保育士として勤務する保育園を選ぶ時の基準は何でしょうか?
園の方針、働く保育士の雰囲気、通勤時間、子ども達が活き活きと過ごしているか…どれも保育士として働く上では大切なポイントです。
しかし、働いて生活をしていく中では、欠かせないポイントはやはり給料面ではないでしょうか?
保育士は、子どもの命を預かる責任の重い仕事です。
それにも関わらず、他の職種に比べて低賃金であると言われている保育士の給料。その実態を政府が打ち出している改善策も含めて見ていきましょう。
民間の認可保育園で働く正規保育士の給料
認可保育園とは、国が定めた基準を満たして都道府県知事から認可をされた保育園です。国や自治体から補助を受け運営しています。
認可保育園の中にも種類がいくつかあります。
一番多いのが社会福祉法人が設立した保育園で、昔から長く続いている園が多いことも特徴です。
その他にも最近では、株式会社やNPO法人が設立した保育園も増えてきました。
保育士の給料は各保育園により様々ですが、初任給ですと月収16万円~17万円の園が多い様です。
そこから年金や保険がひかれますので、手取りは13万円~15万円となりますね。
正規職員の場合には、月収の他に賞与が支給されることが多く、その額は給与2か月分の園もあれば、4カ月分以上支給される園もあり様々です。
夏と冬の2回、支給されることが多く、賞与が多い保育園では月収が少なく、賞与が少ない保育園では比較的月収が多いという実態もあります。
そのため、月収だけではなく賞与面も考慮して勤務先を選ぶ必要があります。
厚生労働省が発表している平成26年度の保育士の平均年齢と平均給与によると
- 平均年齢は35歳
- 平均月収は216,100円
- 平均年収は約317万円
となっています。
子どもの成長を感じるという収入以外の楽しみが持てる仕事ではありますが、やはり仕事量と責任の重さを考えると、給与の低さを感じてしまいます。
公立保育園で働く保育士の給料
民間の認可保育園よりも、高い収入を得られると言われている公立保育園の保育士。その給料の実態について見ていきましょう。
公立保育園で働く正規保育士は地方公務員です。そのため、狭き門である公務員試験に合格しなければ公立の保育園で正規職員として働く事はできません。
給料面においても、保育士以外の地方公務員と同額程度支払われます。
公務員は安定した職業というイメージから、初任から高い収入を得られる様にも感じる方も多いかと思います。
しかし、意外にも公立保育園の保育士の初任給は、民間の認可保育園の保育士とほとんど変わりません。
各自治体によっても違いますが、月収13万円~16万円の場合が多いようです。
民間の認可保育園の保育士との違いは、昇給制度にあります。公務員は勤続年数によって安定した昇給が見込めますので、長く働くにつれて民間の保育士の収入と差が出るのです。
東京都練馬区が発表している平成26年度の公立保育園の保育士平均年齢と平均給与は
- 平均年齢は44歳
- 平均月収は331,601円
- 平均年収は約538万円
となっています。
この給与額は民間の認可保育園で働く保育士よりもかなり高い額ですよね。
また、平均年齢が高いことも公立保育園の保育士の特徴です。
産休や育休制度が整っているので、妊娠出産後も働き続ける保育士が多いのです。
勤続年数が長くなるにつれて個人の給与も上がるので自然と平均給与も上がるのでしょうね。
長く勤めるという面では公立保育園の保育士は、かなり良い条件であると言えます。
無認可保育園の保育士の給与
無認可保育園とは国の認可基準を満たしていない保育園で、国や自治体からの補助がありません。
そのため、保護者からの保育料で保育士の給料もまかなわれることとなります。
最近では、無認可保育園の中でも東京都の認証保育園やさいたま市の認定ナーサーリーなど、国の基準よりも緩い基準を設定し、それを満たすことで各自治体から補助が出る場合もあります。
ただ、やはり認可保育園に比べると収入面には差が出てしまします。
正規職員の場合でも、月収10万円~15万円という場合が多く、パート職員では時給900円~1000円という園が多い様です。
正規職員の人数を少なくしてパート職員の雇い入れを増やしているという場合も多く見られます。
しかし、全ての無認可保育園が認可保育園よりも給料が低いという訳ではありません。
株式会社が無認可保育園を経営している場合などは、その経営元がしっかりとしていれば安定した給料が見込めますし、その保育園ならではの特徴を打ち出し多くの園児が利用することで保育料を確保できている園もあるからです。
保育料がしっかりと確保できればそれだけ、給料に反映されます。
待機児童問題により、無認可保育園の需要が高まってる昨今では、給料面においても安心して働ける無認可保育園もありますよ。
厚生労働省が打ち出している保育士の給与改善策
昨今の保育士不足への対策として、厚生労働省は平成29年度4月から民間保育園で働く保育士の給与改善策の実施を始めました。
具体的には、
- 保育士の給与を平均3.3パーセント改善(月額1万円程度)
- キャリアアップの仕組みを作り、技能・経験に応じて月額5千円~4万円の給与改善を行う
という政策です。
キャリアアップの仕組みとは、園長、主任の他に副主任、専門リーダー、職務分野リーダーという役職を作りそれぞれの役職に合わせた給与を支払うというものです。
副主任と専門リーダーは経験年数概ね7年以上のキャリアや研修の受講などが必要となり、月額4万円の給与改善が行われます。
職務分野別リーダーは、経験年数概ね3年以上のキャリアや研修が必要となり月額5千円の給与改善が行われます。
他の業種や公立保育園で働く保育士と比べて、昇給額が少ない民間保育園の保育士の為に、勤続年数と経験によって、収入額が増えるというシステムを築くという意味合いもあります。
保育士の給与改善策は現場の保育士に届いてるの?
多くの保育園では、厚生労働省の保育士の給与改善策を受けて、改善された額を保育士の給与に反映させています。
しかし、中には保育士の給与に反映させずに経費に組み込んでしまったり、給与改善額の分を残業代に充てたり、その分賞与を減らしたり…という悪質な保育園も見られます。
給与改善のための補助金は、保育士に直接支払われるのではなく保育園に支払われ、そこから保育士の元へという流れとなっています。
そのため、保育士の元まで届かないという実態もあるのです。
もし、保育士の給与改善が実施された平成29年度4月からの給与額が依然と変わっていないという場合には、園長や責任者に尋ねてみましょう。
そんなことを聞ける雰囲気ではないという場合には、他の保育園への転職も考えてみても良いかもしれません。
また、保育園によってはサービス残業は当たり前、子どもの製作などに使う材料は自費で買うことが普通になってしまっているという園もあります。
子ども達のため、時間内に仕事が終わらなければ残業しても仕方がないと思う気持ちもあるかもしれませんが、それは当たり前ではありません。
保育士は仕事量がとても多い職種です。子どもの保育の他にも連絡帳の記入、製作の準備、書類の作成などやるべきことが山積みです。
本来ならば時間内にそれらの仕事を終えられる様な采配をするのが園長の役割の1つです。
しかし、実態としては保育士が全てを背負わなければならないような状態です。
残業代が出ない、給与面で改善がされない等の状態にある時には、他の保育園への転職も視野に入れながら、自分が働く保育園の実態について客観的に見てみることをおすすめします。
まとめ
厚生労働省の改善策も含め、保育士の給料について見てきました。
子どもの成長を見守り、働く保護者の強い味方でもある保育士。
共働き家庭が増えている中で保育士の需要は更に高まっています。
保育士としてのやりがいは、収入面だけではありませんが、子どもとゆとりをもって関わるには保育士自身気持ちの余裕が必要です。
保育士の働きと責任の重さに対して、収入面での充実もはかられるように期待しましょう。