働いている職場の退職を考えた時に、気になる退職金。仕事を辞めてから次の仕事に就くまでの生活費の足しにしたり、頑張って働いてきた自分へのご褒美と考える人も多いのではないでしょうか?
しかしこの退職金、働いてきた人全てが受け取ることができるわけではありません。
同じように保育士として働いていても、退職金が支給される保育園もあれば支給されない保育園もあります。勤続年数によって貰えないということも…。
退職を考える前にぜひ知っておきたい保育士の退職金事情について説明します。
保育士は退職金がもらえる?
そもそも退職金がもらえる保育士ともらえない保育士の違いはどこにあるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
公立保育園の場合
公立保育園で働く保育士は地方公務員ですので、条件を満たしていれば各地方公共団体が定める条例に基づいて必ず退職金が支給されます。
その条件とは、1年以上の勤続年数があること。
公立保育園の保育士として1年以上勤めていれば退職金の支給対象となり、各地方公共団体より退職金が支給されます。
私立保育園の場合
私立保育園の場合には、就業規則に退職金の定めがあれば、退職金を受け取ることができます。
反対に就業規則に退職金の定めがなければ、退職金を受け取ることはできません。
退職金制度は法律で定められた義務ではないからです。
一概には言えませんが、運営母体が社会福祉法人の場合には、福祉医療機構の「退職手当共済制度」に加入している場合が多く、1年以上働いていれば月給と勤務年数に見合った額が支払われます。
株式会社の場合には、退職金制度をなくす代わりに給与額を充実させ、働いている職員に還元するという考え方の企業もありますので、社会福祉法人に比べて退職金制度がない場合も多く見られます。
しかし、どの株式会社も保育士不足に悩まされているため、人材確保のために退職金制度を導入し、アピールポイントの1つにする企業も増えてきています。
退職金がもらえない場合もある
公立保育園でも私立保育園でも、基本的に退職金は正規職員に支払われますので、パート職員には支払われないことが一般的です。
正規職員と同じ労働時間で働いている公立保育園の臨時職員であっても、退職金は支払われないということが多いようです。
しかし、勤続年数が長い場合などは、保育園が独自に少額の退職金を支給するという場合もあります。
また、退職金がもらえる条件としては勤続年数が大きく関係します。
公立保育園でも1年未満の勤務では退職金はもらえませんし、私立保育園で「退職手当共済制度」に加入している場合も1年未満の勤務ではもらえません。
就業規則で独自の退職金制度を定めている場合には、3年以上の勤続年数がないと退職金がもらえないという場合が多くみられます。
そのような場合には、2年11カ月働いたとしても退職金を受け取ることはできません。
退職を考えた時には就業規則を見返し、退職金の定めの有無と同時に受け取ることができる勤続年数もチェックをしておきましょう。
退職金の相場
退職金の相場も公立保育園であるか、私立保育園であるかによって違います。
勤続年数や基本月額、退職理由によっても違う退職金額の計算方法、相場をご紹介します。
公立保育園の相場
総務省が発表している、地方公務員の退職金計算方法としては、
とされています。
退職理由別・勤続年数別支給率も、一定の比率が定められています。
例えば公立保育園で5年勤務し月額が20万円、自己都合で退職した時には、60万円プラス調整額が退職金額となります。
10年間勤務し月額が22万円、自己都合で退職した時には、132万円プラス調整額。
20年間勤務し月額が30万円、自己都合で退職した時には705万円プラス調整額の退職金を受け取ることができます。
調整額とは、勤務態度などを考慮して毎月加算される額で、全くもらえないこともありますが9万円ほどもらえることもあります。
公立保育園勤務の保育士は、初任給は私立保育園勤務の保育士とさほど変わりませんが、他の地方公務員と同様に昇給制度がしっかりとしているため、勤続年数に伴って給与が上がっていきます。
そのため、退職者が少なく定年まで勤める人が多いことも特徴です。
地方公務員が定年まで勤めた時の平均退職金は2000万円以上ですので、かなり豊富な退職金を受け取ることができることになります。
私立保育園の相場
社会福祉法人が運営している保育園で「退職手当共済制度」に加入している場合には
- 勤続年数
- 計算基礎額(退職前6ヶ月の平均月額)
- 退職理由
で退職金を計算することができます。
例えば退職手当共済制度に加入している社会福祉法人運営の私立保育園で、5年間勤務し月額が18万円、普通退職の時には退職金は47万2,500円となります。
10年間勤務し月額が20万円、普通退職の時には退職金は138万3,750円。
20年間勤務し、月額が28万円、普通退職の時には572万4,600円の退職金を受け取ることができます。
私立保育園は公立保育園に比べて勤続年数に伴った昇給額が低いので、年数を重ねた時の退職金に、公立保育園の保育士と大きく差が出てしまいます。
退職手当共済制度に加入していない社会福祉法人運営の保育園や、株式会社運営の保育園では、退職金の額も独自に定めることとなります。
退職金の定めがない場合もありますし、一般企業と同等程度の退職金を出している園もあります。就業規則に記載がありますので、確認をしてみてください。
退職金が支給される時期
公立保育園の場合は退職手当条例で定められており、退職日から約1ヶ月以内に支給されます。
私立保育園では就業規則で定められており、退職日から約1ヶ月から3カ月以内に支給をされることが多いです。
しかし退職手当共済制度によると、請求の時期が集中することなどによって送金の時期が遅れる可能性もあるとの記載があります。
保育士は年度末に退職をすることが多いので、3月に退職をするという場合には、支給まで時間が掛かり3カ月以上かかる場合もあります。
退職金を退職後の生活費の足しにしたり、リフレッシュのための旅費にと考えている場合には、退職後すぐに支給されるわけではないということを頭に入れた上で、計画を立てる必要があります。
また、退職後には健康保険や国民年金への切り替えなど、意外と手続きが多くあります。次の転職先が決まっているという場合にはさらに忙しくなりますが、退職金が入金されたことは忘れずに確認をしてください。
まとめ
退職金の有無や支給される金額は、退職後の生活に影響します。
退職を考えた時には、まずは自分が退職金を受け取ることができるのか、そしてどのくらいの額を受け取ることができるのかということを把握しておきましょう。
その上で退職後の生活設計を立てると、安心して転職活動に励むことができます。そして、退職金の有無は就職の際に勤務場所を選ぶ1つの基準にもなります。
働き始める前から退職後のことを考えるのは気が引けるという方もいるかと思いますが、どんな職場であっても何らかの理由で退職する可能性はゼロではありません。
そうなった時に少しでも安心して次の道筋を立てられるように、入社前に退職金の確認をしておくことをおすすめします。