1歳児って、かわいいですよね。

赤ちゃんでもない、ちょっとおしゃべりもできて、自分で色んなことができるようにもなる。

かと思えば・・・そう、1歳児といえば「イヤイヤ期」。手ごわくなってくる時期です。

また、トイレトレーニングが大変なのも1歳児。

ここではそんな1歳児のクラスを担任した時、毎日が楽しくなるような方法をお伝えしたいと思います。

1歳児ってどんな特徴のある年齢?

そもそも、1歳児ってどんな年齢なのでしょうか。

1歳児クラスは、1歳から2歳になる子がいるクラスです。4月生まれの子なら1歳児クラスに進級したその月に2歳になりますし、3月生まれの子なら11か月間1歳です。

月齢の小さい子の中にはまだハイハイの子もいたり、あかちゃんっぽさの残る子も多いです。

しかし、月齢の大きい子はもうお話も上手で、おままごとをしたり、お手伝いをしてくれたりと、初めて1歳児クラスを担任した保育士はその月齢差に驚くことでしょう。

そして1歳児クラスを担任するのが2年目、3年目と経験がかさなるにつれ、1歳児クラスの特徴的なポイントに気づくことも多いと思います

1歳児は、いっぱいお世話をしてもらっていた赤ちゃん期から脱して、

  • 自分で服を着ようとする
  • 自分でトイレに行こうとする
  • 自分で遊ぼうとする
  • 自分でおしゃべりをする

など、自分で何事も一生懸命しようとします。

でも、自分でやろうとするけれど、まだまだ大人に手伝ってもらわないと自分ではできません。

この、一生懸命に自分でしようとするところが可愛く、できなくて駄々をこねたり、できないのに急いでいるときに「自分で」と主張したり、何を言っても「いや!」と否定したりとわがままいっぱいな面に困ったりもしますね。

母親や経験の浅い保育士さんの中には、このわがままを何とか抑えつけなくてはと感じたり、わがままの言わない子を「いい子」と思ったり、1歳児の「いや」に大人の方が煮詰まってしまったりということがあることなのではないでしょうか。

これは1歳児期の発達の要点さえ押さえていれば解決するのです。

1歳児の発達で抑えておきたいポイント TOP5!

そのためにもまずは1歳児の発達で大事にしたいTOP5を押さえてみましょう。

そうすることで、保育がよりやりやすくなるはずですよ。

”自分で”という気持ちが大事

上記にもありますが、1歳児は「自分で」という気持ちが出てくるかどうかがとても大切です。

「自分でと言ったって、まだできないでしょ」なんて言わないであげてください。

できないけれどやってみようという気持ちが素晴らしい時期なのです。生活習慣の自立は3歳と言われています。

「自分で」という気持ちが芽生えた1歳児期から3歳までの約2年間を経て、自分でやってみて、ひとつひとつができるようになっていく入口の時期なのです。

そして実際にできるかどうかよりも、

  • 「自分で」と思ってやってみる
  • できなくてもそれでもまたやってみる

この2つはとても重要です。

できなくて悔しくて泣いて癇癪を起したりもします。

しかし、そんな気持ちを大人に受けとめてもらったり、またやってみようと思えたりと、そんな時間を作ってあげるのをまずは意識してみください。

”もういっかい”をさせてあげる

「自分で」やってみたことは、できた喜びから、「もういっかい」と何度でもやってみたくなります。

積み木を壊れても壊れても積んでみたり、鉄棒にぶらさがっては「みてー!」と何度も見てほしがったり、あきるまでやります。

このとき存分に「もういっかい」を大切にしてもらった子は、その後ねばりづよく根気のある子に育っていきます。

1歳児期はすべての入口です。植物で言えば根っこの部分なのです。

自我の出てきかた

上記の2つは主に、よく本などにも書かれてある1歳児の「自我の芽生え」の姿です。

実はこの「根っこ」の部分は0歳児期からつながっています。

赤ちゃんのころ

  • 飽くことなくおもちゃを舐めて五感で感じて遊んだ経験がある子
  • 興味あるものを腹這いでじっと見つめていた経験がある子
  • ぽっとん落としの玩具でもくもくと一人遊びをした経験が積み重なった子

などは、1歳になってからは「自分」というものをはっきりと持ちはじめ、この「自我の芽生え」という時期にたどり着くことができるのです。

赤ちゃんのころ、あまり一人遊びをしなかった赤ちゃんもいます。

同じ「見る」ということでも、

  • じっと心に刻むような瞳で見つめる赤ちゃん
  • ぼんやりとしか見ていない赤ちゃん

この2人の赤ちゃんでは、「自我」の出てきかたの強さにも違いがあります。

逆に言うと、1歳児クラスになってもこの「自我の芽生え」が弱い子の関しては、一人遊びをじっくりと保障して上げることが大切で、

例えば、

  • 触ってみる
  • 自然の中で色んな音を聞
  • 変化にとんだ自然物
  • 虫、花、水の流れなどを見る
  • においをかぐ
  • 美味しい素材の味そのものを食べてみる

などの五感の力を目覚めさせるような体験の中で心を感動させると良いのです。

自我がはっきり育っていくと、もっと言葉をうまく使える年齢になってくるにつれ、言葉で見事に自分の意思をはっきり伝えられる子になっていきます。

自己肯定感を育てる

「自我の芽生え」の時期で一番大切なのは、この「自己肯定感」が育つことです。

「自分」のとことんやってきた経験があるからこそ、いろんなことに対して「自分で」と言える。

「自分」の大好きなやりたいことがあるからこそ「もういっかい」と言う。

誰が何と言おうと、自分の「これだけは譲れない」ということがあったり、大好きで夢中になることがあったりすることは、とても素晴らしいことです。

そういう自分のこだわりたいことを「できた」という自分への喜びや自信は、はっきりと自己肯定感として刻まれます

これらの力は根っこですが、そんな根っこさえ持てれば、おのずと太い幹となり、大きな木となり、花が咲いていきます。

世渡りのうまさなんかは、もっと後から身に着けるものなのです。

例えば、

「自分は積み木をやりたいけど、今はもうすぐご飯の時間だからあまり散らかさないように気をつけよ」

「自分で靴を履きたいけど時間がかかりそうだから今日は先生に履かせてもらって、家でじっくり自分で履いてみよう」

なんて考えはもちろん考えられません。

積み木をやりたいと思ったらとことんする。

靴を自分で履きたいと思ったら「自分で」と主張して、履かせられようものなら床に寝転がって泣いて怒って、靴をぬいで捨てる。

それが1歳児の正常な姿なのです。

両足跳び

もうひとつ、体の面に触れておかなくてはなりません。

両足跳び(両足共に床から浮いて跳ぶ)は、2歳のお誕生日前後にできるようになります。

そのころ言葉が3語文になり、どんどん出てきます。

あまりしゃべらないと心配していた子でも、両足跳びができるようになったころ、急にしゃべりだすものです。

だから、両足跳びがなかなか出ない場合は、保育士は、あれっ?と思ってよくその子を見ていくほうがいいです。

原因はいろいろありますが、たとえば赤ちゃんの頃あまり足の指を使ってのハイハイをしなかったがために土踏まずができていなくて跳べない場合もあります。

また、何か障がい(診断はたいてい3歳をすぎないとされないものですが)が隠れている場合もあります。

3歳以降はすべてが顕著に表れてきますが、それまでははっきり表れないけれど可塑性の高い時期なので、どんなふうにでも変わっていけるという面があります。

3歳になるまでの今、発達の遅れを保育士がみつけ、1歳児期の発達を踏んで2歳児(2歳児の途中で3歳になる)に進級できることは、その子の将来にわたって関わる大切なことでもあるのです

このような発達のポイントを頭に入れておけば、1歳児との付き合い方もおのずと変わってくると思います。

イヤイヤ期との付き合い方

次は、1歳児にもある1番大変な「イヤイヤ期」について、お互いしんどくならない付き合い方をお伝えしたいと思います。

イヤイヤ期というと2歳時という印象があるかもしれませんが、1歳でイヤイヤ期が始まる子もいます。

1歳児は1次元的な時期です。なんでも直線的なのです。

「これは○○ちゃんのマーク!」

「これは○△くんのロッカー!」

と、1次元的なことがわかるようになり、断言したがります。

同じように、自分があそんでいるときにトイレに誘われたら「いや!」となります。

給食でお魚が出てそれがうれしい気持ちになって食べる気満々の時に「お野菜からね」といわれると、「いや!」となるのです。すべて1次元なのです。

わがままを言っているのではなく、やっと芽生えてきた「自分」の思いを直線的に主張しているだけなのです。

でも、この思いがいつでも通ると思ってしまうと、本当にわがままな子になってしまいます。

上手にな付き合い方は2つ

ではどうすればよいのでしょうか。答えは、

  • かわす
  • 直線的に「ひとこと」

この2つです。

直線的に「いや」と言っている子に、同じく直線的に理屈でくどくどやりあわない、ということです。

保育士の言うことなすこと「いや」と言うなら、「そっか~、いやかぁ、困ったね~」と、笑顔で受け流すのです。

何もかもいやになってひっくり返って泣いているなら、「よしよし、いやだね、そうだね、いやなんだもんね」と気持ちを受け止めるのです。

絶対に大切なことにたいして「いや」と主張していることに関しては、真剣に「野菜も食べるよ」と一言だけ言って一歩も引かない姿勢が必要です

例えば思ったもの以外食べないといって野菜を床に捨てた場合などです。

それも感情的に怒る必要はありません。

時に自分でもどうしようもない感情を受け止めてくれ、時に毅然と道を示し待っていてくれる保育士と子どもはとても良い関係になります。

そうすることで、徐々にその保育士を媒体として気持ちの切り替えが上手にできる子になっていくことでしょう。

わがままにもなりませんし、駄々こねも長泣きにはなりません。

この2点さえできるようになれば、保育士にとって1歳児がどんなに自我の強い子に育っていってもこわいものなどありません

ただ、ときに保育士は1歳児の自我とうまく付き合えないがために、自我をおさえつけようとすることがありますが、それが1番いけません。

まずは、感情的に怒る必要はないということを頭に入れておくことが大事です。

 

トイレトレーニングは必須ではない

もうひとつ、1歳児保育で大変なのがトイレトレーニングですよね。

でもこれほど時間と労力の無駄なものはありません。

登園したらトイレ、朝の集まりの前にトイレ、終ってトイレ、活動の前にトイレ、ご飯の前にトイレ、お昼寝の前にトイレ、起きたらトイレ・・・

一体何回脱がせてトイレに座らせて、着せるのでしょう。

トイレを待っている子、終って待っている子など、待っている時間も長い。

何人もの子を同時に脱がせて履かせて、しかも自分でできるように促しつつ、嫌がる子を追いかけつつ、なだめつつ、忙しすぎて無理やりになっていって・・・

と、保育士もずいぶん大変です。

生活習慣の自立は3歳から

はっきり言って上記にも書きましたが、生活習慣の自立の目安は3歳です。

自分でトイレで排泄するという点においても同様です。

トイレで排泄をするんだという認識と、尿意を感じてから膀胱に尿をためておいてトイレまで我慢し、トイレに座ってから排泄できるという内臓機能の両方が備わるのが3歳くらいなのです。

ところが教えれば認識面だけは1歳でも2歳でも一見身に付きます。しかし内臓機能といえば追いつきません

また認識面においても、遊びに夢中になっていたらトイレどころではないのが正常です。

だから、ちゃんとトイレでできるはずなのに遊んでいるさいちゅうにはおもらししたり、トイレに誘っても「いや!ない!」と言った直後に排尿するということが出てくるのです。

しかも、誘われてトイレに行って排尿していても、自分で尿意を感じているわけでもなければ、膀胱に十分に尿がたまっているわけでもありません。

そこで無理矢理行っても、余計に「尿意を感じて自分でトイレに行く」という排泄の自立を遅らせることになることさえあります。

また子どもによっては、大人が必死にトイレトレーニングを頑張ったがゆえに、おもらしをしてはいけないという観念が強くなりがちになります

もっと大きくなっても心配事があればトイレに行きたくなったり、何か脅迫観念を感じるようになったりさえします。

正直いえば1歳でのトレーニングは効率が悪い

そんなリスクを背負ったとしても、1歳からトイレトレーニングをはじめて、おむつが取れるのが1歳の終わりから2歳の終わりくらい。

ほとんどの子が3歳よりも数か月早いくらいなのです。正直いってしまえば無駄な努力です。(完全な無駄ではありませんが効率が悪いです)

本当は1日1回お昼寝起きにトイレに座ってみるくらいでいいのですが、園の方針などあるとそうもいきませんよね。

だから1歳くらいからトイレに興味を持つのでトイレに座ってみるくらいの気持ちが大切です。

あまり躍起にならず、どうしてもしなくてはいけないのなら、できるだけ無理強いなくすればいい、と思っていれば、気持ちも少しは楽になるはずです。

無理なもの強制的にさせるほど、時間効率が悪いものはありません。

それに、ちょうど1歳の子と1歳10ヶ月の子は、同じ1歳時でも全然変わってきます。

トイレトレーニングは必要なものではありますが、1歳時の時から無理にさせる必要はないと私は思います。

最後に

なぜこんなに発達のことを書いたかと言うと、発達が頭に入っていいれば保育でおさえるべきポイントに無理がなくなるからです

たいてい1歳児保育で保育士がしんどくなるのは、できないことをさせなくてはいけないと思っているからです。

トイレも、衣服の着脱も3歳までにできるようになればいい通過点なのです。

わがままを言ったとしても、集団からはみ出したとしても、無理にききわけのいい子にしなくていいのです。今は1次元的捉え方をする時期なのですから。

じゃあ何でもやってあげれば良い、わがままをきいてあげれば良いのかというとそうではないこともわかると思います。

「自分で」と言うその姿を大事にし、それを応援するだけで良いのです。

「自分で」「もういっかい」と言い、自我が育ち、自己肯定感をしっかり感じている姿であれば、1歳児保育は十分なのです。

それは同じ人間としてほれぼれする頼もしい姿です。

あとは甘えん坊な姿も、癇癪を起して泣いている姿も、可愛い、可愛いと抱きしめてあげてください。

きっと人を信頼する優しい子どもに育つことと思います。

子どもにとっても保育士にとっても無理がない生活は、とても毎日を楽しくしてくれることでしょう!