現役保育士が抱える共通の悩み…それは給料が安いことです。
実際、退職理由でダントツに多いのが「給料が安い」という理由で、それが原因となり離職率は年々高まっています。
それほど、保育士の低給料問題は深刻化しているのです。
それでは一体、保育士の給料はどのくらい低いのでしょうか?
保育士でも高収入を望むことはできるのでしょうか?
この記事ではそんな、保育士の給料が安い3つの理由と高収入保育士になる方法4つを紹介します。
給料が安くて悩んでいる保育士の方はぜひ参考にしてください。
目次
そもそも保育士の給料は本当に安いの?統計から調査してみた
確かに保育士の給料は安いです。
2016年の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均給与は以下のような結果となりました。
- 平均月収:22万円
- ボーナス平均金額:58万円
- 平均年収:326万円
かなり安い賃金ですよね。
「これは新卒の給料?」と疑ってしまうような賃金になっています。
しかし、これは平均の金額なのです。
ちなみに上記の平均給料に対し、保育士全体の平均年齢は36.0歳、平均勤続年数は7.7年。
この数字から保育現場では若い人が大半を占めているということがわかります。
つまり
- 若い人でないと勤まらない
- 長年続けている人はいない
というのが保育士の現状なのです。
次に、比較として全業種の平均給料も挙げてみましょう。
- 平均月収:29万円
- ボーナス平均額:64万円
- 平均年収:421万円
この平均給与を比べると、保育士との差額は以下の通りになります。
- 月収:7万円
- ボーナス:6万円
- 年収:95万円
なんと、保育士と給与所得者の平均給与を比べると、年間約100万円近くの差額が生まれます。
従って、保育士の給与が安いのは本当です。
保育士を辞める理由も実は「給料が安い」が1番多い
保育士の離職理由で圧倒的に多いのは「給料が安い」という理由です。
上記による離職理由をランキングで表すと、以下のような結果となりました。
- 給料が安い
- 仕事量が多い
- 労働時間が長い
- 他業種への興味
- 職場の人間関係
- 健康上の理由
- 保護者対応の心労
- 子育て・家事
- 妊娠・出産
- その他
なんとアンケートに答えた7割弱の人が保育士の低給料を理由に退職しているのです。
様々なサイトで、保育士の退職理由のほとんどは「職場の人間関係」と取りあげられていますが、実際には、給与の低さが退職につながっているという結果となりました。
また、厚生労働省によれば、保育士の資格を持っているにもかかわらず、保育士に就業しない理由の1位も「賃金が希望と合わない」とのことでした。
保育士は、他業種から見れば「子どもと一緒に遊ぶだけの楽な仕事」と認識されることも少なくありません。
しかし、保育士はとても大変な仕事です。
- 子どものおんぶや抱っこ
- 保育中の運動に散歩
- 大量の書類作成
- 保護者のクレーム対応
- 多大なサービス残業
という精神的にも肉体的にも疲労度が高い仕事と言えます。
こんなにも大変であるにもかかわらず、低給料となれば、仕事を辞めるのも無理はありませんよね。
「せめて給与アップだけでもしてくれれば、頑張れるのに…」というのが保育士の本音でしょう。
保育士の給料が安い理由はこの3つ
ではなぜこんなにも他の業種よりも保育士の給料は安いのか。
その理由とされているのが下記の3つです。
- 人件費よりも施設の管理費が優先される
- 育料は家庭の収入によってムラがあり売り上げが少ない
- 国や自治体からの補助金が固定されている
人件費よりも施設の管理費が優先される
まず1つの目の理由は、保育園の施設管理費にあります。
保育園を運営するためには様々な費用が必要になります。
例えば、下記のような費用です。
- 水道光熱費(水道、ガス、電気)
- 土地の賃料(土地を借りている場合)
- 備品費用(おもちゃ、画用紙、医療品)
- 給食費
- 人件費(保育士の給料、福利厚生)
※認可保育園参照
実際、運営費の70%を人件費にあてている保育園が多いです。
しかし、それでも給料が全く上がらないのは、施設管理費を削ることができないからです。
「安い」と言われている給料であっても、保育園側からしてみれば、それは「最大限の分け前」。
逆に、施設管理費を削れば、以下のような問題が浮上するでしょう。
- 備品削減のため、工作や製作をしなくなる
- 子どもがおもちゃに飽きても、新しいものが買えない
- 給食の量が減る
- 衛生面にお金が掛けられられなくなる
こんな問題があっては、子どもが健やかに成長することはできませんよね。
以上の理由から、保育士の給料を上げることよりも、施設管理費が優先されるのです。
保育料は家庭の収入によってムラがあり売り上げが少ない
保育料は市販の商品のような定価のものではありません。
世帯収入によってそれぞれ金額が異なるものです。
出典:平成 24 年 厚生労働省より地域児童福祉事業等調査の結果
厚生労働省の調査によると、一世帯における子ども一人あたりの平均月額保育料は、20,491円でした。
月額で2万円弱ということは、一人の子ども1日当たり平均1,000円弱で預かっているということになります。
1,000円弱で一人の子どもの命を預かるなんて、少し抵抗がありますよね。
保育士は、ただ子どもの世話をしているわけではなく、最善の注意を払って安全を確保し、成長の手助けをしているのです。
子ども一人1,000円弱では労力に見合わないでしょう。
しかし、細かく見ていくと、保育料は世帯によって1万未満~7万円まで差があることがわかります。
さらに子どもの年齢によっても保育料は変わります。
図の通り、月齢が低いほど保育料は高く、月齢が高いほど保育料は低くなるのです。
このように保育料は家庭の収入や子どもの月齢によってムラがあります。
そのため売り上げが伸びず、保育士の給料アップにつながらないのです。
「それなら保育料を上げればよいのでは?」という声もありますが、保育園自体は保育料を上げる決定権を持っていません。
決定権は、国や自治体にあるのです。ですから、簡単には上げることはできません。
また、保育料を上げるということは、それだけ家庭への負担が大きくなるということです。
いくら保育士の給料が安いからと言って、子ども預けている全家庭からお金をむしり取るようなことはしたくありませんよね。
保育料の値上げによる給料アップは難しい状況にあります。
国や自治体からの補助金が固定されている
保育園の収入源は、保護者からの保育料のほかに、国や自治体からの補助金があります。
補助金は施設ごとの状況によって金額が決まります。
- 園児の年齢や人数による基本額
- 保育の必要量
- 職員の配置
- 保育園の所在地
つまり、受け取れる補助金の金額は固定されているということです。
しかも補助金の主な収入源は税金なので、簡単に増量させることはできません。
もし、補助金額を上げるとなれば、私たちが納める税金がさらに増え、結果的に生活が苦しくなってしまします。
これでは給料が上がったとしても素直に喜べませんよね。
以上3つが、保育士の給料が安い理由でした。
認可保育園の運営は、園だけで行うことはできません。
国や自治体と密接な関係にあるので、保育士の給料を上げようとしても、簡単にはいかないというのが現状です。
では結局は保育士では高収入は望めないの?
それでは保育士はこのまま安い給料のままなのか。
実は現在、保育士の給料が増えているのです。
低賃金、サービス残業多さ、有給の取りづらさ、業務の過酷さが原因で、保育士の離職が著しい近年。
厚生労働省の調査によると、私立保育士の離職率はなんと12.0%。
つまり10人に1人以上は辞めているということになります。
深刻な保育士不足を解消するため、ついに国や自治体が本格的に動きだしました。
それが「 保育士確保プラン」と呼ばれる国の政策の中で、保育士の給料を大幅に引き上げる処遇改善が2017年に開始されたのです。
具体的な施策はこちらです。
- 副主任や専門リーダーなど勤務歴が7年以上の中堅保育士に対して、月4万円を支給
- 積極的に指定の研修を受け、職務分野別リーダーを経験した3年目以上の保育士に対して、5000円を給与に加算
- 全保育士に対し月額6000円を支給
「長年続けても給料が上がらない」という保育士の概念を一気に変える政策となっています。
詳しくはこちらの記事でも詳しく解説しております。
高収入保育士になるための4つのポイント
上記の取り組み以外で、さらに高い給料を受け取るには、おすすめの方法があるのはご存知ですか?
高収入保育士になるためにはどうすればいいのか、気になる方は下記の方法もチェックしてみてください。
東京の保育園で働く
東京都の保育士として働けば、保育園から豊富な手当と補助金を受け取ることができるからです。
例えば東京都は独自の補助金制度として、都内で働く保育士に毎月4.4万円を支給しています。
加えて、区ごとに様々な取り組みが行われています。
以下、地域別の取り組みをまとめました。
〇江戸川区
「保育従事職員宿舎借り上げ支援」として都内住居の借り上げ費用を7/8(最大8.2万円)を補助
東京都の4.4万円の補助金のほか、江戸川区独自の補助金1万円、計5.4万円を支給
〇大田区
「保育従事職員宿舎借り上げ支援」として都内住居の借り上げ費用を7/8(最大月額8.2万円)を補助
月1万円の補助金を年2回、年間合計6万円を支給
〇港区
「宿舎借り上げ支援事業」として区内の住居の借り上げ費用の7/8(最大月額7.1万円)を補助
「保育士等キャリアアップ補助金」として保育士のキャリアアップ支援に3千円~3.3万の補助金を事業所に支給
そのほか、多くの区で住宅手当や借り上げ社宅制度があり、保育士への支援が手厚い東京都。
一人暮らしするにはぴったりのところですね。
独自の補助金も豊富で、高収入保育士を目指すなら、東京都で働くことをおすすめします!
補助金が豊富な保育園に就職する
補助金の記事でも詳しく解説していますが、東京都以外にも補助金が豊富な地域があります。
やはり、補助金があるのとないのでは給料が大幅に変わってくるので、高収入を狙うなら、以下の地域がおすすめです。
毎月4.5~7.2万円を「松戸手当」として支給
毎月3.2万円、期末手当として7.1万円を支給
年間20万円をボーナスに上乗せ
市内で2年間務した正規保育士に20万円を支給
千葉県内の多くの市では、東京都にも劣らないほどの保育士支援制度が整っています。
埼玉県も、都心部では借り上げ社宅制度や住宅手当などが豊富です。
大阪府八尾市では20万円とかなり高額な賃金が支給されています。
そのほか全国的に保育士を優遇する取り組みがされているので、各地域の市役所ホームページでぜひ調べてみてください。
資格やスキルを身につけ独立する
保育園に勤める限り「社員」という枠から出ることはできません。
園児数、園の方針、給料、勤務時間…すべてが決められているので、自由度はあまり高いとは言えないでしょう。
しかしスキルを身につけ資格を取得すれば独立することができます。
つまり、場所に縛られることなく自由に保育をすることができるのです。
例としてチャイルドマインダー資格が上げられます。
チャイルドマインダー資格とは?
自宅や訪問にて少人数保育を行うフリーの保育士のことです。
ベビーシッターと似ていますが、2つは雇用形態が全く異なります。
ベビーシッターは指定された訪問先に行って、定められた時間まで働き、自分が属する企業から決まった給料を受け取ります。
例えるなら、派遣社員のような立ち位置にいます。
一方、チャイルドマインダーは例えるなら自営業のようなもの。
保育場所も自宅・訪問先・施設と選ぶことができます。
自分が社員であり園長でもあるので、保育料も保育時間も自由に指定することができます。
対象になる子どもは0歳~12歳と幅広く、色々な世代の子どもと関わりたい人にはぴったりですね。
いわば、チャイルドマインダーは「少人数保育のプロフェッショナル」。
経営者としての責任はありますが、保育料を高く設定すれば、給料はぐんと上がります。
資格取得は通信・通学の2種類
チャイルドマインダー資格は国家資格です。
早く安く資格が取りたいなら通信、時間をかけてじっくりと学びたいなら通学がおすすめです。
自分に合った方を選んでみてください。
待機児童の駆け込み場として需要が期待
待機児童が増えている昨今。保育園に入れずにいる子どもたちの駆け込み場として、家庭的保育の需要は確実に増えいきます。
今後の需要を考え、独立に向けて資格を取ってはみませんか?
保育士に特化した転職サイトを利用する
保育園によって、給料は大きく変わってきます。
もし、今の職場の給料が安くて悩んでいるのなら、保育士に特化した転職サイトの登録がおすすめです。
転職サイトでは、何百という求人の中からあなたの条件に合うものを選ぶことができます。
例えば
- 年間休日120日以上
- 少人数保育
- 残業なし
- 家賃補助制度がある
上記のような条件の指定もできるので、あなたにぴったりの職場を探すことができます。
ぜひ登録してみてください。
色々な保育士転職を比較した記事もあるので気になる方はチェックしてみてください。
給料を上げるならやっぱりキャリアアップや転職
保育士の給料は増えつつあります。
しかし、全ての保育園が給料を引き上げているわけではありません。
保育士の中でも給料の格差が広がりつつある現在、高収入を目指すなら、キャリアアップや転職を視野に入れることが重要です。
人員確保のために他の保育園よりも給料を高く設定している保育企業が増えているので、転職するならそこがねらい目です。
転職を考えている人は、転職サイトに登録して求人情報をこまめに取り入れることをおすすめします。
これから先も保育士の待遇はどんどん改善されていくので、今後の取り組みに期待しましょう!