転職先の仕事や人間関係には、ドキドキわくわく、そして不安もありますよね。

仕事内容や子ども達との関係がどんなに良くなっても、特に人間関係が良くないと仕事に行くのが嫌になりますよね。

先輩はどんな人だろうか、同い年の人はどんな人だろうか、同期はいるのか、そして園長主任をはじめ、おつぼねさん的存在の人は!?と、気になるところです。

ここでは特に、そんなおつぼねさん的存在の人の対処法を、いくつもの園への転職経験もあり、おつぼねさんににらまれて大変だった経験や、実際おつぼねさんになったこともある立場からも、お伝えしたいとおもいます。

そもそもおつぼねさんって何?

一般的には、「おつぼねさん」とは長くその職場にいる人のことを指すことが多いです。

だいたい保育現場では就職してから10年目以降の人が多いですが、1~3年目の若い職員の多い保育現場では、8年目の人でさえおつぼねさんの風格がありますし、定年まで働けるような保育現場では、60歳近い人をおつぼねさんと呼んだりもします。

つまり、その保育現場で大多数をしめる年代から抜きんでて上の年代の人で、かつ長くその職場にいて、しかも園を実質とりしきるくらいの権限を持っている人が多いです。

経験が長くよく園のことをわかっているので、園長主任もその人を立てますし、行事や園長主任代理のような仕事内容を任せますので、おのずと権限を持ち、しかもおつぼねさんという立場は役職なわけではないので管理職的な気持ちになることも少なく、ゆえに後輩に対しては自分の機嫌を前面にだす、ということが出てきます。

そしておつぼねさんは女性が多いです。仕事量が人一倍多いです。そんな仕事量に不満があるので、後輩への風当たりが強くなってしまいがちです。

そういう意味でおつぼねさんは保育現場で大多数を占める職員に恐れられていることが多いのではないでしょうか。

実際にいたおつぼねさん

ストレスがたまっている人ほど弱い立場の人への風当たりもきつくなりがちですね。

半面、それほどストレスが溜まっていなければ、長年働いていても、いえ、長年保育現場で働いているからこそ、人に優しくなれるのではないでしょうか。

実際に私が経験したA保育園とB保育園の実態を紹介したいと思います。

A保育園のおつぼねさんN

A保育園は若い保育士の多いマンモス保育園。定員180名。保育士はほぼ全員正規職員で、1~3年目の職員が約8割を占め、5年目でベテランと言われ、それ以上は大ベテランと呼ばれます。

そんな中でおつぼねさんと呼ばれているN先生は、31歳の11年目。独身でバリバリ仕事をする女性です。

1歳児クラスを担任しクラスリーダーをする以外に、乳児保育のグループリーダーもし、行事になるとあれこれ采配し、その上パソコンにも詳しいのであちこちからひっぱりだこ。

みんなからは「N先生はかっこいい」「N先生、さすが」と毎日のように言われていました。

しかしテキパキとした態度に並んで、口調はきつく、N先生の周りには緊張感が漂います

また、にこにこしていたかと思えば、気分が変われば高い声でイライラと怒鳴りだすので、いつも大人も子どももびくびくしていました。

そしてまた、気に入った人は自分のテリトリーに入れるのに、気に入らない人のことはそのテリトリーの仲間で寄ると触るとあれこれ言います。

園内にN先生をとりまくグループと、それに入れないメンバーができるのでした。

N先生がお気に入りは3年目の保育士3人と、5年目の保育士2人。

N先生の気に入らないのは1年目の保育士A先生と、5年目の保育士B先生でした。

ふたりとも「どんくさい」という理由で睨まれていました。

二人が何かミスをしたり、時には園全体の上手くいっていない場面に少しでも関わっていたりするだけで、N先生と仲間の保育士は「あの人のここがダメなんだ」「自分も以前注意した。それなのになおっていない」と、一見先輩らしい意見を出し合っては寄り合います。

また、イライラした口調で本人にも「もっとこうするべきだ」と伝えます。

そしてその後「自分がこう言ったらこういう態度だった」と仲間の間で報告しあいます。

たとえA先生が泣いても、N先生からすれば善意の忠言ですし、B先生が辞めても人事には関わってないのでN先生は困りません。

N先生に睨まれている人もそうでない人も、どうしたらN先生やその周りの人たちのご機嫌をそこねないかが気になり、睨まれている人にとっては、毎日が保育どころではない日々なのでした。

B保育園のおつぼねさんM

B保育園は20年の無認可時代を経て認可保育園になりました。定員60名。

無認可時代から一番長く働くMさん(ここでは保育士を先生と呼びませんでした)は、35歳で子どもも一人いるママさん保育士でした。

5歳児を担任し、子ども達にも慕われていました。子ども達ひとりひとりの成長を感じるたびに涙し、どのクラスの子にも毎日笑顔で声を掛けにいっていました。

この保育園では、他の職員同士もいつも子どもの発達の悩みや成長の喜びを語り合い、Mさんに憧れていました。

話が熱くなってきたときなどは、職員同士意見が折り合わず喧嘩のようになることもあり、どうしても困ったときはMさんがにこにこしながら「交通整理にはいるね」と言って来てくれます。

そしてまるで5歳児同士の喧嘩の話を聞くように、「うんうん、そうだったんだ。うんうん、思いがいっぱいなんだね、素晴らしいね」と言ってずっと夜まで付き合ってくれたりするのでした。

だれよりも保育に熱心だけど、ここというときはさっと家に帰るMさんにならって、みんなもプライベートも仕事も大切にしていました。

一番大事なことは何か、っていうのをいつも考えるのよ」「芯がぶれたらだめ」というのが口癖でした。

一緒に働いていて、みんな安心して仕事を愛することができました。

おつぼねさんの考え方

このように二人はかなり違う性格の持ち主のおつぼねさんも色々ですが、もとからそういう性格の人もいれば、実は労働環境でそんな姿勢になりやすいということもあります。

A保育園は、園の傾向として行事や製作物が多く、サービス残業や持ち帰りもあり実質休憩時間はなく、だれもが不平不満を感じていました

B保育園は、常に職員会議や休憩時間に保育を掘り下げる会話があり、サービス残業はほとんどなく、それらを職員全体で減らそうとする工夫を園は受け止める姿勢にあり、園の改善点は自分たちで作り替えていけるので、不平不満にはなりませんでした

労働条件が厳しいがゆえに精神的肉体的に疲弊しており、かつ気持ちが保育の中味に向いていなければ、人は不平不満のはけ口を探して仲間を見つけます。

自分をこんな目に合わせたのは誰だという目になり、園長や主任に刃が向いたり、要領が悪い同僚の空気を読めない行動、時間がかかる作業ペース、子どもへの接し方など、小さな原因にも強い怒りを感じます。

同じ方向に刃を向ける仲間と愚痴を言い合えば、少し気持ちがすっきりします。連帯感も心を軽くしてくれます。

自分の仕事ぶりをほめたり認めたりしてくれるのも仲間です。また頑張ろうと思えます。

刃を向ける相手にきちんと伝えているという思いは今の状況を一歩解決した気持ちにになりますし、その行動は仲間内のヒーローになります。

実は、必要以上に人にきつく当たる人は、だれよりも精神的肉体的に疲弊していて不健康な状態の人であることが多いのです。

おつぼねさんが可愛がる後輩

A保育園、B保育園のおつぼねさんの性質は違えど、人としての気持ちは同じなのです。

おつぼねさんが可愛がる後輩は、

  • 自分の気持ちをわかってくれる人
  • 自分の仕事ぶりを認めてくれる人
  • 自分の仕事をサポートしてくれる人

このような人をかわいがる傾向があります。

どんなに偉い人も、年を重ねた人も、若い人も、ここは同じなのです。

A保育園のおつぼねさんも、早く帰りたい日に主任にたくさんの仕事を言われて必死になっているとき、「何かできることはありますか?」と声を掛けてもらえれば助かります。

B保育園のおつぼねさんも、クラスの子が逆上がりができなくて頑張って教えているとき、そばで一緒に応援してくれたり、いるものをパッと取ってきてくれたりしたら、励まされます。

どんな小さなことでもいいのです。心寄せてくれ、一生懸命に力を貸してもらえれば、その優しさに人は好意を感じるものです

上記のようなおつぼねさんの想いもわかってもらえると、心が支えられるのです。

おつぼねさんが虐めたくなる後輩

虐めたくなるような後輩は、実はその逆なのです。

例えば・・・

みんなが行事のことで頑張っているときに、そのことに気づかず、自分のことをしていたり、クラスリーダーの先生がそろそろ次の活動に入ろうとしているのに、気づかずいつまでも子どもと遊んでいたなどです。

本人からすれば悪気はなく、気づかなかっただけなのです。

しかし、人の立場に心をよせてくれない人イコール自分のことばかり考えている人として見られ、「動かない」「空気が読めない」というレッテルになってしまします。

また、「挨拶ができない」「声が小さい」というレッテルも、本人からすればなんの悪気もないことですが、「おはようございます」と大きな声でハキハキ言わなかったり、休み明けに「昨日はお休みありがとうございました」と言うのが抜けるだけで、なんとなく先輩からすれば自分を尊重されていない感じがするものなのです。

また、先輩が自分の仲間からその人の嫌な印象をきくと自分も同じように嫌な印象をもってしまうこともありますし、園長から気に入られている後輩には嫉妬を感じたりするのも人間ならではでしょう。

自分はなにもしていないのにお局さんにいじめられる」というのは、こういう背景があることが多いです。

おつぼねさんが無関心になる後輩

ちなみに、特に気に入られることもなく、目をつけられることもなく、淡々と仕事をするタイプの人もいます。

冷静に今すべきことを見極めて目の前の仕事に向き合い、特にだれにも強い好意も悪意もむけない人。

そんな人は非の打ちどころがなく文句をつけることもできませんし、自分と一緒になって文句を言ってくれそうにもありませんし、

おつぼねさんにとって敵にも味方にもならないのです。人間関係の大変な職場ででも一番楽にいられるタイプの人です。

短時間のパートで来た主婦の人がよくこの位置にいます。

彼女らは、仕事に来ている目的がはっきりしているのです。

目的は人によってさまざまですが、1番は家族のためにお金がいるということ、2番が家族のために家事をしに帰るためにパートを選んだこと、そして3番目が子どもと関わる仕事をしたいということなどでしょうか。

自分のためと言う要素が少ないので、割り切って必要とされている仕事だけをし、時間内にできるだけきりをつけて帰りたいので、多くを望みません。

パートでなくフルタイムの人でも、そういった冷静さを持てるタイプの人はいますね。

もし、転職してもあまり他の人と深く関係を持ちたくないなら、目的をはっきりとして仕事をした方がいいかもしれません。

おつぼねさんと上手くやっていく方法

では、転職先におつぼねさんがいた場合、そしてそれがB保育園のような先輩ではなく、関わるのが難しいタイプの人だった場合、どんなふうに上手くやっていったらいいのでしょうか。

上記のように「無関心」になってもらうには、ある程度仕事への割り切りが必要です。

生活のため、もしダメでも次の仕事を見つければいい、くらい割り切れればかえって大変な人間関係の渦中に入るようなことはないでしょう。

しかし保育の仕事を選んだ人は、おおむね熱心で頑張り屋な人が多いので、かえってそのような姿勢が難しいことが多いのです。

保育も一生懸命に頑張りたい、子どもともしっかり向き合って楽しく過ごしたい、でもおつぼねさんにはにらまれたくない、同僚ともうまくいきたい・・・。

では、どうすればいいのでしょう。

おつぼねさんと上手くやっていくための六箇条

ここではそんなおつぼねさんと上手くやっているくためのおすすめの6つのことを紹介します。

「おはようございます」の挨拶は元気にはっきりと

挨拶が快活であると、人に良い印象を与えます。

若いころそうしつけられてきたおつぼねさんであればあるほどそうです。

お礼は言いすぎて悪いことはない

お休み明けなら「きのうはお休みありがとうございました」

書類を確認してもらうなら「先生もお忙しいのにすみません」

仕事を手伝うときに教えてもらうなら「勉強になります、ありがとうございます」

おつぼねさんのやってくれたこと一つ一つにお礼を言い、感謝します

仕事は教えてもらって当然ではなく、ですね。

注意を受けたら、きちんと受け止める。

伝える側もうまく伝えられる人ばかりではなく、伝える時間がないことも知った上で、できるだけどういう意図で伝えられているのかを「感じ取る」ようにする。

でもどうしてもわからなければ、わかるまで聞く。

そしてきちんと受け止める。理由は伝えてもいいけれど、言い訳はしない潔さが大事。

八つ当たりは、受け止めない。

中には八つ当たりをしてくるような人もいるかもしれません。身に覚えのないことまで受け止めたりおべっかを使う必要はありません。人は八つ当たりを受け止めてくれた人を覚えていて、何かあったときにその人のせいにするものです。

八つ当たりだと感じたときは、その場にいない、「あれ?」という表情をする、など言い返す以外の方法でかわしましょう。

一生懸命に自分の仕事をする。

子どもや保護者と笑顔で接し、向き合って遊び、雑用も体を使ってきびきび動く、そしてその日わからなかった仕事はその日に調べたり聞いたりして、次の日には一歩前進した自分で仕事に臨む。

そんな姿勢は周りにもいい刺激を与えます。

園全体のために動いてくれている人のことにも心を馳せる

たいてい、新人職員は最低限の仕事しか担わされていません。

その他の仕事もたくさんある中で、です。ということはそれを担っている人がいるということです。

  • 園の玄関をきれいに掃除してくれたのは誰だろう
  • 花をいけてくれたのは誰だろう
  • この会議のレジュメを作ってくれたのはだれだろう
  • 行事の打ち合わせは昨日夜何時まで残ってされたのだろう

と想いを馳せます。

そしてそれはおつぼねさんのかんでいることが多いのです。

新人職員はまずは自分の仕事を一人前にこなせることを要求されているので、人の仕事に手を出すのはそれからではありますが、そうはいっても、任された作り物を終らせた後、まだたくさんすることを抱えている人を目にする機会はあります。

給食の後の掃除も手早く済ませればいつもより早くに手が開きます。

そんなとき、忙しそうな先輩に「何かできることはありますか」と声をかけることはできるはずです。

さいごに

色々気を付けて接さないといけないと思うと、それだけでストレスで転職が怖くなってしまいますよね。でも大切なことは総じてこの2つだけなのです。

      • 自分の芯を持つ。
      • 人の気持ちがわかる

自分がなぜこの仕事を選んだのか、どんなふうに働きたいかという自分の道をはっきりもっておくことが自分を強くしてくれます。

新人の自分と立場は違っていても、おつぼねさんの表情から気持ちをくみとり、優しさを持つことができれば、いつでも誰からも愛される存在になります。

自分の向き合うべき保育をそっちのけにしておべっかを使うこととはまた別なのです。

とても当たり前なことですね。

怖がるがあまり構えてしまったりおべっかを使ったりするのではなく、また、おべっかを嫌うあまり、無神経な行動をしてしまうのでもない・・・

自分の感性を磨きアンテナをしっかり張って、周りの動きや人の気持ちを感じ、自分と人のために一生懸命になれること。

それができるようになるに従って、保育も、おつぼねさんをはじめ職場の人間関係も、きっと良い方向に進みます。

転職先にどんな先輩がいるかはわかりませんが、自分のそういった感性を磨いておくことはできます。

そういう自分自身の力を養うことは、保育にも役立ちますし、園内のあらゆる仕事を知る機会にもなります。

そして将来自分の子育てや自分の生き方にも良い影響をもたらしてくれることになるでしょう。

おつぼねさんも同じ人間。怖がらなくて大丈夫ですよ。

自分がなぜこの仕事を選んだのか、どんなふうに働きたいかという自分の道をはっきりもっておくことが自分を強くしてくれますよ。