にもよりますが、早番、日勤、夜勤の3パターンでの勤務が多いようです。
勤務時間の例をご紹介します。
- 6:00~15:00
- 13:00~22:00
- 22:00~6:00
- 6:30~15:30
- 13:00~22:00
- 22:00~6:30
参考URL:https://www.hellowork.go.jp/servicef/130020.do
土日祝日に休めるというわけではありませんが、4週8休のシフトが多く休日は確保されています。この他に、有給休暇の取得や交代で年末年始休暇や夏季休暇も取得します。
ただ、時間外であっても子どもの体調不良やトラブルによって残業が必要になる場合が多いことも事実です。
決められた勤務時間で働くことが前提ですが、子どもの様子によっては勤務スケジュールが変わるということも頭に入れておくと良いですね。
児童養護施設で働くための条件
児童養護施設で働く保育士となるためには、保育士資格が必須です。
その他に、小学生以上の児童を指導する児童指導員や、子どもの栄養管理を担当する栄養士も児童養護施設での勤務が可能です。
児童指導員と保育士との勤務内容は、はっきりとは区別されていないことが現状です。
保育士として勤務をする人には女性が多く、児童指導員として勤務をする人には男性が多い事から、保育士は母親的な役割りを児童指導員は父親的な役割りを担うことが多くなります。
児童養護施設の保育士は、保育園で働く保育士よりも更に密な子どもとの愛着関係を築く必要があります。
心に傷を抱えた子どもも多く入所しているので、身近な大人であり一番安心できる存在である保育士との関係は、そのまま子どもの気持ちの安定に繋がるのです。
そのため、保育園で働くよりも更に、子どもとじっくりと関わるという覚悟が必要となります。
時には母親のように子どもを愛し、時にはプロとして客観的に子どもを見ることができる冷静さが養護施設で働く保育士の条件と言えるでしょう。
児童養護施設で働く保育士の役割
養護施設で働く保育士には、子どもを安心できる環境の中で養護し、自立できるように支援するという大きな役割があります。
子ども達は様々な環境を抱えて入所をしてきますので、初めはなかなか心を開いてくれない子どももいます。
その子ども達に根気強く向き合い信頼関係を築くことが第一歩。そして子どもの成長を見守り、自立への手助けをします。
子どもにとっては、保育士が心のよりどころとなるのです。
保育園では、決まった時間に子どもの保育をして、子どもは家庭へと帰っていきます。
児童養護施設では、その家庭の役割も担いますので、働く保育士の責任は保育園で働く保育士よりも更に重く、重圧を感じる方もいるでしょう。
ただ、子どもと心を通わせて子どもにとって1番安心できる存在になれることは、児童養護施設で働く保育士にとって大きな喜びとなりますよ。
まとめ
児童養護施設で働く保育士は、児童養護施設で暮らす子どもにとってなくてはならない存在です。
子ども達を優しく見守るだけではなく、子どもがしっかりと自立が出来るように、時には根気強く教えることも必要になります。
子ども達にとっては、児童養護施設が第2の我が家、そして保育士が第2のお母さんやお父さんとなるのですよねよ。
責任が重い仕事ではありますが、その分やりがいも大きい仕事です。保育士として働く時には、1つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか?
もし、1人で児童養護施設を見つけるのが大変な時は保育士専門の転職サイトなどを活用すると、よりいい条件の職場をみつけることがでできるはずですので。